またも散々なヤビツ峠

4時過ぎ起き。燃えるゴミを出し、朝飯にホットドッグを二つ食べる。

自転車で下北沢へ。外は薄暗かったが、下北沢に着く頃には明るくなっていた。

5時11分の伊勢原行きに乗る。経堂で席が空いたので座った。そのままウトウトしていたら、電車はいつの間にか厚木に着いていた。

伊勢原で乗り換え、6時28分に秦野到着。いつものコインロッカーにリュックと財布を預け、ポーチに小銭と千円札とスマホを入れる。

駅前のファマリーマートでアクエリアスを買い、ポーチにセットして走り始めた。平地でも意識的にペースを落とし、蓑毛バス停まで止まらないで走ることを目指した。

名古木交差点まで、息が上がって止まるということのないまま走れた。前回よりマシになっている。交差点のセブンには寄らず、そのまま蓑毛バス停まで坂を上り始めた。

名古木交差点からは延々と登り坂が続くのだが、視線はあまり前に向けず、やや前方の地面に固定した。蓑毛バス停手前の1キロくらいから傾斜が急になるのはわかっていたので、そこまでは心を乱さず、淡々と足を運ぶつもりだった。

新東名のガード下に入ったとき、日陰の涼しさか心地よく、そこで止まってしまった。止まったついでにアクエリアスを飲んだ。今日のランニングでは、止まってもいいが、絶対に歩かないというルールで走ることに決めていた。

心拍数が落ち着いたところで再び走り始める。視線は前方地面に固定し続けたので、自分が今どのあたりを走っているのかはわからなった。しかし、ガーミンの距離計は4キロ以上をさしていた。つまり、そろそろ例の傾斜がくるはずだ。

ややきつめの傾斜がきた。これがそれか、と思いながら、視線固定をしたまま登り続けた。やがてその傾斜は左に緩くカーブした。このカーブは蓑毛バス停手前のそれじゃないか? そう思って目を上げると、なんと、自分はまだきつめの傾斜には差し掛かっておらず、カーブの先にその傾斜があった。見た瞬間、心が折れ、しばらく立ち止まってしまった。

そこから、きつめの傾斜を上がっていくのが、精神的にキツかったが、なぜか今度は、まだだろうなと思って目を上げると、すでに蓑毛バス停に着いていた。

自販機でコーラを買って飲み、川沿いの段で横になった。日中は日なたになるところだが、まだ影になっていた。横になると、風が涼しくて気持ちよかった。

そのまま、30分も横になって休んでしまった。駅からたかだか6キロ弱なのに、なぜこれほど体力を削れたように感じてしまうのだろう。

飲み物を買い直して、再び走り始めた。その直前、ランニングパレオをはいた女子がフラフラになりながら蓑毛バス停まで走ってきた。彼女の到着と同時に走り始めた。

前方を歩いている集団を追い越し、その先に歩いていた二人を追い越した。追い越すといっても威張れたペースではなく、歩くよりは若干速い程度の速度で、地味に近づき、地味に追い抜いたという感じたった。いっそ早歩きした方が早かったろう。しかし、今日は歩かないルール適用だったので、遅くても走る動きをし続けた。

その動きも、蓑毛バス停から3キロを過ぎたあたりで、しんどくなってきた。止まっている間に抜かした二人のハイカーに再び追い抜かれた。そのうち、抜いた集団の話し声が下から近づいてきた。彼らに抜かれるのはイヤだなと思い、再び走る動作を始めるが、100メートルも走らないうちに息が上がってしまった。

結局、その集団にも抜かれ、さらに、蓑毛バス停で自分が走り出す直前に到着したパレオ女子にも追い抜かれた。そのすぐ先が、菜の花台展望台だった。

展望台手前の数十メートルを、禁をやぶって歩いた。トイレの手洗い場へ行き顔を洗い、展望台の影で空になったペットボトルを枕に横になった。

再び動けるようになるまで、そうやって休んでいようと思ったのだが、いつまで休んでいても、よし、行こう、という気持ちにならなかった。小一時間が過ぎ、いくら何でももう行かないと、と思って立ち上がると、身体がふらついていた。覚えがあるふらつき方だった。ハーガーノックのへたりだ。

たぶん、この状態ではこれ以上の上りは無理と判断した。時刻は10時半になっていた。駅から4時間もかかっていた。

蓑毛バス停のバスの時刻が10時58分頃だったので、それに間に合うよう、下りを走り始めた。ところが、走り始めてすぐに息があがってしまった。下りなのに、である。前回、ヒーヒーいいながらヤビツ峠に上った時でも、下りはノンストップで蓑毛バス停まで走れたというのに。

おそらく、歩くのを禁止し、走る動作だけで菜の花台展望台まで上がったことが、予想以上の負荷になっていたのだろう。また、時刻が10時を過ぎて気温が上がり、熱中所的な症状も出ていたかもしれない。

下りさえ走れない状態では、上に上がるなんてとても無理だ。しかし、歩いて下ると、10時58分のバスには間に合わなかった。

結局、蓑毛バス停には11時20分頃に着いた。ゆっくり歩いて下りたが、身体はふらついていた。日が高くなり、日陰がどこにもなかったので、蓑毛ます釣り場の近くまで歩き、そこに出来ている道沿いの日陰で涼もうと思った。

すると、ます釣り場の奥から、さっき追い抜かれたパレオ女子が走って下ってきた。たぶん、ヤビツ峠から林道を使って下りてきたのだろう。俺が展望台でグロッキーになっている間に、ヤビツ峠まで走って上り、涼しい林道を颯爽と駆け下りてきたというわけだ。

釣り場沿いの日陰で涼をとりながら時間をつぶし、11時58分のバスに乗り秦野駅に向かった。

駅前の、今朝入ったファマリーマートで、プロティン飲料と900ml入り麦茶を買った。駅のコインロッカーへ行き、鍵を開け、リュックの中に飲み終えたプロティン飲料のゴミなどを閉まっていると、自分の隣のロッカーをあける人が、「すいません」と声をかけてきた。

見ると、なんと、あのパレオ女子さんだった。林道を走り下り、蓑毛バス停から名古木交差点、そして、駅まで走ってきたということだろう。

男女の偶然の出会いがこうも重なれば、ロマンスの一つもありそうなものだが、とんでもなかった。もう、恥ずかしくて仕方なかった。その女性の目に自分が映っていると考えるだけで、耳まっ赤だった。

快速急行で下北沢へ。

下北沢駅を出ると、外は、トースターの中みたいに暑かった。自転車に乗り、家まで漕ぎはじめたが、いつもならどういとうこともない緩い坂を上るのがキツかった。永福町からにしておけばよかったと思った。

帰宅する前にドラッグストアに寄り、飲み物とアイスを買った。

帰宅し、すぐ水のシャワーを浴びた。体重を量ると、昨日ランニングをした直後とまったく変わっていなかった。最後に麦茶を900ml飲んだためだろう。

ベッドに横になった。

ドアフォンの音で目が覚めた。注文していたログブックのリフィルの配達だった。

時刻は6時半を過ぎていた。高円寺の阿波踊りが今日と明日あったが、身体が消耗しきっていて、行く気分にはなれなかった。

明日もヤビツ峠に行くつもりでいたが、身体の状態からして到底無理だった。走ること自体、二日か三日は間をおかないと無理そうだった。

そして、9月14日のトレイルランも、出場をキャンセルしようかとい気持ちになってきた。今日のような体たらくでは、とても完走なんて覚束ない。

かなり凹んだ気分になり、9時頃就寝。