朝昼夜のおれ

 平日は朝の8時前後に起きる。
 そして12時までのおよそ4時間は、人生のことをなるべく考えないようにしている。
 その時間帯は思考がネガティブだから空想する未来は常に最悪で、人生は絶望に満ち、人々は殺し合い奪い合い、脱線した電車は小学校に突っ込み、飛行機は幼稚園に墜落し、原発はメルトダウンし、ミサイルは暴発する。

 思考がノーマルになるのは昼を過ぎてからだ。
 そして友人知人、仕事や劇団がらみの連絡はなるべく昼を過ぎてから行っている。
 午前の塚本はサナギみたいなものだ。
 義務的に生きている。
 誰に対しての義務かというと、午後の塚本に対する義務だ。

 午後の塚本は午前の塚本が肉体を運んできた場所を判断し、その日のスケジュールに見合った予定を頭の中で立て、行動を開始する。
 メールのやりとりや、重要な連絡、やるべき仕事、その他色々はすべて午後の塚本が処理する。
 たまに午前の塚本が手をつけるが、午前塚本の書くメールは遺言のように未来がないので、午後塚本が書き直す。

 午後塚本は夕方、夜の塚本に肉体を引き渡す。
 夜の塚本。
 言葉の響きはエッチだが、どちらかと言えば色気より食い気だ。
 何を食べようか、そればかり考えている。
 
 芝居を見に行くのは夜の塚本だ。

 回転OZORA公演「Bouquet」を見に中野へ行く。
 夜の7時半開演だった。
 マグ役者の松本健が久しぶりに客演したのだが、かつて彼が本番中に突然やり出した寒いアドリブの数々が脳裏をよぎり、見るまでは非常に不安だった。
 しかし健ちゃんは丁寧に芝居をしていたので非常にほっとした。

 役者は全員うまい人をそろえていた。
 竹内君が花嫁の兄を味わい深く演じていた。 

 終演後、望月、神田さん、山崎、松井智美と庄屋へ行き、飲む。
 OZORA出演者やスタッフの方々も庄屋で飲むことになっていたらしく、時折目礼した。

 カラーチャイルドの伏見さんと松原さんに会った。
 この二人には7月の○×カンパニー公演打ち上げで、大変迷惑をかけてしまった。
 明け方に三浦海岸へ車で行ったのだが、後部座席に座った俺は眠りこけ、「肉荷物」状態と化してしまったのだ。
 「あの時はすいませんでした」
 と謝った。

 音速かたつむりの家城君と川口さんも見に来ており、同じく庄屋で飲んでいた。
 3人で一緒に武蔵小金井まで帰った。

 1時過ぎ帰宅。
 シャワーを浴びてまもなく、外で怒鳴り声が聞こえた。
 出てみると酔っぱらいが痴話喧嘩をしていた。
 どうやら女房に嫉妬した旦那が酔っぱらって荒れ狂い、それを見かねたどこかのおっさんが止めに入ったらしいのだ。
 止めに入ったおっさんは男気を出したわけだが、相手は荒れ狂い叫びまくり、話し合いもなにもあったもんじゃなかった。
 しかし道の真ん中で暴れ回っていたのでは危なくてしようがないので、そのおっさんを手助けする形で、ラーメン屋の客A、Bと共に酔っぱらいを羽交い締めにして歩道に引き戻した。
 そこへ近隣住民からの通報でパトカーが到着し、酔っぱらいは手錠をかけられ連れていかれた。

 酔っぱらいは力が強い。
 手錠をかけるのに、警官3人がかりだった。