12時起き。がんがん眠ったが、外の雨音を聞きながら、洗濯物を干しっぱなしにしていたことに気がついて、げんなりする。
玄米粥、切り干し大根、きんぴらゴボウと、昨日と同じ朝飯を食べる。
2時過ぎに雨がやんだ。
クリーニング屋へ行きスーツを預けた。
夕方、阿佐ヶ谷の「ひとくち」という洋食屋へ。
肉詰めピーマンとフランクフルトのセットを頼む。
「キャベツ大丈夫ですか?」マスターが言った。
「好きですよ」
するとマスターは、キャベツのサラダを持って来てくれた。
サービスしてくれたようだ。
テレビで大相撲をやっていた。
琴奨菊が豊ノ島に勝った。
いい店だった。
帰宅し、本を読もうとするが、すごい眠気に襲われたので、寝台に倒れ込む。
そのまま10時過ぎまで寝てしまう。
起きると、春眠の誘いは収まっていた。
休日にこれだけ寝たら十分だろう。
末井昭『自殺』読了。
自殺をテーマにして書かれたエッセイだが、読んだ人はテーマそのものではなく、末井さん本人に興味を持つのではないか。
学生時代一緒に芝居をやっていた友達は、末井さんにあこがれ、白夜書房の面接を受けた。
ところが配属された編集部は別会社のエロ本編集部だった。
末井さんは過去なんども白夜の雑誌で警察に始末書を提出しているため、対策としてそうしていたらしい。
その編集部は彼女も含め、新人ばかりで構成されていた。
基礎を学びながらいきなり雑誌作りをするのだから、最初のうちは毎日徹夜で家に帰れなかった。
彼女と同期の男の子は、真夏の夜に何千枚もの無修正写真にぼかしを入れる作業を続けるうちに、疲労と暑さと眠気で切れてしまい、
「オレはこんなことするために入ったんじゃねえんだよ!」
と叫んで、机にあった無修正写真をそこら中にぶちまけた。
だが、周りの者も疲れ切っていて、ゾンビのように黙って見るだけだった。
涙目になってたたずむ彼の肩越しに貼られたグラフは、創刊以来、売上が天井知らずであることを示していた。
「全員疲れ切って、早く廃刊になればいいと思ってたのに、売れて売れてしようがなくて。自販機界の革命児って言われてたんだ」
のちに彼女は言った。
同じ頃オレは養成所でトレーニングを積んでいた。
中間公演で役に煮詰まり、毎日厳しいダメ出しを受け、ストレスで食べたものを吐くこともあった。
その公演を、彼女が見に来てくれた。
「はいこれ、差し入れ」
「なにこれ?」
「手ぶらもなんだからと思って、あたしの作ったエロ本」
お客さんを送り出してすぐ、ダメ出しが始まった。
あまり可愛くない女の子の大股開き写真がふんだんに載った雑誌をお腹に隠して、オレは演出の言葉を聞き、うちひしがれていた。
「…じゃあ、あそこのシーンやってみて」
なんと、その場で返し稽古が始まってしまった。
言われたことをこなすのはもちろんだが、それよりも、エロ本が落ちないように芝居をしないといけなかった。
みんなが見ている前でポトッと落っこちたら一大事だ。
演出が止め、厳しいダメ出しの後、同じ場面をまた演じる。
その繰り返しがしばらく続いた。
冷や汗が出た。
生きた心地がしなかった。
返し稽古が終わってトイレに駆け込み、お腹からエロ本を出した時には、心からほっとした。
これもまた、人生でくぐり抜けてきた修羅場のひとつだ。