ゲネは大トラブルに見舞われることなく済んだ。
いや、効果音が出なかったことと、台詞が一箇所とんだから、トラブルがなかったわけではないのだが。
それでも、上演が不安になるほどの大失敗がなかったのは、これまでの稽古で背負ってきた重い荷物がやっと半分になったようで、気分は悪くない。
かといって良くもない。
芝居そのものの不安は消えない。
実際の舞台を使って動いてみないとわからなかったシーンの稽古をした。
おもに、幻想シーンの動き。
7時半開演。
舞台裏で台詞に耳を傾ける。
役者によって好不調の差があった。
台詞を聞きながら思った。
「これはホラー芝居だな」
そのように思ったのはなんと今日が初めてだったのだ。
使途不明の建物と、不安に苛まれていく登場人物達の対比は、幽霊とは違う怖さが感じられた。
自分で書いておきながら何をいまさら。
でも、その怖さは結果論だと思う。
初めから意図していたわけではない。
ただ漠然と、こういう状況に陥ったらどうなるかわからないなあ、怖いなあ、という思いがあって、それを忠実に追ってみただけなのだ。
終演後、大塚駅そばの「甘太郎」で初日祝いをする。
後輩の神田さんからラストの物足りなさを指摘される。
帰りの山手線で、プロ野球開幕戦の結果を知る。
阪神は巨人に勝ったようだ。
去年の血のたぎりを思い出した。
うちに着く直前、山崎から電話。
「明日、私の知り合いが子供連れで来るんですが、6歳なんですよ」
6歳?