かからないエンジン

 10時集合なのに10時40分に目覚める。
 ダッシュで着替えて飯野に電話。
 「早急に来てください」
 11時半に劇場到着。朝から幸先が悪い。

 椅子のキャスターの回りを良くするためにCRCスプレーが必要になったので、オギノ式にバイクを借りて明治通りのオリンピックまで買いに行く。
 スプレーは無事購入。
 護国寺の方を回って戻ろうと早稲田通りに入った途端、バイクがエンスト。
 キック式に乗るのは初めてだったので大いに焦るが、何とか再始動して再び走るもまたエンスト。
 この時にガソリンの残量に気がついていれば良かったのだが、そこはしばらく乗らない人間の悲しさで、きっと何か別の原因があるのだろうと思い、再始動させること7回。しかしいずれも300メートル走るとエンジンが止まってしまった。
 場当たりの時間が迫り、焦ってオギノ式に電話すると、「ガソリン無いかもしれない」とのこと。
 すぐにリザーブタンクを使う。しかしエンジンにガソリンがおりてこない。
 何度も再始動したおかげで空っぽになってしまったみたいだった。
 顔を真っ赤に染めてキックを繰り返す。汗がだらだら流れる。
 そこへ親切な早稲田の学生が通りかかった。
 彼らに押しがけを手伝ってもらい、ようやく再始動。
 たかがCRCを一缶買うのに1時間半もかかってしまった。
 
 劇場に戻ると場当たりが始まっていた。すぐに参加。
 夕方6時に場当たり終了。

 弁当を食いながら、そういえば昼飯を食っていなかったと気がつく。
 どうも今日は星の巡りが悪いらしい。
 こういう日はおとなしくしているに限る。

 7時からゲネプロ。
 役者サイドからはそれほど大きなミスはなかったと思う。
 終了後、少し休憩してから効果音がらみのシーンを稽古。
 終わったのが9時半。

 「明日本番なんで、今日は絶対に飲みに行かないで下さい」
 と、飯野が言った。
 みんな疲れていたから、おそらくその心配はなかっただろうが。

 夜11時、帰宅。
 松嶋菜々子結婚の悲報を聞く。