マチネとソワレの間にある快楽時間

 公演というものは、始まってしまえばあっという間に終わってしまうものである。
 まさに「うたかた」である。
 その瞬間を確実に感じたいがために芝居を続けているのだが、なかなか思い通りには行かない。

 昼ステージをいつも通り終え、時間を聞くと、普段より2〜3分長かった。
 こういうのも思い通りに行かない原因の一つだろう。
 裏で台詞を聞いていて、「落ち着いたな」などと呑気に構えていたのだが、お客さんのアンケートにて台本の批評を読むにあたり密やかに反省する。
 しかしいまさらどうにもならないことでもある。
 そこらへんも難しい。
 企業が商品モニターを大量に雇うわけがわかる。

 マチネとソワレの間の時間は昔から大好きだ。
 一応「ファンタジックな演劇時間」と呼んでいる。
 何しろ、その時間は純粋な待ち時間だ。その前にもその後にも「芝居」しかないのだ。
 昔はよくそういう時間に「東スポ」など読んでいたっけ。

 ソワレまでの間、受付の山ちゃんに、前説にて何か一つぶちかませという話をした。
 そしたら彼女、本当にやってのけた。
 参った。なぜか罪の意識にさいなまれた。
 要するに、前説の最後に「それではごゆっくりお楽しみ下さい」よ言った後、駆け足で去りながら「キャー、言っちゃったー」とお客さんに聞こえるように言いなさいと冗談で言ったのだが、それを本当にやってくれたのだ。
 これは俺が悪い。しかしお客さんの中には「前説の女の子が良かった」とアンケートを書いてくれた人がいた。

 そう言えば今回の受付陣についてあまり書いてない。
 この機会に書きましょう。
 まずはスペシャル受付モビルスーツの森さん。(衣装もやってくれました)
 王子の女王蜂、田中ちほさん。
 「俺のつむじ風」に出てた、望月めぐみ。(助っ人望月とは関係ない)
 学芸大四年の衣装メカ、谷中さん。
 山ちゃんこと、山崎さん。
 劇団阿佐谷南南京小僧の主催であり、マグネシウム旗揚げ時から役者として参加している、「破戒僧」飯野邦彦。
 絶滅寸前の小動物のような瞳で俺のことをじっと見る、「夏の子プロ」に出ていた小松加奈。
 今日の昼に入ってくれた、不思議レトロチラシが評判の米倉さん。(マグネシウム1回、2回公演に出演)
 24時間黒スーツの鏡田君。
 そして、助っ人望月は前日入ってくれた。

 しかし、ここでお世話になった人々を書くときりがないな。
 公演が終了したら、マグネシウムリボン関係者の人名辞典を作りましょう。

 ソワレ後、白木屋へ行く。
 隣に座っていた鼻ピアスの若いのに「ソワレってどういう意味ですか?」と唐突に質問された。
 そいつはなぜか左手の甲から血を流していた。実に不可思議な情景だった。

 11時30分まで店にいたせいで、実家への終電に間に合わなかった。何てことだ。
 タクシーを使う。夜の1時帰宅。
 明日は千秋楽。どうか大勢の人が来ますようにというお祈りをこれからしようと思う。