カナブンを食った過去

 すっかり暑くなったなんてことは、どうでもいいから、今年はもう書かないことにする。

 武蔵小金井駅に異変が起こりつつある。
 北口にあったマックが南口に移転したのだ。
 ダイナマイト浅香の情報によれば、区画整理のためだという。
 これを機に、武蔵小金井における、経済の南北格差が緩和されんことを切に願う。

 留守電に意味不明のメッセージが入っていた。
 「○○先生、○○女子大図書館でございます。これで3度目です。お借りになっている図書の返却を早急にお願いいたします」
 まあ、間違い電話だろうが、直に話してみたかった。

 部屋の片づけをする。
 俺の部屋がすぐ散らかるのは、本があるからだろう。
 あると、つい、読んでしまうのだ。
 そして、あれもこれもと手を出し、気がつくと部屋のあちこちに読み散らかした本が散乱するのだ。

 「あれもこれも」系の失敗といえば、食い物に関して、強烈な体験をした。
 九歳の時、夏休みに伊豆に行った。
 来る日も来る日も昆虫採集ばかりしていた。
 ある夜、網戸にカナブンが止まっていた。
 早速捕まえた。
 テレビでは、水曜スペシャルの恐怖ものをやっていた。
 部屋には「ドラえもん」の単行本があった。
 おやつのクッキーもあった。

 テレビ見る。
 カナブン見る。
 カナブンで遊ぶ。
 ドラえもん読む。
 面白い。
 テレビ見る。
 怖いのやってる。
 クッキー食べる。
 おいしい。
 カナブン見る。
 元気だ。
 テレビ見る。
 怖い。
 クッキー食べる。
 テレビ見る。
 ドラえもん読む。
 テレビ見る。
 ドラえもん読みながらクッキー食べる。
 テレビ見ながらカナブン食べる。
 ドラえもん読む。
 テレビ見る。
 カナブンで遊ぼうとするが、カナブンいない。
 カナブンどこ?
 あっ。
 口の中に残っているものを吐き出す。
 足しか出てこない。
 しばし考える。
 母に言う。
 「間違えてカナブン食べちゃった」
 母は答える。
 「正露丸飲んどきなさい」

 この話から導き出される教訓は、
 「二兎を追う者は一兎も得ず」