芝居が終わったからといって、仕事が終わるわけではないので、平日の始まりは先週とも先々週とも変わらない。
よって、芝居ボケにかかることもない。
本屋に入る機会があり、最近気になっていた新刊本を立ち読みする。
小林よしのりの「戦争論2」が出ていたので、読んでみた。
非常に気になったのは、作品の主人公である「小林よしのり」が、妙に二枚目になっていること。
下半身を丸出しにしている慰安婦の写真を載せる時に、わざわざ顔を赤らめ、
「女性読者のみなさんには申し訳ないが」
などと言い訳させている。
欺瞞ではないか?
全体として、洗脳本としての特徴が前作以上に顕著になっていると思った。
例えば人物の額に青筋を描くだけで、ニュアンスを微妙にコントロールできたりするのがマンガなわけだ。
タイトルを「戦争論」としているが、「論」に求められる客観性をマンガという表現で維持するのは不可能だ。
この本を読めば、社会科好きのいじめられっ子は、簡単に極論へ走るだろう。
そして、靖国参拝に反対する人達に、バットで殴りかかったりするわけだ。
夕方、稽古場にて打ち上げ。
7時過ぎに着いたら、すでに始まっていた。
東さんに、木冬社時代の話を聞く。
東さんと原口さんと川田さんは同期だったそうな。
「綾瀬に稽古場があってさ、よく荒川の河川敷で練習したよ。電車のガード下でやれば、発声練習とかしてうるさくしても平気なんだよ」
原口さんが続ける。
「その頃から川田はわけわかんないことを言ってたんだよ。おまえそれは違うだろみたいなことをさ」
「ヨネクラとの出会いの話は知ってる?」
東さんが言った。
「いえ、知らないですけど」
「あのさ、ヨネ達が漠でやった卒公あったろ」
「ああ、ジョン・シルバーですか
「そうそう。俺その頃梁山泊やめたばかりでさ。これからどうしようかなと思ってたら、テントで唐さんの作品をやるって聞いて、それで観に行ったら、パンフレットにヨネクラが、自分の好きなものを羅列していたんだよ。その中に、『役者、伊原裕次』って書いてあってね。『俺、友達だよ』って話し掛けたんだ』
なるほど、の間があってから、
「ドカ君、ヨネって、美人だよな?」
「は?」
次の瞬間隣にいたヨネクラに背中を思い切りぶっ叩かれた。
しかし、知り合いと接する時、「かわいい」とか、「きれい」という風に思うことはあるけど、「美人だなあ」という風には思わないものだ。
重大さんとは女優の話をした。
「ドカさんの好きな女優は誰ですか?」
「今、気になっているのは、真野あずさですね」
「おおー」
横で聞いていた原口さんが言った。
「俺は真野響子がすげえ好きだったな。ダンナの柴俊夫は、すげえ嫌いなんだよ」
ホットプレートのソーセージをひっくり返していたら、向かいの方に座っていた板垣さんや竹内さんが言った。
「ドカ君、大江戸動きだよ」
「変だよ」
「手つきがいやらしいよ」
「エロいね」
「稽古中は航君の方がエロかったけど」
原口さんが言った。
「どうして大江戸動きになるの?」
「動く時に、一旦バックする癖があるんですよ。それでああなっちゃうんですね、たぶん」
飲みは終始リラックスした雰囲気だった。
板垣さんは「盛り上がりに欠けるよね」と言っていたが、これでいいような気がする。
激しい芝居をした後は、しみじみ飲む方がはまるものだ。
伊原さんは一人でウーロンハイをちびちび飲んでいた。
日本酒を飲みながら色々話をしていたら、いつの間にか12時を越えていた。
あわただしく挨拶し、新宿駅へと走る。
武蔵小金井行きの最終電車に乗ることが出来、何とか無事帰宅。
2時就寝。