小金井のサンバカーニバル

 昼になっても30度くらいだった。真夏にしては本気度が低い。
 昨日の夜作ったチャーハンとスープで遅い朝食をとった。

 「虻一万匹」のリライトを少しだけやるが、どう考えても変更した方がいいダイアローグにぶつかった。
 いってみれば台本の穴だ。
 潔くカットするなり、変更するなりできれば良かったのだが、当時はそれほど余裕がなかったのだ。

 で、現在の視点でもって書き換えを行おうとしたわけだが、そこでキーボードを打つ手が止まってしまった。
 どこまで書き換えればいいのかという問題に直面してしまったのだ。
 とことん書き換えるとするならばそれこそ冒頭シーンまで立ち返り、台本の根底にある基本概念を見直す作業が必要になる。
 だがそれはもはや「虻一万匹」ではない。
 新作だ。

 5月に「夏の子プロ」を再演したが、初演時に出演した横岳と三代川は内容が完全に別のものになったことに驚いていた。
 この時もいったん始めた書き換えが止まらなくなり、ほとんどすべての台詞が変更になった。

 金曜の夜アサカと話した時、彼は言った。
 「新作、新作といくのもいいけど、既成の台本をやるのも興味があるよ」

 で、「虻一万匹」だ。
 正直なところ5年前と現在とでは台本を書く能力にかなり大きな差があると思う。
 当時はまだト書きや台詞に対して杓子定規なところがあって、全体的に頭でっかちな台本を書いていた。
 そういうのが好き、という考えもあるし、事実そういうふうに言ってくれる人もいる。
 ありがたい。
 そしてありがとうございます、と本気で思う。
 それはそれとして、俺自身がそれを認めてはいけないと思うのだ。
 ゆえに、5年経った現在、過去の己と対決するような心構えでもってリライトを続けている。

 今日ぶち当たった壁はおそらく5年前の俺もぶち当たった壁なのだ。
 「なんか変だけど、これ以上面白い展開を思いつかない」

 今日の自分にはいい答えが見つかりそうになかった。
 ゆえに、リライトはストップ。
 じっくり考えてから再開するつもりだ。

 夕方、武蔵小金井商店街の「ふれあいカーニバル」に行く。
 物見遊山気分だったのだが、本当にサンバカーニバルをやっていたのには驚いた。
 見慣れた道をサンバ。サンバサンバ。
 というわけで、サンバである。

この人は一番暑かっただろう無造作にぷりんぷりんなのだった。手品師みたいなオヤジが最後尾で踊っている。

 若い姉ちゃんの生ケツをたっぷりと拝み、8時半帰宅。
 水餃子を作って食う。

 夜になると冷房がいらないほど涼しくなったので、窓を全開にして1時間ばかりうとうとする。
 11時に起き、ビデオで「シェルブールの雨傘」を見る。
 カトリーヌ・ドヌーブがかわいかった。
 ロジェ・バディム監督に出会う前であろう。
 もし生まれ変われるなら、ロジェ・バディムになりたい。