音響作業に忙殺される

 仕込み初日である。
 鞄に、衣装と台本と私物とMDデッキと借りたCD数枚と中山パソコンを入れた。
 腰が抜けそうなくらい重かった。
 昨日は1時間だけ寝て、後は徹夜だった。
 そして今朝の電車は通勤ラッシュである。
 天罰みたいな辛さがあった。

 あまりの混雑ぶりに結局スムースに乗ることが出来ず、3本ほど電車を先送りした。
 劇場に着いてから音響ブースに入り、編集の続きをやる。
 きっかけ抜きも途中だったので、編集は困難を極める。
 劇場備え付けのCDデッキはなぜか出力レベルが異常に高く、録音すると音が醜く割れてしまうのだ。
 ミキサーを駆使してなんとか音量を調整し、苦労してダビングを繰り返し、夕方5時には90%片が付いた。

 最後の一曲を編集している時、空白部分を挿入する必要が生じたので、無録音部分のトラックを作ろうと録音レバーを引いた。
 ところがなんと、必要なトラックをそれによって消去してしまったのだ。
 あと一息で全て終わるはずだったのに、最後の作業は明日に持ち越しとなってしまった。
 愕然であった。
 照明の調光卓を操作している中山君が幸せそうに笑いながら「ご愁傷様です」と言った。

 夕食の弁当を食べて気を取り直し、夜はきっかけを音響オペの鈴木さんとあわせた。
 スピーカーの位置がどうしても高い位置になり、音的に違和感が出てしまうのはどうしたものだろう。
 色々試行錯誤をしてみたが、決定打が出ていない気がする。

 仕込みは11時過ぎまでかかった。
 客席の平台を積む作業を終えるとみんなもうふらふらだった。
 解散後の地下鉄南北線車内では皆が言葉が少なかった。

 しかも、飯田橋で乗り換えた東西線が神楽坂で接触事故を起こし、しばらく立ち往生となった。
 12時近くにそんな事態を迎えるなんて、間の悪いことだ。

 結局1時頃帰宅。
 へとへとに疲れていたが、残った音響作業をして、3時半に寝る。