後輩の結婚祝い

 朝11時に起き、素麺を茹でて食べる。
 昨日の夜作って冷やしておいたローストビーフを少し食べてみたが、非常においしくなかった。
 焼き方もまずかったのだろうが、安い肉ということもあり、妙に脂っこかった。
 捨てるのも勿体ないのでとりあえず冷凍し、処分は保留。
 カレーや牛丼などに使う予定。

 2時過ぎにうちを出る。
 木村と香ちゃんの結婚お祝いパーティーが銀座であるのだが、4時開始とのことだったのでその前にパソコンのパーツを買おうと思ったのだ。

 有楽町のビックカメラに行き、パーツフロアでCPUクーラーとケースファンを物色。
 お試しの意味で安いケースファンを買うと、パーティーの開始時間まで10分という状況だった。
 急いで歌舞伎座方面へ向かう。

 昭和通り沿いのレストランに入ると受付には二学年下の地道さんがいた。
 いきなり7年ぶりくらいの再会である。
 中にはいると幹事の春田君がうろうろしており、その奥さんである由美子さんが子供をあやしていた。
 先輩の大田さんがいたので早速四方山話などする。

 4時に開始となったが、人数が揃っておらず、全体のノリも今ひとつという状況だった。
 「ぞれでは、新郎新婦が入場じまじだら、お手持ちのグラッガーをならしてぐださい」
 幹事の春田が仕切る。
 その後ろから由美子夫人が我々に、
 「お願いね!」
 と内助の功的アシスト。

 そして木村夫妻はゆっくりと入場してきたのだが、クラッカー部隊の人数が少ないため必然的に砲撃は散発的になり、威嚇以上の役割を果たすことが出来ずに終わった。
 香ちゃんの所属している劇団の座長さんが音頭を取り、乾杯となる。
 「ぞれでは、みなざま、どんどん食べてぐだざい」
 春田君は必死に仕切り、我々ももそもそと食べ始める。
 木村君も香ちゃんもまるで披露宴の時みたいな席に座っており、こそばゆそうにしていた。
 とりあえずビールを注ぎに行く。
 「おめでとう」
 「ありがとうございます」
 と木村君。
 「ここにいるより、みんなと色々話したいでしょ?」
 「そうですね、やることないからとりあえず料理食ってますよ」
 「じゃあ後で、君らがビールを酌して回れば?」
 「そうですね」

 やがて結婚式と披露宴のビデオが流れた。
 牧師さんが祝福をしていた。
 結婚式の牧師さんはパロディみたいな外人喋りだった。
 たぶんそうでないと結婚した気がしないからだろう。

 誓いの口づけシーンは春田が如才なく、
 「ぞれでは皆様、ご注目下ざい!」
 と振ったので、盛り上がった。
 「よく見えなかったんでもう一回お願いします」
 とリクエストしたが、春田君には無言で却下されたので、悲しくデザートを食べた。

 見回すと学芸大劇団漠の面々がかなり沢山いる。
 1つ上の先輩である菊地さん夫妻が遅れてきた。
 会うのは8年ぶりくらい。

 4つ下の関くんは、赤瀬川源平みたいになっていた。
 「今は盛岡にいるんですよ」
 とのことだ。
 「虻一万匹」初演に出た白石は、現在現場監督みたいなことをやっているらしい。
 1月にタバコをやめ少し太り、顔は日に焼け、ほったばかりのジャガイモみたいだった。
 3つ下の片桐亜樹は課長島耕作の愛人みたいな濃いめの化粧で現れ、飯野とざっくばらんな話をしていた。
 望月や中山君も来たが、しょっちゅう会っているので今更話すことがない。
 「中山君、○×の芝居でさあ」
 「その話をここでするのはやめましょう」
 という具合だ。

 香ちゃんが所属しているのはミュージカル劇団で、そのメンバーはお祝いに歌を歌ってくれた。
 香ちゃんがソロをとり、格好良く決めていたのだが、背後には複雑な表情を浮かべた木村が、料理と酒と香ちゃんと地面と天井と手のひらを複雑な表情で眺めていた。

 ビンゴゲームが始まった頃には座も随分とうち解けて楽しげなものになっていた。
 望月はビンゴそっちのけで、春田夫妻の娘(2歳)と遊んでいた。
 中山君と関が望月の分までビンゴカードを見ていたが、二人よりも先に望月がビンゴとなった。
 「望月さん、ビンゴですよ!」
 と中山君に呼ばれた彼は、子供を地道さんに預けると、
 「ビンゴでーす!」
 と中山君と関のブーイングをものともせず勝利者の声も高らかに商品をもらいに行き、すぐに春田夫妻の娘(2歳)のところへ戻っていた。

 6時に一次会が終わり、皆は外へ。
 菊地さん夫妻と話しながら三原橋交差点へ歩く。
 奥さんの淳子先輩は今でもダンスをやっており、先日は武蔵小金井の小スペースで踊ったそうだ。
 「今回漠の人全然呼べなかったのよ。それから、3月くらいにドカさんがやってた芝居のチラシ、みたよ」
 「そうですか。女の子だけのやつですか?」
 「そうそう」
 年を重ねて落ち着いた淳子さんではあったが、喋りはじめると昔の片鱗を覗かせ、次から次へと言葉が出てきた。
 その後ろで菊地さんは柔和にほほえんでいた。
 「ドカさんは今、何やってるの?」
 と菊地さん。
 「芝居やってますね。そればっかりですね」
 「すごいねえ」
 「いや、大変ですよやっぱり」

 2次会はカラオケだった。
 菊地さんは三原橋で別れ、帰っていった。

 2次会にてフルーツ盛り合わせみたいな色柄のネクタイと黒スーツで浅香登場。
 「菊地さん帰っちゃった?」
 「うん。浅香によろしくって言ってたよ」
 「そうかあ。実は不義理しちゃってさあ」
 かなり会いたいらしかった。

 部屋は二つ借りており、一つが漠関係。もう一つが香ちゃん劇団関係だった。
 店の人がシャンペンなど運んでくれたので、それを注いだりしながら2次会は始まった。
 飯野が奥田民生を、中山君が定番のキラーナンバーであるポルノグラフィティの「サウダージ」を歌ったが、皆のテンションは歌よりもトークに向いていた。
 そのうちに漠部屋はお話部屋になった。

 シャンペンを飲みながら國さん地道さんと話す。
 地道さんは仕事を辞めたらしく、それを聞きつけた望月が叫んだ。
 「ドカさん、マグネシウム制作に誘って!」

 2次会から参加した福川さんとも少し話す。
 「君は肌がきれいだね」
 と言うと、
 「なんてこと言うんですか。それは勘違いです」
 と強く否定された。
 別に口説いたわけじゃないのだが。

 香ちゃん劇団部屋から一人男性がやってきて、ノリノリの様子で一曲歌いはじめた。
 が、漠部屋はすっかりトーク体勢に入っていた。
 なんとなく物足りなく感じていたので、その人にノリに乗っかる形で騒いでいると、無性に歌いたくなってきたので、香ちゃん劇団部屋へお邪魔してみた。

 そこはミュージカル劇団ということもあってか、歌わないと始まらない雰囲気だった。
 初対面の人達の輪に飛び込んで歌う時はいつも燃えてしまう。
 飯野と中山君も入ってきて、歌ストレスを存分に発散させていた。

 こうして踊り、歌い、叫んでいるうちに竜宮城の日は暮れていった。
 気がつくと回りにいるのは香ちゃん劇団の人達ばかり。
 木村と香ちゃんしか知っている人がいなかった。

 お開きになってから香ちゃんと挨拶。
 「ありがとうございました」
 「いやいや、何もしてないから(踊ってただけだし)」
 「実は私たち、演出を探してるんですよ」
 「え?ミュージカルでしょ?」
 「ええ。歌の部分じゃなくて、演出の部分なんです」
 「へえ」
 「機会があったらよろしくお願いしますね」

 地下鉄の駅で木村夫妻と別れ、地下鉄で帰宅。
 武蔵小金井に着いたのは11時。
 後は歩く毎に酔いが積み重なっていき、うちに帰るなり布団に倒れ込んだ。
 久しぶりに12時前に寝た。

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