愛嬌体力

 7月に公演が終わり、稽古中悩まされた蕁麻疹や吹き出物は夏の到来と共に消え去ったかに思われた。
 が、顔の吹き出物はしつこく残っている。
 もともと、若い頃からニキビや吹き出物で悩まされる経験がなかったので、今回のこれには地味に気を滅入らせている。
 やはり、内臓関係が悪いのだろうなあ。
 自覚症状はないから、肝臓だろうか。

 ピーター・ブルック『なにもない空間』読み終える。
 一度読んだだけではわからない。
 演出家の書いた演劇論は大抵そうだ。
 その人の演出する芝居と、その人の演劇論と、どっちがわかりやすいか。
 わかりやすい演劇論によってつくられたわかりにくい芝居は、観客にとっては迷惑だ。
 その逆はどうだ?
 わかりにくい演劇論によってつくられたわかりやすい演劇。
 観客にとってはおおいに結構だろうが、内部事情を知る役者やスタッフは、自分らがやっていることがバカみたいに思えたり。

 夜、和泉の代一元でラーメンを食べる。
 東京ラーメンの王道というべきなのか。
 キング・オブ・無難、といった感じの味。

 三谷幸喜作・演出『You are the top』ビデオで見る。
 4年前に上演されたもの。
 市村正親さんの愛嬌演技は、はじめは違和感を感じたが、上演時間のほぼすべての瞬間愛嬌を放出し続けるそのエネルギーには驚嘆し、やがて受け入れざるを得なくなる。
 愛嬌体力のものすごさ。
 そういえば随分前、舞台芸術学院のパンフレットに、市村さんが載っていたっけ。
 在校生と輪になって座り、自分の在籍時の話をサービス精神たっぷりに喋っていた。

 あそこまでいくと、後輩に優しいとか、そういう次元の問題じゃないのだろう。
 人前で、サービス精神たっぷりに話すことが、嬉しくて楽しくて仕方ないのだ、きっと。
 選ばれし魂の持ち主、なんだろう。
 モテモテだろうな。