飛鳥探求

朝7時半起き。
着替えて朝食をとりにロビーへ。
焼きたてのパンの香りがしていた。
クロワッサンを食べ、コーヒーを飲む。
朝にパンを食わせるスタイルは、最近流行っているのだろうか。

荷物をまとめ、地下鉄から近鉄に乗り換え、飛鳥方面に向かう。
奈良市からさらに南へ。
天気予報によると、奈良県南部は雨だったが、北部は曇りだった。
飛鳥はぎりぎり北部に位置する。
吉野あたりが南部に位置する。

京都から電車で1時間半揺られ、飛鳥に到着したのは10時半だった。
コインロッカーに荷物を入れ、駅前のレンタルサイクルで自転車を借りた。

緩やかな坂道を上り、キトラ古墳へ。
到着したものの、保存と管理を行う建物に入ることは出来ず、そこがキトラ古墳であることを示すのは案内板だけだった。
覆い隠し

道を戻り、高松塚古墳へ。
飛鳥歴史公園の一角にある。
覆い隠し2

歴史公園館にはさまざまな展示物やビデオがあった。
京都と同じく、公園の木々は見事に色づいている。
しかし観光客の姿はほとんどなかった。

昼過ぎに甘樫丘へ。
自転車を止め、長い階段を上る。
頂上からは飛鳥の土地がよく見晴らせた。
飛鳥寺がちょうどよく見下ろせる。
蘇我氏の邸宅がこの丘にあったらしい。

丘を降り、飛鳥寺に向かう。
想像していたより地味なたたずまいで、注意しないと通り過ぎてしまうほどだった。
観光客がほとんどいないため、余計にそう感じた。

中に入り、飛鳥大仏を拝み、説明を聞く。
当時の飛鳥寺は現在とは比較にならないほど規模が大きかったとのことだ。

寺のすぐそばには、蘇我入鹿の首塚があった。
近くに行き、そっと拝む。

昼飯前に、飛鳥坐神社に寄る。
観光客、参拝客、ともに誰もおらず。
境内はうすぐらく、静まりかえっていた。

飛鳥資料館の向かいにある土産物屋みたいなところで昼食をとる予定だったが、土産物コーナーのみ営業しており、食堂は閉まっていた。
平日で、観光客がほとんどいない状況で、食堂をオープンするとは確かに考えにくかった。
土産物屋の女の子が、
「どうぞ中で暖まってください」
と言うので、ストーブにあたらせてもらい、地図を手にどこで飯を食うか検討する。
「お食事ですか?」
と女の子が声をかけてきた。
「なんでもええんなら、すぐそこに一軒ありますよ。それから、飛鳥寺へ行く道の途中にも二軒あります」

飛鳥寺へ行く道は、今通ってきた道だった。
開いている店があったかどうか記憶がはっきりしなかった。
とりあえず<すぐそこ>の一軒を訪れた。
どの地方都市にもあるような、ごく普通の定食屋さんだった。
カツ丼を注文する。
カツは固く、玉子は固め過ぎだったが、値段が意外と安く、ボリュームもあった。

食後、向かいにある飛鳥資料館へ。
大きいパネルに、仏教伝来の顛末、蘇我氏と物部氏の抗争、大化の改新などの説明が書かれていた。
図書室もあり、飛鳥関連の書物がたくさんあった。

資料館を出ると、雨が降っていた。
小雨だったが、自転車をこぐにはややしんどい雨量だった。
15分ほど館内で雨宿りをすると小雨になった。
自転車のサドルを拭き、飛鳥寺前の道を戻り、酒船石を見に行く。

竹林に囲まれた小道を上ると、それは唐突にそこにあった。
雨垂れ石を穿つ

一言でいえば、溝やくぼみが刻まれたでかい石である。
遺跡と聞かなければ、建築材の残骸かなにかだと思ったかもしれない。

そのまま南へ走り、石舞台古墳へ。
日本史の資料集などにも登場する有名な古墳。
大きい駐車場もあるため、まばらながらも観光客の姿がちらほら見られた。
巨石を積む工法の節米がパネルに書いてあった。
多くの人員を動員し統率する力がないと出来ないことだが、統率できるだけの人口がこの頃にはあったのだろう。

石舞台古墳の先に行き、マラ石を拝む。
弟子にしてください

そのものずばりの石であり、見ればまたがらざるを得ない。

棚田を横に見つつ、駅に戻る。
4時半だった。
ちょうど日も暮れようとしていた。

当時の大和政権が日本国内にどれだけの勢力を持っていたのかわからない。
中央政府の規模としては、のちの都城形式とは比べものにならぬほど、飛鳥の都は小さいと思った。
コンパクトな都。

近鉄に乗り、奈良市へ向かう。
車中『ROCK GIANTS 70’S』読む。
キング・クリムゾンやピンク・フロイドの章を読む。
読んだ内容が、飛鳥で見てきた諸々と、頭の中で<ものづくり>というキーワードで結びついた。
妙な気分だった。

6時過ぎに奈良着。
商店街をうろうろし、夕食をどこで取るか検討する。
昼も夜も、観光地の化粧を落とさない京都と違い、奈良は普通の県庁所在地といった感じだった。
仕事帰りの人や買い物をする主婦が、商店街を普通に歩いている。
記憶の中にある武蔵小金井北口によく似ていた。

ネットで調べた飲み屋に入る。
飲み屋というより、丁寧に作った肴がおいしいという店らしかった。
クーポン券を見せたが、現在はやってないとのことだった。
シューマイ、梅にゅうめんなどを頼み、焼酎を飲む。
焼酎はロックで頼んだが、グラスになみなみと注がれ、香りもよく旨かった。

JR奈良駅近くのホテルへ。
昨日のホテルより料金が安いのに、部屋は昨日よりも立派で広かった。

昨日のホテルに奈良の観光ガイドブックを忘れてしまったので、電話をして探してもらう。
帰京する日に京都に寄るので、もし見つかったらその時に引き取りにいく予定。

シャワーを浴び、12時就寝。