田中慎弥『切れた鎖』読了。
短編三本。
表題作、没落する資産家の家の話。
自分がそうであったように、娘もそうなる、運命の連鎖。
昼過ぎ、西荻へ買い物。
ホワイトリカーとブランデー、氷砂糖と広口瓶を買う。
家に帰り、梅酒を仕込む。
今年はふた瓶仕込んだ。
一つはブランデー、もう一つは普通のホワイトリカー。
日記に梅酒を漬けたことを記録していない。
忘れているのだ。
2009年から毎年漬けている。
それ以前はいつ漬けたか、blogを検索して調べてみたが、2003年に漬けたという記述があったきりだった。
2006年には「漬けようと思っている」と書いてある日記があったが、たぶんこの時は漬けていない。
ちょっとした過去のことが気になる性分だ。
日記をつけていると、確かめることが出来るし、昔と違って検索も楽だ。
自己満足だ。
だがこの性分が自分を作っている。
こうしてブログを更新し続けることは、あえて言えば<自分維持活動>ということになるのだ。
新しいデジカメを使って、日常の色々なものを撮るが、前の機種より光学ズームの倍率が高くなったせいで、手ぶれがひどくなった。
ズームを途中で止めればいいのだが、最大にするクセがついてしまっている。
夕方、久しぶりに上石神井の『アストラーザ』へ。
どかんと盛られた飯と、ガツンと焼かれた肉を、がっつり食いたかった。
店の前に着くと、行列が出来ていた。
今までそんなことはなかったので、もしや閉店ではと焦りを覚える。
時間をつぶしてから行こうかと思ったが、並ぶ人が途切れる様子がなかったので、最後尾につくことにした。
お店のおばちゃんが出てきて、
「ソテーですか?」
と聞いた。
「はい」
「何グラム?」
「420を」
「大丈夫かしら…」
「(そのくらいの量は)大丈夫っスよ」
「いえ、あなたじゃなくて、お肉の残り。ちょっと待っててね」
おばちゃんは店に引っ込むと、おじさんになにやら確認していた。
再び出てきた。
「あなたでソテーは終わり。もし、後から来るお客さんがいたら、言ってあげてくれませんか?」
まさか自分で売り切れとは。
間に合って良かったと思いつつ、一体どうしてこんなに混んでいるのか、理解に苦しむまま順番を待った。
カップルが後ろに並んだ。
おばちゃんから言われていたので、彼氏に言った。
「おしまい、みたいですよ」
「え?」
「品切れらしいです」
「あらー、(彼女に)おしまいだって」
カップルは去っていった。
別のカップルが後ろに並んだ。
「終わりっす」
「え?」
「自分で、品切れ、らしいっす」
「あ、あー、そーすか」
カップルは去っていった。
次に、夫婦と子供一人の家族連れが来た。
妻は車を駐車場にまわし、夫と娘が並んだ。
「あの、おしまいらしいですよ」
「どういうことですか?」
「自分で、料理、おしまいらしいです」
ちょうどその時、おばちゃんが店から出てきた。
夫はおばちゃんに聞いた。
「おしまいですか?」
「あのね、ソテーと、スパゲティミートソースがおしまい。ハンバーグなら出来るんだけど」
「わかりました」
他のはできたのか。
知らずに、カップルを帰してしまった。
自分の前には、3人の親子連れと、一人の中年男が並んでいた。
店の中を除くともちろん満席だ。
家族連れが二組帰ったので、並んでいた親子連れが先に入った。
次に中年男が中に入った。
自分の後ろに並んだ家族連れの旦那に聞いてみた。
「なんでこんなに混んでるんですか?」
「今週テレビでやったんですよ、アド街ックだったかな」
なるほど、テレビ番組に紹介されての混雑だったのか。
確かに、あのポークソテーを見たら、行ってみようと思う人がいても不思議はない。
しかも今日は日曜日だ。
店は、おじさんおばさんの他に、おそらく娘さんらしき人と、その子供が切り盛りしていた。
家族総動員か。
列に並んでから40分経った頃、ようやく中に入ることができた。
ポークソテー420グラムに、ライスは中盛りにした。
コーヒーを頼んだら、終わってしまったとのこと。
コーヒーがなくなるほど、今日は混んでいたということだろうか。
アイスコーヒーはあるというのでそれを頼んだ。
隣のテーブルは、自分の前に座っていた中年男だった。
キャップを被っていた。
彼もポークソテー420グラムと中盛りライスを頼んでいた。
キャップ中年男に続いて、自分のテーブルにもソテーが運ばれてきた。
思わず、
(長かったなあ)
と心の中でため息をついた。
分厚いポークソテーはもちろん旨かった。
ライスを大盛りにしても良かったかもしれない。
隣のキャップ男が店の娘さんを呼んだ。
「チキンソテーの420グラムを追加注文お願いできますか」
「は? はい。セットで?」
「はい」
「ライスは?」
「ライス大盛で。それから、このライスのお代わりください」
耳を疑った。
ポークソテー420グラムを食べてるそばから、チキンソテー420グラムを大盛ライスつきで頼み、さらに今食べているライスのお代わりをするとは。
もしや名のある<大盛職人>ではないかと、横顔をさりげなく確認してみたが、わからなかった。
1時間待ち、10分で食べ終え、すぐに会計をして外に出た。
行列はまた増えていた。
普段使いの地元民としては、店が繁盛するのは喜ばしいが。
西荻窪「キャロット」のように常態化すると、気軽に食えなくなる。
ほどほど混んでくれればと思う。
夜、YoutubeでYMOの鼎談見る。
面白くて、関連動画を連続で見てしまった。