初日、しみじみ嬉しかった言葉

8時起き。
チケット予約状況表を印刷し、荷物を確認し、9時に家を出る。
その時間の電車はラッシュのピークが終わっていて楽だ。
9時50分にアトリエセンティオ着。
入り口のドアが閉まっていたので、2階の事務所へ行きノックする。
誰もいないようだった。
劇場に電話をかけるが、誰も出なかった。

とりあえず外の椅子に座って、コーヒーを飲み、サンドイッチを食べた。
担当さんが遅れているのだろうか。
受付の山田さんに電話をしてみる。

「中で寝ていらっしゃる可能性もあるので」

とのこと。

なんどか強くノックをしてみるが、やはり反応はなかった。
劇場さんから来た過去メールをチェックしてみたところ、携帯の番号があった。
かけてみる。

「担当の者が遅れているかもしれませんね。カギを開けて中に入ってください」

カギの場所を教えてもらった。
一安心だ。

中に入り、積んである平台をおろし、客席の並び方を考える。
キャパ数を30にしてあるのだが、初日は予約でぎりぎりいっぱいだ。
山田さんは、
「60席は作れます」
と言っていたので、彼女が来てから相談することに決め、舞台側の色味をチェックする。
下見の時に思ったとおり、客席に比べて舞台空間は広く感じる。
同じバランスで客席を作ったら、キャパ70以上はいくのではないかと思う。

潮田君と、お手伝いのあいちゃんが来る。
照明について簡単に打ち合わせ、二人は作業に入った。

12時前に山田さん、そして役者陣が到着した。
芹川、大いに迷ったという。
踏切を渡って50メートルを左と書いてあったので、行きすぎてしまったという。
しかし、実際は70メートルくらいある。

集合してから、皆に、初日打ち上げの買い出しに行ってもらう。
その間、制作関連の雑事を山田さんにお願いし、3時まで準備作業。
昼過ぎ、永野さんが手伝いに来てくれたが、仕事がほとんどないので、看板作りなどもっぱら雑用ばかりやらせてしまった。

3時から、通し稽古。
昨日の段階で、3本ずつわけるのには無理があるとわかったので、全作品をすべて通してやることにした。
ひとつ終わる毎に、次の作品の準備に入り、自分がタイトルコールをするという流れ。

役者は、不必要な緊張はしていない感じだった。
自分だけがなぜか、わきによけている間、緊張していた。
その緊張がどこから来るものなのか、まったくわからなかった。
自分の出番になり、芝居を始めても、役に没頭するという感じにはならなかった。

1時間49分ですべて終了。
次の集合時間と、準備について連絡をし、食事休憩の時間になる。

食欲はまったくなかった。
不必要なプレッシャーを取り除き、目前の芝居に集中できるよう、気持ちを落ち着かせることだけに集中した。

開場10分前に集合する。
開場中はお客様の案内を役者でやるのだが、8人もいるので、全員で取りかかる必要はない。
楽屋に引っ込むというスタイルの芝居でもない。

森さんとナベさんは、劇場外の路上で案内をしてくれた。
知恵ちゃんは靴を下駄箱にしまう係を。
自分は、空いている席への案内と残隻数のチェック、開演前のアナウンスをした。

7時半開演。
挨拶をし、一本目「先輩役者」のタイトルコールをする。

一本ごとに暗転する旨を、お客さんに説明していたので、音があったりなかったりしても、終わる毎に拍手をいただいた。
タイトルコールをする前に、準備状況を見るのだが、思っていた以上に早かった。
おかげで、自分のラジカセ準備が少し遅れてしまった。

ラストの『走馬燈』が終わった後、思ったよりも強い拍手をいただいたのが嬉しかった。

全体的に、昼の通しよりも良かった。

先日お世話になった行政書士のふくださんが、同僚を連れて見に来てくれた。
本当に来てくれたことにびっくりした。
森さんから紹介していただいた方なので、二人でご挨拶をする。

昼に買った飲み物を冷蔵庫から出してお客さんに配り、初日乾杯をする。
とにかく配って乾杯しないと、座が落ち着かない。
行き渡ったのを見計らい、大声で「ありがとうございました!乾杯!」と言う。

イルカ団で共演した松山さん来る。
「アドリブはどのくらいあるんですか?」
今回は基本的に、皆、台本に忠実にやっていると答える。
稽古で表現が変わった箇所はもちろんあるが。

美術の松本さんと話す。
抱えている問題について聞き、大いに驚く。
一度、しっかりと話を聞きたい。

思ったよりも沢山のお客さんが残ってくれたので、初日打ち上げは盛況な感じとなった。
明日の集合時間について、役者一人一人に耳打ちする。
芹川と知恵ちゃんに、参加したお客さんに、飲み代のお気持ちとして寸志を募る。
金額を決めるよりも、お客さんとしては気楽じゃないかと思う。

お客さんが帰っていき、終電が近い役者も帰り、残ったメンツで後片付けをする。
明日、燃えるゴミの日だというので、知恵ちゃん、ナベさんはゴミを持っていってくれた。

劇場さんに消灯確認をしてもらい、明日の入り時間を伝える。
明日も自分でカギを開けることになった。
カギをなくしたら大事だ。気をつけねば。

板橋駅まで、知恵ちゃん、上岡君と一緒に帰る。
知恵ちゃんは自転車なので、途中で別れる。
上岡君と高田馬場まで一緒に帰る。
色々話す。

1時前帰宅。

お客さんで来てくれた仲澤さんが、
「芹と知恵がうまくなったなあと思いましたよ」
と言ってくれたのが、一番嬉しかった。
今回、演技の演出のようなことは、これまでのようにしておらず、二人が地力で自分の力を底上げした部分が多い。
自分がやれたのは、役者の相手役として、芝居を受けるということだけだった。

もちろん、自分が言ったことや、稽古をする時の芝居の受け方で、二人が変化したこともあるだろうが、自分らで練習した結果として、仲澤さんの言葉が引き出されたのだと思うと、しみじみ嬉しかった。

明日のパンフ、アンケート、チケット印刷をしてから就寝。