9時から仕事へ。
仕事始めだ。
仕事は去年の夏からずっと忙しい。
半年経っても変わらずだから、今年もその調子でいくのかもしれない。
午前中は大変だった。
年末にやっていた仕事の内容を、まったく思い出せなかった。
こんな経験は初めてだ。
「kくん、俺、今日はもう、ダメだから」
「そんな神さま」
隣の席のkくんにちょっかいをかけても、思い出せないものは思い出せない。
正月ボケではなく、9日間の間、脳が完全に芝居モードに入っていたのが大きい要因だろう。
仕事そのものではなく、抱えている案件を思い出すのが精一杯だった。
5時半にそそくさとあがる。
阿佐ヶ谷へ。
マグの稽古初日。
昨日の夜の時点で印刷した台本は全体の4分の1弱。
それでも人数分印刷して鞄に入れると、けっこうな量になった。
本読みをする。
遅れて到着の出演者もおり、都度読み返す。
今回マグに初参加する役者さんは、兜森隆将くんと、かねしろまなぶ氏。
兜森君は、去年2月の舞台で存在を知り、10月に別の舞台で共通の知人を介してお近づきになり、今回出演していただくことになった。
低い声を自然に出せるところが、妬ましい。
妬ましいとは、ほめ言葉でもある。
かねしろまなぶ氏は、3月のエンゲキブで共演したが、それ以前にいつの間にか知り合いになっていた。
そして自分も、いつの間にか「金ちゃん」となれなれしく呼ぶようになっていた。
なれなれしく呼ぶように、実は、させられていたのだろうか?
タッパがあるという意味で、渡辺さんと双璧。
自分より明らかに背が大きい役者が二人いるという環境も珍しい。
出演者全員がそろい、読みも一通り終えてから、稽古終了。
「えこ贔屓」にて飲み。
去年の春頃だったか、マグネシウムリボンは「第5期」に入ったと、芹川や知恵に話した。
その時点ではまだマグネシウムリボンとしての公演日程は決まっていなかった。
決められなかったというのが正直なところだ。
それまでのやり方では進んでいけないと思ったから、「第5期に入った」という言い方をした。
だが具体的にどういうやり方でいけばいいのか、春の時点ではわからなかった。
夏が過ぎ秋が来て、マグ不足公演を経ることで、やり方は段々と固まってきた。
その実践が、今回のマグ公演『暮れなずめ街』になる。
1999年10月に、王子小劇場で上演された台本を元にしている。
当時の本をそのまま使うのではなく、台本から人物プロフィールを書き出し、その人物プロフィールを元にして、話を最初から書くという試みをしている。
初演時の本が拙いのが理由の一つ。
じゃあ今は進歩しているかというと、よくわからない。
若い時、勢いだけで作った芝居を上演して、
「風邪が治りました! ほんっとに来て良かった!」
と、あるお客さんからものすごく喜んでもらったことがある。
その台本を今やっても、たぶん同じような奇跡は起きない。
奇跡を起こそうと思うからだと思う。
その時その時間、そのメンバーのその人間関係があったから、奇跡が起きたのだ。
演劇は、その日そのステージが終わったら、もう二度と同じ物は作れない。
一回一回が奇跡のようなものだ。
だから、過去の奇跡を再現するのではなく、今、これからのことを思い続けて毎回作っていかなければ、奇跡は連鎖しないのだと思う。
何も期待はしない。
むしろ、最悪の事だけを考え、そうならないように注意を払う。
そのうち座組みができてくるだろう。
焦らず、押したり引いたりせず、はしゃがず、愚痴らず、おごらず、ゆっくりと、でも必ず少しは前進するように心がけて、稽古を進めていきたい。
11時半頃まで飲む。
昨日の台本書きと、今日の仕事始めと、相反する作業を続けてきたためか、家路につく道すがら、足がふらついた。
とにかく寝よう。
帰宅後、シャワーを浴び、すぐ就寝。