ため込み

カツ丼二連チャンはお腹に優しくなかったので、夕方まで何も食べずに過ごした。

夕方。
下北沢へ行き、あぁルナティックシアターの公演観劇。
台本の出來がどうとか、演出がどうとか、そういうこととは関係なく、お客さんに楽しんでもらうという一点に絞って作られていて。
そのことを評価してくれとか、もっと口コミしてくれとか、そういうのとは関係なくやりたいことをやっている感じ。
両方があって、とても好ましく見ることができた。

公演後、新宿に移動し、トシさんと待ち合わせる。
「新宿であまり飲まないんスよねえ」
と、トシさん。

なんとなくその辺になんかありそう、という曖昧な感覚を頼りに、三丁目あたりをうろうろし、結局客引きに引っかかる形で居酒屋に入った。
色々語る。

半分、いや、80パーセントはオレが喋っていたんじゃないかと思うし、どうしてこういう飲みになったのか自分でもわからない。
トシさんとはどういうわけか、大勢いる飲み会の時は、遠くの席になることがほとんどで、喋ることがごく少ない。
まるで、他に我々の話を聞いている奴は誰もいないという状況でしか、話ができないみたいに。

父親についての話、というより、父性についての話になった。
「怒ればいい」
とトシさんが言うのを、まるで20年前の再現のごとく聞いていた。

20年、いや、それより前か。
作・演出デビューは大学時代だった。
部長もやっていた。
いい公演もあれば悪い公演もあった。
悪い公演で、後輩達が陰で、
「塚本さん、怒ればいいのに」
と言っていたのを後に聞いた。

その、悪い公演は、オレが書いた台本と、オレの演出が悪かったから悪い公演になった。
だからというわけじゃないけど、復讐をしてやるという強い思いがずっとあった。
1年と8ヶ月後にやった、学生時代最後の公演が、復讐だった。
つたないなりに。

「ドカさんは、ため込み過ぎなんですよ」
「塚ちゃんは、ため込みすぎるんだよ」
「塚本さんは、ため込みすぎるんですよ」

前世紀から言われ続けたことをまた聞く。
でも、90年代、2000年代ときて、ため込みのスキルは上がっている。
昔のようなため込みとは違い、半分は冷静な自分がいる。
20代と同じ懊悩を抱え得るはずはない。

12時帰宅。
案外、なにも食べなかったので、真夜中に腹が空いた。
荻窪駅前の家系ラーメンへ、夜中の3時に行き、ラーメンを食べる。
不健康きわまりない行動。
ため込んでいるからか?
単に、炭水化物が不足していたんだろう。