ザリガニ釣り

夕べ寝る前、亡くなった伯母の話を父とした。おばちゃんはパチンコが好きだった。景品のチョコレートがたまるとうちの母に送ってきた。母はその半分を、一人暮らしをはじめたばかりのオレに送ってきた。ある年、バイト給料日の一週前に金がなくなったオレは、二日間そのチョコレートを食べて飢えをしのいだ。結果、10年くらいチョコレートが嫌いになった。そんなことを父に話すと「そんなに金ない時は、言ってくれよ」と、最近起きたことのように心配していた。

4時過ぎに目が覚める。なぜ早く起きるのか首を傾げる。二度寝後、7時起き。そぼろ納豆を両親に教える。郷土料理の話をする。そぼろ納豆は茨城の郷土料理らしいよ云々。母が昔よく作っていた大根のよごしは富山の郷土料理だよ云々。

東西線で日本橋、銀座線で三越前へ。銀座線は戦前に出来た地下鉄だが、爆弾に耐えるほど深いところにあるわけではなかったので、戦時中の空襲で市民の避難場所としては使われなかったらしい。東京都心の爆撃は焼夷弾中心だったから、効果はあったのではないか?

仕事、月末の登録作業。テストと本番。

昼、日本橋本町へ足を伸ばす。「寿々」という喫茶店でランチを食べる。煮込みハンバーグ。味噌汁がなめこ汁というのが嬉しかった。その界隈、高校生の冬休みに郵便局のアルバイトをした時に配達した区域だった。家に帰って日記を調べれば当時の地図が出てくるはず。店を出てからそのあたりをぐるっと回ると、いい雰囲気の喫茶店を見つけた。蔦が壁を張っていた。メニューはスパゲティばかりだったが、雰囲気がすごくいい。今度入ってみたい。

午後、テストと本番実行。いけそうだった。

芝居のプロットを思いついた。

三人の男がいる。それぞれ、礼服、ジャージ、釣り人姿。糸の先に餌をつけて水辺に落としている。会話から、ザリガニ釣りをしているとわかる。釣り人姿の男は、釣りとしか聞いていなかったんでフル装備で来たらしい。怒りながらあとの二人の格好を批判する。ジャージ男はザリガニ釣りと知っていたようだ。礼服男はなぜその格好なのか答えようとしない。その時糸が引かれ、ザリガニが釣れる。誰の糸かでもめるが、バケツがないことに気づく。近くのドンキへ買いに行こうと三人は相談。一番ドンキに行きやすい格好ということで、ジャージが行くことに。残った釣り人と礼服は雑談。礼服はその格好の理由を語らず。釣り人は最近、本当に釣りにはまっているらしい。その話を延々とするうちに、釣り道具の話になる。説明をしている時、ポケットから携帯用のバケツが出てくる。バケツあるじゃんといって、釣り人は水を汲みにいく。ひとり残った礼服は、ザリガニをそっと逃がす。逃がした場所から女がやってくる。「ありがとうございました」「だれ?」「たった今解き放たれた、ザリガニでございます」女は、命を助けてくれた礼をするというが、礼服男はどっかの迷惑なYoutuberが仕掛けるドッキリか何かだと思って断る。女は言う。「お望みのものなら大判でも小判でも地位でも名誉でも。差し支えなけば、私のこの肉体でも捧げます」女はザリガニを自称するだけあって上から下まで赤ずくめ。「いいからあっち行ってくれ」男はめんどくさくなっている。そこへジャージ男戻る。「おい、ザリガニはどうした?」「逃げた」「なに? ふざけるな! 何やってんだよ!」赤い女はおびえる。行きがかり上、礼服男はかばうように女を後ろへ下げる。釣り人も戻ってくるが、彼は「また釣ればいいじゃん」と、鷹揚なようすで、網をしかけながら「蟹を捕まえるときに使う網でな。泥蟹なんか一網打尽にできるんだぜ」礼服はあわててその網をずたずたに引き裂く。「何しやがる!」すかさず女がフォローする。「まあまあ、いいじゃない。こうなったらさ、四人でなんかして遊びましょ」女はよく見るとけっこうかわいい。「大人が三人集まってザリガニ釣りしてる時点で、俺たち、終わってたわけだ。それが、なんだこの展開?」「こうなってくると衣装的に、お前が一番有利だな」などなど、ジャージと釣り人は急に浮かれ出す。礼服男は彼女の正体がザリガニだとばれるのが心配になている。まったく信じていなかったのに、流れで信じる側に回ってしまったことが不本意。

こんな話を10分ものくらいにまとめ、シリーズ化して8本くらい書く。タイトル「ザリガニ釣り」で、パート1 からパート8まである。内容はエスカレートしていき、パート3では海が舞台に、パート5では米軍が登場、パート8では宇宙が舞台になっている。本番では一本ごとに休憩時間を置く。アナウンスは「ただいまから15秒の休憩時間となります」いちいち客電をつけては15秒後に消す。

仕事、何だかんだで9月10月11月と、業務が出来ているようだ。一時はどうなることかとヒヤヒヤしていたが、3ヶ月目に入ったのは嬉しいし、このままどんどん便利になって、役にたってくれるといいなあと思う。

定時前後、登録データの確認を少ししてから上がる。フライドチキンとポテトをオーケーストアで買って帰宅。

映画「火花」見に行きたいなと思う。監督が板尾さんゆえに、すごく興味がある。脚本が板尾さんと豊田利晃。ということは「ナイン・ソウルズ」つながりだ。主演の原田芳雄は「板尾は良すぎる」と言った。のちに、ドラマ「白州次郎」で原田芳雄演じた吉田茂を見て板尾さんは「原田さんは大きい、怪物だ、強く憧れる」と日記に記した。「ポルノは機会があったらやっとけ」という原田さんの言葉が頭に残り、板尾さんは去年、ロマンポルノに出演した。つながっている。継がれている。「火花」は絶対見なければならない。日本橋TOHOシネマが仕事先に近いから、明日見に行こう。