久しぶりに魚がかかった感覚

3時に目覚ましが鳴った。止めて明かりをつけ、釣りの準備をして家を出た。
旧江戸川に向かった。外は暗かった。
河原からひとが騒いでいる音が聞こえた。日本語ではなかった。インドかネパールの言葉のように聞こえた。集まって談笑しているような声だった。
河原に下りて、宴会の音を背中に聞きながら下流に移動した。夜の河原は怖いが、三回も通うと慣れてきた。満潮時刻は4時過ぎで、水は岸の上の方まで上がってきていた。

表層を泳ぐルアーから試していった。まだ狙ったところへうまく飛ばせない。暗いのでなおのことそうだった。そして暗いのでルアーの軌跡もわからなかった。意図したのとは違う方角から着水音が聞こえてはがっかりした。
水面には生きものの気配があった。しかし、一度もバイトすることなく、夜明け時間が近づいてきた。

うっすらと明るくなってきてから、色がやや暗めのフローティングミノーを投げてみた。すると、岸近くに寄せてきた時に、シーバスがルアーに食らいつき、跳ねた。一瞬竿がしなったが、かかることはなかった。
同じ方向を何度か引いてみたが、反応がなかったので、ルアーを鉄板バイブに替えてみた。
今度も、岸近くに寄せてきた時だった。竿が大きくしなった。バイブレーションだから、根掛かりしてしまったのだと思い、竿を緩めた。しかし、糸のテンションは持続していた。再び竿を引くと、明らかに引いている様子で竿がぐんぐんしなった。
リールを巻くと、ドラグから糸が出ていった。竿を立てて、かかった獲物の姿を見ようとしたが、底に沈んで抵抗したまま上がってこなかった。ドラグを締めて、リールを巻いていくと、それは足元近くに寄ってきた。
そして、糸のテンションが急に緩んだ。糸が切れたのだった。「あー…」思わず声が出た。ゆっくりと糸を巻いていくと、糸はPEラインではなく、リーダーのところで伸びるように切れていた。

ルアーを付け替え、キャスティングを続けた。釣れなかったのは残念だったが、ド素人なのだから仕方ないと思った。それよりも、かかったことと、引く手応えを味わえたことが嬉しかった。

その後はまったくアタリがこなくなった。潮も引いてきて、岸辺の水位が低くなってきた。そして小雨が降ってきた。引き上げる頃合いだと思った。

自転車に乗ると雨が急に激しくなった。環七交差点に建っていた町内会のテントに入り、雨をやり過ごした。
7時半に家に帰った。

朝食に鯵の開きと大根おろしを食べた。大きな魚がかかったことを父に話した。「エイじゃないか?」と父は言った。「まさか」と答えたが、引いている時に感じた圧倒的な重さは、そうだったとしても不思議ではないものだった。

食後、4時間くらい寝た。昼にモスバーガーを食べた。

PCをつけて、Linux Mint のアップグレードを試みた。ダウンロードに時間がかかりそうだった。

ダウンロードをしている間に、自転車で南葛西方面に向かい、環七沿いにある「タックルベリー」に入った。ルアーとリーダーのラインを買った。

家に帰り、アップグレードの続きをするが、うまくいかなかった。

4時半に走りに行く。

中川堤防に出て、川沿いの道を北へ走った。新川の水門のところでいったん堤防から離れて、新川にかかった橋を渡った。家族連れが新川に釣り糸を垂れていた。
堤防に戻る。
水門そばに火の見櫓が建っていた。近くに行くと、新川の由来について解説した看板が立っていた。火の見櫓は新川のそばに建っていたものではなく、再現模型でもなかった。史跡ではないのに、史跡っぽく建ててあった。そんなことをするくらいなら、旧海岸水門をきちんと保存して、本当の史跡にすればいいのにと思った。

新川の北側は、堤防の上の道が荒れていた。下流側より先に整備された分、古くなっているのだろうと思った。
江戸川競艇の近くまで走ってから堤防を下りた。船堀街道を横断して、船堀幼稚園の脇道を抜け、新川を渡り、第三葛西小学校の裏道を通って家に帰った。1時間以上走った。昨日よりもたくさんの汗をかいていた。

風呂に入り、さらにたくさんの汗を流した。汗はいくらでも出るようだった。上がる前に水浴びをしたが、体はすっかり火照っていた。夕食に秋刀魚を食べた。ご飯が体の中で燃えだして、暑くてたまらなくなった。

ベランダに出て、冷えた缶ビールを一息に飲んだ。散々汗を流し、ほてった体を冷やすために飲むビールは、真夏の味がした。

Linux Mint のアップグレードを諦め、クリーンインストールをした。1時間以上かかった。動作が少しだけ軽くなったような気がした。そして、プリンタドライバがあらかじめ入っていた。

9時に実家を出た。

新宿で降り、自転車を止めてあるところへ行った。ロックを外してライトをつけると、バッテリーが切れていた。鞄にUSBケーブルとACアダプタがあったので、コンセントがあるところまで行き、30分ほど充電した。ライトをつけると、家までは十分持ちそうな明るさだったので、自転車に乗って家に帰った。11時だった。

少し汗をかいていたので、水のシャワーを浴びた。

「石橋貴明のたいむとんねる」を見た。佐野史郎がゲストで、怪獣映画の話をしていた。

水耕栽培のトマトの葉が少し大きくなっていた。枯れきらず、育とうとしているのが健気に思えた。しかし、これから日照時間が短くなっていくので、実をつけるのは無理だろうと思った。夏にトマト棚を立てたあたりは、向かいのマンションの影になって、真昼には日光が直接ささなくなっている。
それでも、枯れるまで見守っていこうと思った。