『怒りの葡萄』上巻読了

『怒りの葡萄』上巻読了。頭の中が読書モードになっていることを再確認。読みやすかったのもあるが、集中してひと息に読めた。

トムの家族は住み慣れた土地を捨て、果実摘みの仕事を求めてカリフォルニアへ移住することにした。ケイシーもついていくことになった。出て行くギリギリになって、じいさんが行かないとごねるが、入眠剤を飲まされてトラックに乗せられた。
トラックは、オクラホマからテキサス、ニューメキシコ、アリゾナを通りカリフォルニアへ。ルート66を走った。途中、じいさんが脳卒中で死に、ウィルソン夫妻という連れができた。
カリフォルニア州に入ったところで長兄のノアが去り、ウィルソン夫妻とも別れる。その後の砂漠越えでばあさんが死ぬ。しかし、とにかくやっとのことでジョード家はベーカーズフィールドにたどり着いた。
果樹園と耕せそうな休耕地がそこら中にあるように見えたが、道中、逆方向を走る車の持ち主から聞いた話では、カリフォルニアの連中は離農してやってきた人々を『オーキー』と呼んで蔑み憎悪しており、信じられないほど安い賃金の仕事しかくれないらしい。

面白かった。1939年の作品なので、まだアメリカは日本との戦争をしておらす、大恐慌の余波を国中が引きずっている。この作品から漂ってくる社会主義の香りは、当時のアメリカでは一種のトレンドだったのではないか。もう一つのトレンドはナチスだったかもしれないが。
この2年後に日本とアメリカは開戦し、6年後に戦争は終わる。戦争が終わった頃、アメリカの失業率は一桁に減っていた。1939年時点で、離農し貧困あえいでいた人々は、増大する軍事産業の雇用を満たす労働力になったろう。あるいは志願によって兵力にもなったかもしれない。
もし日本がアメリカに宣戦布告しなかった場合、数百万人の失業者たちが共産主義者になっていたかもしれない。第二次南北戦争が起きていたかもしれない。戦略として日米戦争を考えるなら、放置すればするほど向こうはやばくなりそうだ。日本だって昭和恐慌があるのだが、アメリカと比べると日本の方がはるかに民が官憲に対して従順なので、日本対アメリカの内憂我慢比べみたいなことになったら、日本の圧勝だったのではないか。全然ほめてないけども。