『茜色に焼かれる』見た

7時起き。朝飯にホットドッグ。足の甲、痛みがなくなってきた。
10時、ブルグミュラーの残りを練習。先生からお悔やみにとCDをいただいた。

11時過ぎ、印鑑登録をしにセシオンの区民事務所へ。ワクチン接種会場になっていた。受付の女性に今日やっている業務はマイナンバー登録のみと言われたので、南阿佐ヶ谷の区役所へ移動する。登録を依頼すると、すでにしていることが判明した。しかし、せっかく来たので改めて登録し直した。

12時帰宅。ホットドッグ食べる。

水耕トマトの実が大きくなってきた。中型トマトなのでそろそろ赤くなるかもしれないと思い、トマト棚の周りを防虫ネットで囲んだ。ひと回り囲うだけで鳥類どもの襲撃はかなり防げる。
ゴミ捨て場のネットを見てもわかるが、鳥類はネットを引っ張ることはしても、囲われた中には入っていかない。トマト棚の理屈もそれと同じで、周りを囲っていれば、きゃつらにとって見えない死線が形成され、その中には入ってこない。
昆虫類になると話は別だ。飛んで火に入る連中なので、隙間から入ってきて卵を産みつける。

2時過ぎ家を出る。永福町へ。十ヶ月ぶりに井の頭線に乗った。

神泉で下りる。階段を上って円山町のホテル街を通り抜ける。電車を降りて先に歩いていた男女二人がひょいと左に曲がりホテルに入った。電車でわざわざ円山町まで来るんだなあと感心した。

『喜楽』でもやしワンタン麺を食べる。

『茜色に焼かれる』16時5分の回を観にユーロスペースへ。

前の回が終わった時、客席から拍手が聞こえてきた。映画で拍手は珍しいと思った。

少しして16時5分の回が開場した。中に入り開演を待つ。スクリーンの前に椅子が二脚置かれていた。なんだろうなあと思っていると、開演時間になってから館の人がマイクを持って出てきて、主演の尾野真千子と石井裕也監督を呼んだ。舞台挨拶らしかった。前回の終わりに起きた拍手は舞台挨拶に向けられたものだったのだと納得した。そういえば扉が開いた時、最初に男女二人組が出てきたが、このお二人だったのだ。全然気づかなかった。

撮影のエピソードや、お互いに対して思ったことなどを和やかに語るトークだった。尾野真千子はこの作品に強い思い入れがあるのだなあと思った。石井監督は声がよく、雰囲気イケメンのオーラをまとっていた。モテるだろう。

映画の冒頭からしばらくは、夫を事故でなくしたシングルマザーのかつかつな暮らしが映される。夫は事故死。加害者はアクセルとブレーキを踏み間違えた老人。元官僚かなにからしい。
事故後七年経ち老人は亡くなる。尾野真千子演じる良子は葬式に行くが門前払いを食わされる。老人の息子らしき人を鶴見辰吾が演じていた。

良子は時給900円台の花屋で働き、夜は時給3600円の風俗店で働いている。純平という中学生の息子がいるが、学校でいじめにあっている。夫はミュージシャンで、命日には元バンドメンバーと故人を偲んだ飲み会がある。

花屋の店長は上からコネで他のバイトを入れるよう言われ、良子をやめさせるため規則をたてにネチネチいびる。風俗店の客は良子が年増だと言って暴言を吐く。バンド仲間のドラムの男は未亡人AVの冒頭みたいに良子に迫る。
こいつらと、純平をいじめる中学生たちが、良子と純平を虐げる側の人々であるわけだが、一様に演技の不自然さがあった。男の気持ち悪さを表現するために存在しているかのようだった。

冒頭の鶴見辰吾はその点が違っていた。遺族ならそういうふうに言うかもしれんなあと思わせる説得力があった。自分は正しいことをしていると信じてセリフを言っていた。大切なことだ。 悪役は、自分は正しいことをやっていると信じて演技をしなくてはならん。 いじめっ子達や花屋の店長などはそう見えなかった。

風俗店にはケイというセンシティブな女の子が働いている。映画の中盤、その子と良子は居酒屋で飲みながら『怒り』という感情で連帯する。酔い潰れた良子を迎えに純平がやってくる。ケイは純平とデートの約束をする。ここはいい場面だった。

後半、良子は元クラスメートの男と再会。惹かれるようになり、彼と人生を共にするため風俗店をやめる。永瀬正敏が店長を演じている。店長は、風俗で働いていたことをそいつに話したかと聞く。そういうのを言える奴でなくて大丈夫なのかという問いだった。これが後半の柱になる。

純平は、祖父からもらった自転車でケイに会いに行く。しかしアパートに着くと、ケイのヒモが彼女を突き飛ばしながら部屋を出てきて車に乗せるところに出くわす。純平は車を追いかけ、男がATMに入ったところで追いつき、扉を叩き、切ない事実を知る。

良子は元クラスメートとホテルのベッドにいる。体を交わす前に良子は、風俗で働いていたことを男に告白する。その後、気持ち悪いシーンが少し。

ケイのことで落ち込み、家にこもった純平をからかいに、いじめっ子らがやってくる。彼らは、刑法上五年以上の懲役または死刑に該当する犯罪を行う。その結果、彼らではなく良子と純平が家を追い出される。ここはさすがに不自然だった。

赤は母ちゃんの勝負色だと純平が言う場面が中盤に伏線としてあったが、追い出された後、良子が赤い唇を塗るシーンになる。向かう場所はガキどものところかなあと思っていたら違った。思わず(違う! 良子! そっちじゃない!)と心の中で叫んだ。
で、店長の永瀬正敏が登場し、すこぶるおいしいところを持っていった。遠山金四郎の桜吹雪のように悪役を懲らしめていたことに戸惑った。ここで敵の存在がぼやけてしまった。

ラストは、義父が入っている施設で演じるボランティアの出し物を、良子が稽古する場面。彼女が昔舞台役者をやっていたという設定はここで生きるのだが、パフォーマンスはアングラのパロディのようで、覗いていた純平は「なんだこれ」とつぶやいてしまう。
一方、良子の演技を撮影しているのが風俗店の店長で、演技が熱を帯びるのに引きずられるように、アングルを変えるなどして、すこぶる熱心に撮影していた。これは、二人がケイという存在を共有している意識の確認と、互いに似たもの同士であることに気づく場面であり、のちにくっつく暗示のようにも見え、一番いいシーンだと思った。

色々思うところがあったが、尾野真千子はけなしようがなかった。元バンドメンバーのドラムスに言い寄られる場面での笑顔、風俗店の客にニコニコする芝居、元クラスメートとデートして意味不明の超ぶりぶり人格になってしまうところ、公園の階段に突進し勢い余って足をがばっと開いてすっころんでいるところなど、見所ばかりだった。

息子の純平くんを演じた男の子と、ケイを演じた片山友希も大変良かった。片山友希は、熱気にあてられたのか、体当たりの演技をしていた。

虐げる側の男キャラには不満があった。特に元クラスメートは、永瀬正敏に超おいしいところをもっていかせるための噛ませ犬に見えてしまった。自ら望んでその芝居をしていたのかが気になる。

8時半過ぎに映画館を出た。

永福町のカルディでショートブレッドを、キッチンコートでオニオンサラダ、メロンを買って帰宅。
メロンは下の部分が柔らかくなっていなかったので常温で放置。
夕食は食べず、ショートブレッドをつまむだけにした。

12時過ぎ就寝。