串本から帰りつつ観光した

また夜中の12時に起きてしまった。飲んだせいかもしれない。
そして、飲んでもあまり酔えず、美味しくない。脳天が痺れるような感じを味わえない。

2時近くまで起き、再び寝た。6時半過ぎに目が覚めた。カーテンをあけるといい天気だった。
7時半に朝飯。卵焼きが関西風の味つけになっていてとても旨かった。『海辺のカフカ』でホシノちゃんがナカタさんに食べさせる食堂の卵焼きを思い出した。あの場面を読むと必ず卵焼きが食べたくなる。

スマホの充電をして、8時20分にチェックアウトする。

ナビを太地町のドルフィンリゾートにセットした。

途中、海岸沿いを走っていると、奇妙な岩の並びが見えた。すぐそばにあった道の駅に車を止めた。橋杭岩というらしかった。

再び車を走らせ、9時15分頃ドルフィンリゾートに着いた。受付に見学希望と伝えた。そのまま海辺に行くといけすが見えた。イルカが盛んにジャンプしていた。
「ここですよ」と受付の人に声をかけられ、見学対象となっている屋外プールを案内された。

プールは、小さいのが二つと大きいのが一つあり、それぞれの中でイルカが泳いだりジャンプしたりしていた。他に、ゴマフアザラシのいる水槽と、海亀のいる水槽があった。

飼育員の女性が三人やってきて、アザラシの健康診断としつけと餌やりを始めた。リーダー格風の女性が説明をしてくれた。夜のうちに喧嘩して傷ができていることがあるのでそれを確認するらしい。アザラシは三頭いて、父、母、娘らしかった。娘は今年、毛がうまく生え替わらず、ゴマフアザラシ特有の模様になれなかったそうだ。母は「最近太りすぎなのでダイエット中」とのこと。

大きい水槽のプールサイドにどこかのおじさんがしゃがんでイルカを撫でていた。真似をしてプールサイドに座り、寄ってきたイルカの背を撫でてみた。イルカは撫でられやすいように体を横に向けてくれた。おじさんが声をかけてきた。「歯がけっこう鋭いから、噛まれないように気をつけて」施設の人らしかった。

小さいプールからイルカの餌やりがはじまった。四頭くらいのイルカがいた。隣の小さいプールには一頭だけがおり、餌を心待ちにしているためか、盛んに潮吹きを繰り返して飼育員の注意を引こうとしていた。

イルカもアザラシと同じく、朝の健康チェック、しつけトレーニング、餌やりという三つがセットになっていた。「最後に華麗なジャンプをお見せします」と飼育員さんが言って、何かの合図を出した。すると二頭のイルカが垂直に高くジャンプした。思わず拍手してしまった。

別のプールに移る前に、飼育員さんは餌やりの終わったプールに黄色いボールを投げた。イルカたちはそのボールを口にくわえると、空中に放ってキャッチするという遊びをさかんに始めた。
遊んでいるうちに、ボールがプールサイドに転がってきたので、それをイルカに投げた。イルカはそれをキャッチして、またこちらに放ってきた。何回かそうやってキャッチボールをした。海に隣接したいけすの方を見ると、救命胴衣を着た子供を背中に乗せたイルカが泳いでいるのが見えた。遊んでくれているのはイルカで、こっちは遊んでもらっているのかもしれないと思った。視線を目の前のプールに戻すとイルカと目が合った。するとイルカは「どや。イルカが放ったボールをキャッチするアクティビティやで。観光価値あるで」とでも言いたげに、またボールを放ってきた。
新学期になって隣の席に座った転校生がすごく頭が良いということにふと気づくような本能的な気づき方で、イルカの頭の良さがわかった。ああ、たぶん彼らは、センター試験の点数がオレより150点は高いだろう。それでいてガリ勉タイプじゃなく、スポーツもできるに違いない。特に水泳なんか得意そうだ。転校してきたばかりだから口を聞いてくれるけど、すぐにスクールカーストの高いところにいってしまって、オレのことなんかタメ口だろう。

ナビを那智の滝にセットした。
昨日泳いだ海岸からそのまま山を上ったところにあった。いろは坂のようなヘアピンカーブを上っていくと、唐突に滝が見えてきた。滝の入り口には鳥居があり、周囲には土産物屋があった。土産物屋には駐車場もあった。500円かかったが、滝にすぐ行くためにそこに止めた。

鳥居をくぐり階段を下りて行くと、滝を眺められるスペースがあった。そこから階段を上っていくと、より間近に眺められるようだった。観覧料が300円かかったが、ここまで来たら全部見てやろうと思った。

手水があり、それを飲むための皿が100円で売られていた。一つ買ったが水は飲まなかった。財布の中の小銭が残り少なくなっていた。

滝を間近に見られる展望台から滝を見上げると、迫力があった。ほぼ垂直の崖を流れ落ちてくる水が岩にぶつかってしぶきを上げ、それが霧状になって展望台を含む周囲の広い空間を満たしていた。そのおかげで涼しかった。思わず手を広げ、空気を抱きしめるような所作をしていた。気配を感じて振り返ると、パワースポットめぐりが好きそうなかわいい女の子が、滝見ポジションからオレがどくのを待っていた。
車のところに戻り、売店で買った黒飴ソフトクリームを食べた。売店プロレスのポスターが貼られていた。滝の前にリングを設営するようだった。ちょっとだけ、見たいと思った。

昼飯を新宮のラーメン屋で食べようと計画していたのだが、特に腹は空いていなかったので、松阪へ急ぐことにした。車を返却してから松阪牛の何かを食べた方が良さそうだった。ナビを松阪にセットすると、到着予定時間は3時過ぎと出た。結構いい時間だった。で、すぐに松阪に向かって出発した。

熊野から高速道路に入った。ところが尾鷲南ICを過ぎたあたりで、ナビにコースが表示されなくなった。車は長いトンネルの中を走っていたので、地図に存在していない道を地下に向かって走っているような気がした。

トンネルを出るとナビは復活した。そのまま進み、海山ICで一般道におりた。見知らぬ土地の高速道の意図せぬ道を走ったことで不安になっていたので、小休止のためにファミリーマートでコーヒーを買って飲んだ。
そのあたりは一昨日訪れた銚子川のやや北側だった。ナビにコースが表示されなくなったのは、尾鷲南から北側の高速道路が、一昨日開通したばかりだからだった。

一般道を北上する。そこから先は道なりにひたすら松阪に向かって進んだ。のんびりとドライブした。

3時20分頃に松阪に着いた。予定より40分ほど早く車を返却し、松阪牛を食べさせるレストランに向かった。

駐車場には車が一台も止まっておらず、客は自分一人だった。牛ステーキ丼を頼もうとしたが、夕方からのメニューになると言われたので、牛カツを頼んだ。カツは、スライスした肉を折り重ねて揚げてあった。ソースは甘く、上品な味だった。

食べ終わって店を出ると4時だった。5時半までには松阪を出て、電車で名古屋に向かわないといけなかった。近鉄特急に乗るか、JRに乗るか迷い、気動車であるJRの快速『みえ』に乗ることにした。

セブンでビールを買い、4時40分の『みえ』に乗った。自由席は空いていた。ビールを飲みながら田園風景を眺めた。この三日間、田んぼで借り入れをしている人をよく見かけた。三重や和歌山は今頃が収穫時期なのだろうか。
あと、関係ないが、和歌山を走っている車は軽自動車が非常に多かった。

6時過ぎに名古屋へ着いた。駅を出て名鉄入り口あたりまで意味なく歩き、また構内に戻って、グランドkioskで天むすとせんべいとワンカップを買った。乗車時間より少し早い時間にホームへ上がった。ぷらっとこだまのチケットを買ったので、飲み物券がついてきたが、昨今はkioskにお酒を置かなくなったので、特にソフトドリンクか飲みたいわけもなかったし、何も交換しなかった。

7時8分のこだまに乗り、天むすをつまみにワンカップを飲んだ。

『文明史から見たトルコ革命』読む。

今月は本を一冊も読めなかった。一応、中村医師の書いたアフガンの本を読んだが、パンフレットのような薄い本なので読んだうちには入るまい。
なぜそうなったかというと、普段読書に使っていた時間をSQLの勉強とか他のことに振り分けてしまったからだ。

そして何よりも、ハイデガー『存在と時間』に手を出してしまったことが大きい。ようやく序論を読み終え、解説ページに取りかかっているのだが、この本を10ページ読み進むのと、50巻以降の『グインサーガ』を二、三冊読むのと、読書時間は変わらないんじゃないか。しかも書いてあることのほとんどがわからなかった。
でも不思議なことに、わからないながらも、何が主題となっているのかがぼんやりと見える瞬間があった。いや、見えてくるような瞬間があったような気がしたような気がしたような気がしたような気がしないでもない。

9時半頃に新横浜到着。横浜線と新都心線経由で帰宅。横浜アリーナでコンサートを見た帰りと大体同じ時間帯だった。

今日は串本から延々と移動してきた日だったなあと、地図を見て思った。半分が車で半分が電車だった。昨日、海で泳いだため、背中が日に焼けて少し痛かった。夏の義務を果たしたようなものだ。

12時半就寝。