『ベイビー・ブローカー』見る

朝、入浴して汗を流し、体重を測って驚いた。一昨日から6キロも増えていた。いくら一昨日が脱水気味だったとはいえ、6キロはいくらなんでも増え過ぎである。

朝飯は食べず。

大人向けの芝居を考えていたら、テーマが『健康診断』になった。でも内容は子供以下。
胃カメラを飲んだら食道から先に空間のねじれがあり、別の人の胃袋に通じていることがわかる。内視鏡検査の結果によると、自分の胃は別の人の食道と通じており、その人が食べたものが胃に送られているらしい。しかもその人の食生活は健康なので、自分はいくら暴飲暴食しても健康という。で、ある日、世界のどこかに、自分の暴飲暴食のために苦しんでいる人がいるということに気づき、後悔し、心をあらためて健康的な食事に切り替えるが、今度は別のやつの食道とつながってしまい、ぶくぶく太りだす、という内容。

午前中、ストーン氏とツールについて色々やりとりをした。朝の作業時間短縮について合意する。

昼、『吉利』で麻婆豆腐定食。体に水分がたまっているせいか、食べ終わる頃には顔全体から汗が滴った。

午後、ヒマ。

夕方、三越前へ。
地下のVELOCEで冷コーを飲み、『存在と時間』7巻を読んだ。
6巻を読んだ時、わしの理解力もずいぶん上がってきたもんじゃわい、と悦に入っていたのだが、7巻で始まった「時間」についての考察は、何を言ってるのか全然わからず、読む速度が落ちまくっている。

6時半、TOHOシネマズ日本橋へ。

『ベイビー・ブローカー』見た。

冒頭場面、若い女が赤ちゃんを赤ちゃんポストに入れ、二人組の男が赤ちゃんを運ぶ。その顛末を二人組の女刑事が車の中で見ている。
この場面が、雨の降る夜の街という風景で撮られていた。映像が美しく、いきなり心を掴まれた。雨をたっぷり降らせることができて、是枝監督はさぞかし嬉しかったろうなあと思った。

捨てられた赤ちゃんを、子供を欲しがっている夫婦に横流しして売っている二人組と、冒頭の若い女が、売上山分けという条件で合意し、赤ちゃんを買ってくれる人を探すのが本筋。追いかける刑事の物語が並行する。本筋はロードムービー風。

韓国の風景が、いつもの是枝作品のようにたんまりと撮られていた。韓国人のディレクターは、虚構を精密にこしらえていく方向へ芸術性を進化させる傾向があるような気がするが、是枝監督はロケハンで見つけた風景を見たままありのまま切り取るような撮り方をしていた。車が走る海辺の道、坂のある町、市場、遊園地、駅、高速鉄道、砂浜のある海岸が、そのままなのに、きれいに魅力的に移っていた。こういう風に祖国を撮られた感想を韓国の人に聞いてみたいものである。

俳優陣の芝居が実に上手かった。セリフ術で判断することはできないが、所作、表情、抑揚を組み合わせた感情表現が繊細で巧みだった。ベタな芝居をする人が一人もいなかった。メインキャストはもちろん良いのだが、おとり捜査の男女や、後半子供を高い金で買い取ろうとする品のいい夫婦の芝居が良かった。特に後者の奥さん。子供を死産しており、違法とわかりつつもブローカーから赤ちゃんを買おうとし、赤ちゃんと対面した時の心がときめいた様子や、授乳してよいですかと頼む時の抑えたキラキラ感が素敵だった。それを、実の母親役のイ・ジウンが見るという演出よ。そらそうよ。何がそうなのかって、そらそうよ。

ベタな芝居とジメジメ演出がなかったということは、我々観客の理解力をきちんと信じてくれているということだ思った。

施設の子供、ヘジンを演じた子役が大変良かった。是枝監督の子供演出がドハマりしていた。洗車中に窓をあけてしまい、車内でみんなびしょ濡れになったのに歓喜の叫び声をあげるヘジン。この場面が一番好きだ。

生まれてきてありがとうというセリフを言う場面は、クライマックスであるが、ど根性的『ど感動』の涙ダクダク演出はもちろんなし。クール。でも暖かい。ホタルの明かりのような明るさがあった。

9時、映画館を出る。

余韻に浸りながら日本橋駅まで歩き、東西線で中野。自転車で帰宅。

体重、300グラム減っていた。軽く走ればすぐさま1キロか2キロは落とせそうだったが、しばくらは腎臓を経由して地道に水分排出していった方がいいと判断した。走ることは好きだが、走らなくても良くなることも好きだ。

中日、阪神に敗北。2点取られて追いついて、また2点取られて追いついたが、またまた2点取られて追いつく前に負けた。

小田嶋隆死去。月曜たまむすびのコーナーが好きだった。最近小説を出したばかりなのに。残念。

1時過ぎ就寝。