路線バスで稚内へ

朝5時半起き。部屋の電気ポットでお湯を沸かし、朝飯にやきそば弁当を食べた。やきそば自体は普通のインスタント麺だが、茹でこぼしの湯で作るスープが妙においしかった。

紋別バスターミナルへ。

今日は路線バスを乗り継いで稚内に行く予定だった。路線バスは事前に時刻表を調べるのが大変だ。

6時59分の雄武高校行きに乗った。

バスはオホーツク海に沿って北西へ。

8時16分に雄武バスターミナル到着。次のバスが来るまで24分待ちになったので、ターミナルの周囲や、展望台から見える景色を写真に撮った。

雄武で生まれ育った人が描いた大きなイラストがターミナルビルの中に飾られていた。戦前生まれの人で、戦争中の暮らしが細かく描かれていた。

8時40分の枝幸行きに乗る。

途中で雪が降ってきた。雄武では温かく、この分だとバスの待ち時間の散策が楽だなと思っていたのだが、あてがはずれた。

昨日も思ったが、バスのスピードは雪が降り始めても変わることなく速かった。このあたりは1989年まで鉄道が走っており、バスは代替交通手段なのだった。

9時50分に枝幸ターミナル到着。次のバスは浜頓別行きで、発車は9時55分だった。ネットで調べた時は乗り換え時間の短さに不安を覚えたが、降りた場所でそのまま待っていればいいので楽だった。

浜頓別行きに乗ってしばらくすると雪は降り止み、再び好天となった。

紋別を出てしばらくの間は、海の沖に浮かんだ流氷が白い線のように見えていた。しかし、枝幸を過ぎてからは見えなくなった。

10時40分に浜頓別到着。次のバスまでは2時間以上待つことになるので、この町で昼飯を食べることにした。

中華レストランへ。妙にきれいなお店で、注文はタッチパネル方式だった。中華丼を食べた。

店を出て、町に一軒だけあるスーパーへ。特に珍しいものはなかったので、ペットボトルのコーヒーだけ買った。

ターミナルに戻り、道の駅のパン屋でチーズケーキとエビカツバーガーを買った。

バスの発車時刻までまだ1時間と少しあったので、ターミナルの西側にあるクッチャロ湖へ行ってみることにした。そこでコーヒーを飲んでチーズケーキを食べるのも悪くないと思ったのだった。

緩い上り坂になった歩道を湖に向かって歩く。地図で見るとクッチャロ湖はすぐ近くにあるように感じられたが、歩くとけっこう遠かった。

坂を登りきったあたりで雪が降り始めた。ターミナルを出た時はいい天気だったのに、あっという間に急変した。

坂道の突き当たり丁字路にある林の向こうが湖で、その方向から鳥の鳴き声が聞こえてきた。湖岸に出るには丁字路を右に曲がって迂回しなくてはならなかった。引き返そうかと一瞬思ったが、まだ12分ほどしか歩いておらず、時間的には十分余裕があった。

道を右に進んでしばらく行くと、左手に岸に降りる下り坂があった。歩道には雪が膝上くらいまで積もっていたので、車道の端を歩いた。

湖に近づくにつれて、雪が激しくなってきた。フードをかぶり、足元に気をつけながら坂道を下ると、目の前に『クッチャロ湖』と書かれた立て札が見えてきた。

湖は凍りつき、その上に雪が積もっており、岸と見分けがつかなくなっていた。左奥に白鳥の群れがいて、その向こうに、黒くてよくわからないが別の鳥の群れがいた。

白鳥の群れを見て、とりあえず心の中で「よし、見た!」とフラグが立った。来た道を戻る。フードをしていると視界が悪くなり、先ほど迂回の時に曲がった丁字路を、うっかりまっすぐ進みそうになった。

ターミナルに戻り、上着を脱ぎ、リュックをおろし、ひと息ついた。雪に降られた割に、指先は寒さを感じなかった。

12時59分発の、稚内駅バスターミナル行きに乗る。本日乗る最後の路線バスで、最終目的地までこれで一気に行く。

バスは、オホーツク沿岸部だけでなく、時々国道から脇道にそれて、集落を回った。乗ってくる乗客はいなかった。

稚内が近づいてくると、流氷が見られなくなった。

宗谷岬の手前で、かなり長い無人区間があった。そこを過ぎると急に家の数が増えてきて、すぐ先が宗谷岬だった。

宗谷岬の停留所からは、大勢の乗客が乗ってきた。バスはあっという間に満席になった。

宗谷岬を過ぎると、海岸にふたたび流氷が見られるようになった。ただし、今度のは完全に接岸しているものだった。

砕氷船が運行されていないので、流氷の面積は大きかった。しかし、網走で見たものより、薄いように見えた。

15時44分、バスは稚内駅バスターミナルに到着した。外は寒かった。雪が舞っていた。

稚内の道は、網走や浜頓別に比べると滑りやすかった。まんべんなく踏みしめられ、つるつるになっているような気がした。

散策して写真を撮ろうと思っていたのだが、寒いのと足元が滑るのとで諦め、とりあえずホテルにチェックインした。

5時過ぎまで、夕食をどこでとるかを考えた。

選択肢は二つあった。ホテルの近くに良さげな居酒屋があり、そこでご飯ものを食べつつ、いっぱいやるコース。もう一つは、同じくホテル近くのデカ盛り系洋食屋で名物のポークソテーを食べ、飲みはホテルでちびちびやるコース。

居酒屋は海産物などの肴がありそうだったが、一日中路線バスに乗り続けた疲労感がけっこうしんどかったので、洋食屋へ行くことにした。

17時開店の洋食屋へ、17時20分頃に行った。カウンターに座り、ポークソテーとライスを頼む。

少し後に入ってきたお客さんも、ポークソテーを注文していたが、お店の奥さんに「終わっちゃったんです」と言われていた。オレが最後だったようだ。

ポークソテーは分厚かった。ライスも2合近くあった。その取り合わせを見て、上井草の『アストラーザ』を思い出した。

肉はアストラーザくらいの量は確かにあった。ソースがデミグラスというところが違っていた。ライスは普通盛りにした。それでも多かったが、アストラーザでライス特盛りを完食した人間が残して許される量ではなかった。

いや、もちろん、ちゃんとおいしかったのだが。

ホテルに戻り、さて、温泉は何時頃入りにいくかな、と考えていると、無性に眠くなってきた。とりあえず仮眠をとり、9時とか10時くらいに入りにいくかと思い、ベッドに横になった。