6時半起き。部屋の電熱ケトルで油を沸かし、汁なし担々麺のカップ麺とカレーパンを朝飯に食べた。
荷造り、歯磨きなど身支度をし、7時半にゲストハウスを出た。1階に他の部屋に泊まっていた男性がいた。サーファーかダイバーか、いずれにせよマリン関係者といういでたちだった。
ホテルにキーを返し、車をレンタカーの駐車場に止めてから、港のフェリー乗り場へ。
7時40分、チケット売り場があいた。境港行きのチケットを買った。
8時、レンタカーの受付に行き、キーを返す。
8時35分、高速フェリーに乗る。境港に着くまでずっと寝ていた。
10時過ぎ、境港に到着。フェリー乗り場のビルで缶コーヒーを買い、駐車場へ行き、ナビをみどり口駅にセットした。山陽本線瀬野駅に隣接した、スカイレールサービスというモノレールの駅だ。
そのモノレールは、交通系のYoutuberが配信しているのを見て存在を知った。今日、境港から宇部空港まで移動する予定だったが、途中で立ち寄れる位置にあった。
ナビが表示した到着予定時刻は午後3時50分だった。5時間もかかるのか? と、一瞬目を疑ったが、たぶん走っているうちに繰り上がってくるだろうと判断した。
境港を出て、途中、江島大橋のファミマで買い物をする。今日の昼飯はスカイレールに乗った後、広島でお好み焼きを食べようと思っていたが、到着予定時刻によっては断念しなくてはならないため、予備昼飯として、納豆巻きとおにぎりを買っておいた。
ついでに、フィルムを入れ直した一眼レフで江島大橋の写真を撮った。
山陰自動車道を三次方面に向かう。いい天気だったが、山間を走っていると、遠くに見える山の山頂付近に、ダークグレーの雲が固まっていた。走っているうちに雨になるのかなと思っていたら、それは唐突にやってきた。
どこのトンネルか覚えていないが、トンネルを抜けたとたん、集中豪雨に見舞われた。ワイパーが効かないほどだったので、スピードを落とした。
しばらく、豪雨ゾーンが続いた。
やがて、中国山地を南側に抜けたあたりで、雨は勢いを弱めていった。
三次のどのあたりかで、一般道を走行した。どうも、ナビの設定が、一般道を優先するようになっているらしかった。みどり口駅への到着予定時刻も、Googleマップで有料道路使用で調べると、1時台に到着できるようになっていた。
一般道に降りたあたりで、時刻は12時半頃になっていた。広島はまだまだ遠かった。とりあえず、ここらで昼飯を食べておこうと思い、納豆巻きとおにぎりを食べた。
1時を過ぎたころだったか、道が突然一車線になり、道幅は車がすれ違うのが困難なほど狭くなった。そのまま、つづら折りの下り坂が続いた。志和口向原線という道路だった。
いろは坂か! とツッコミをしながら下っていくと、住宅が見えてきて、やっとつづら折りは終わった。なんでナビはこのルートを選びやがったんだろう。
ところが、つづら折りはそこで終わりではなかった。目的地のみどり口駅がもうすぐという辺りで、瀬野川福富本郷線の道が、またもすれ違い困難な一車線つづら折りとなっていた。
キャロル・キングか! とツッコミをしながら下り、そこが終わると、目的地までほんの数キロとなっていた。
Spotifyで、「つづら折り」を検索し、再生しようとしたが、なかった。
「つづれおり」ならあった。
1時45分、みどり口駅に着いた。JR瀬野駅前のパーキングに車を止めた。
スカイレールの車両は、バスの三分の一くらいの長さだった。モノレールには詳しくないが、羽田のようなまたがるタイプではなく、江ノ島みたいなぶら下がり式だった。
丘の上のみどり町中央駅が目的地で、途中にみどり中街駅をはさむ。出発すると、かなりの傾斜を、ゆらゆらしながら上っていく。乗客は、オレと同じ物見遊山野郎が一人と、慣れきった住人五人だった。
窓からは、公園で遊んでいる子供たちを、鳥の視点で眺めることができた。
てっぺんの駅に着き、すぐ、帰りの切符を買った。下りも、物見遊山レディが一人と、慣れきりレジデンツ四名が乗り込んだ。常に、ある程度混んでいるようだった。
映画『グランド・ブダペスト・ホテル』に出てくるケーブルカーみたいだ、と思った。交通手段なのだけど、デザインやスケール感がたいへんかわいい。近々、廃線が決まっているらしい。こういう路線がなくなるのは、文化の消失としか思えん。お金があったら文化を大事にできるか? バブルのとき、ゴッホの『ひまわり』落札したのが、それか? 違うんじゃないかな。お金がない時こそ、文化をどう思っているのかが、問われるんじゃないのかな。
2時半になっていた。ナビを広島市内にセットする。
30分で着いた。
『長田屋』というお好み焼き店に行こうと思っていたのだが、店の近くにあるパーキングがどこも満車だった。探していると、店の前を通った。10人以上、順番待ちの列ができていた。
(あ、無理)
瞬時に判断し、その場を離脱し、ナビを宇部空港にセットした。
今度の到着予定時間もおかしかった。8時15分となっていた。車は6時に返却しないといけないし、帰りの飛行機が出るのは8時だった。
とりあえずしばらくは、ナビ様のおっしゃる通り、西広島バイパスを走った。どこかで経路設定をしなおそうと思っていた。
佐方SAに入り、車を止め、ナビの設定をしなおした。やはり、デフォルト設定が一般道優先になっていた。それを推奨ルート優先に変えると、到着予定時刻は5時51分になった。
廿日市ICから山陽自動車道に入った。ひたすら飛ばした。
空港近くのガソリンスタンドに着いたのは、5時10分頃だった。途中、大雨に降られることもなかった。
5時20分、返却用のパーキングに車を返し、キーを受付に返した。
搭乗手続きをし、カートにある本を出そうとしたが、見当たらなかったので、ひょっとしてどこかのホテルに忘れてきたかと思い、焦った。可能性があるのは、門司へ行くフェリーの中、松江のホテル、隠岐のホテルだが、東海道線の人身事故があった時、本はまとめてカートに入れっぱなしにし、その後出し入れした記憶がない。本の中には、図書館で借りたものもあったので、なくすと厄介だった。
探すのは、家に帰ってからにしようと思い直し、カートを手荷物預かりに託した。
ビル2階の和食屋でビールを飲み、ふぐ天ぷらうどんを食べ、アンコウのフライを魚にふぐヒレ酒を飲んだ。
あとは、特にやることはなかった。保安検査を済ませ、出発を待った。
8時過ぎ、飛行機は無事に出発し、9時半、羽田に着いた。
その後、しくじりが発生した。
モノレールに乗るため、エスカレーターを下っていると、下りきったあたりにいた女性が、荷物を落っことした。落とした荷物をまたぎ越し、その女性に「(自分の)カートを移動してください」と言い、落っこちた荷物をまとめてその女性に渡そうとした。紙袋に入った荷物だった。
ところが、紙袋はびりびりに破けており、荷物をまとめて持つことができなかった。で、バラバラになりそうだった中身を両手で抱えて持とうとした。紙袋にはカップ焼きそばと、細かいものが入っていた。細かいものは、破れた隙間からこぼれ落ちてきた。
細かいものを拾って、紙袋の残骸に入れようとした時、それらが、丸めたパンツであることに気づいた。
やばい、これ、彼女、恥ずかしいだろうと思い、荷物全部を紙袋の紙で覆うようにし、床をスライドさせ、彼女のところに押しやるようにした。エスカレーターの動線はそれで確保できた。彼女は「すいません、すいません」と謝っていたが、落ち着いて片付けができる場所に移動できたのを確認したので、「じゃ、あとはここでまとめて」と告げ、顔を見ないようにして離脱した。
モノレールに乗りながら、かわいそうだったなあと、その子のことを考えた。紙袋が破けて、中にしまっていたパンツが空港でぶちまけられるなんて、最悪だろう。見ないように、気づかないようにしたつもりだったが、いたのがオレじゃなくて、女子だったら良かったのに。
しかし、浜松町が近づくにつれて、違和感を覚えた。カートがあるのに、パンツを紙袋にしまって、手で持っているというのは、変じゃないか。しかも、なんでカップ焼きそばと一緒に入れていたんだろう。
女子くん、気の毒だけど、やっぱりそれ、雑だぞ。旅行する時は、雑にならないように気をつけないと色々しくじるから、今後気をつけた方がいいと思うよ。おじさんは、今回の旅でそれを学んだところだ。
浜松町から荻窪までJRで移動し、丸ノ内線で南阿佐ヶ谷まで戻り、11時帰宅。
さて、オレの今日のしくじりはどうなっているか? カートをあけ、本を探した。
あった。
旅行中、もしかしたら時間があるかと思って、編み作業の毛糸を袋に入れて持ってきていたのだが、その中に入っていた。
シャワーを浴び、コンビニでオレンジサワーとサラダパスタを買ってきて、それを食べ、飲み、2時過ぎ就寝。