隠岐の島観光

朝、外がやけに明るいなと思った。時計を見ると7時50分だった。

寝過ごしてしまった。

ホテルのレストランへ朝飯を食べに行く。7時からだったため、ご飯が茶碗半分しか残っていなかった。仕方ないので、焼きそば、クロワッサン、コッペパンをご飯の代わりにして、おかず類を食べた。

部屋に戻り、歯を磨き、洗面所から出るとき、開きっぱなしにしていたカートの縁を踏んづけてしまった。壊してしまったかと思ったが、カートは無事だった。

ここ数日、立て続けにしくじりを犯している。

水曜日は、東海道線の人身事故のため沼津で野宿。
木曜日は、お好み焼き屋『双月』がやっておらず、一心寺お参りは途中で大雨のため断念。
金曜日は、角島で泳げず、川遊びもできず、寿司も食えず。
そして今朝、朝飯に遅刻し、カートを踏んづけて壊しそうになった。

これは、気をつけねばならない、というサインだろう。気を抜くなよ、慎重にいけよ、ということだ。

9時にチェックアウトし、境港に向かった。途中、中海を渡ったところで車を止め、一眼レフで写真を撮った。

さらに進み、『ベタ踏み坂』で有名な江島大橋たもとのファミマで買い物をし、橋の写真を撮っていると、一眼レフの巻き上げレバーが引っかかり、フィルムの巻き取りができなかった。

中海で撮った写真を諦め、フィルムを最初まで巻き取り、装填し直して撮りなおしたが、巻きとれない症状は直らなかった。きたきた、きたよ、追加しくじりが。

こういう時は余計なことをせず、行くべき場所には早めに行った方がいいと思い、寄り道をせず境港に向かった。

10時半、境港に着いた。フェリー乗船券売り場で駐車場の場所を聞き、無料駐車場に車を移動した。

11時、予約していたチケットを発券し、そのまま大人しく待合室で出船を待った。待っている間、小林秀雄『Xへの手紙・私小説論』を読んだ。

12時、隠岐の島行きの高速フェリーに乗った。船はジェット機のエンジンみたいな音を出していた。

午後1時20分過ぎ、船は隠岐の島、島後の西郷に着いた。

港からすぐのところにあるレンタカーへ行き、島で乗る車を借りた。

隠岐の島で何をするか、明確な目的があるわけではなかったが、島に渡った時にいつも感じるワクワクした気分に、今回も満たされており、どこに行こうか予定を決ることがすでに楽しかった。

まず、島の北部にある中村海水浴場に向かった。ナビの案内では、到着まで30分ちょっとと出た。

島は、スケール感を移動時間と同期するのが難しい。石垣島だと、北端から南部の繁華街まで、けっこう時間がかかったが、隠岐の島は円形に近いため、端から端への直線距離がそれほど長くないのかもしれない。

途中、島の中心部の山間で車を止め、昼飯にファミマで買ったそぼろ弁当とエビカツサンドを食べた。

中村海水浴場には誰もいなかった。シュノーケルと水着を持ってきていたので、そのへんをチャプチャプ泳ぐくらいはできそうだったが、シャワーもないのに無理して泳ぐことないな、と思った。

中村から、島の北端にある白島岬展望台へ。10分ほどで着いた。

初めはオレ一人しかいなかったのだが、写真を撮って、車のところに戻ると、バスとワゴン車が二台、駐車場に入ってきて、にわかにそのあたりは大繁盛してしまった。逃げるように車に乗る。

中村、白島岬と、島を反時計回りに移動したので、そのまま島の西側を海沿いに南下していくことにした。

福浦海水浴場に向かった。泳ぐつもりはないのに海水浴場を選んでしまうのは、泳ぎうる場所にいることが心地よいからだ。

防波堤によって、ビーチと港湾が分かれていた。ビーチの水はとてもきれいだった。防波堤を歩き、ビーチと湾のやや深いところまで移動すると、クラゲがあちこちに浮かんでいるのが見えた。防水ケースに古いスマホを入れ、水中の動画撮影をしてみたが、ピントがうまく合わず何も撮れなかった。

海の家らしき建物があり、当然のようにもうしまっていた。隠岐の島の海開きは8月20日頃までらしかった。海に浮かぶクラゲを見ると、それもうなずける。

南へ下り、那久岬へ。そこの展望台も見晴らしがよく、隠岐の島の島前がよく見えた。

時刻は4時半になっていた。車を借りたのが1時半で、3時間ほどで島の4分の3を回っていた。

最後に、島の南東部に行こうと思い、ナビを夕陽の見える丘にセットした。空港近くにある公園だった。時間的に夕陽には早いと思ったが、名前からして見晴らしが良さそうだ。

公園は何もない原っぱで、確かに夕陽を眺めるには良さそうだった。牧場が隣接しており、牛が二頭いて草を食んでいた。指笛を吹くとこちらを見たが、すぐに興味を失い、草に集中した。

5時を過ぎていた。車は明日朝の8時に返却する予定だった。それは、今日の営業時間が夕方6時までだったからだ。しかし、日が沈んでからも車でうろちょろする気はなかった。

ガソリンスタンドで給油し、ドラッグストアで飲み物や明日朝食べるものを買い、6時ちょうどにホテルにチェックインした。部屋は本館から離れたところにあるゲストハウスだった。車はホテルの前に止めたままにし、カートを引きながら5分ほど歩いた。

ゲストハウスはリノベーションして間もないようで、内装は新築のようだった。部屋に入り荷物を解き、着替えを持って再びホテルへ行き、大浴場に入った。

風呂から上がると、外は薄暗くなっていた。

夕食を食べ、かつ、一杯やるために、フェリー到着所に近いあたりの飲み屋街をうろついた。

『DOZi』という店に入ってみた。鉄板焼き、串焼き、刺身のお店らしかった。

生ビール、刺身盛り合わせ、岩海苔おにぎりを頼んだ。刺身は、ばい貝、さざえ、鯵、サーモン、いか、はまちだった。一番旨いのはいかだった。ねっとりしていて濃厚な旨味があった。おにぎりについてきた貝の吸い物も大変美味だった。

その後、いそっ子という海藻焼酎を飲み、隠岐誉という日本酒を飲んだ。どじ焼きというメニューがあり、気になったので頼んでみた。ホルモンを自家製味噌ダレで炒めたものだった。

会計を済ませ、ゲストハウスに戻る。通りはとても暗かった。

部屋で、買っていた缶ビールを飲み直し、11時半就寝。