青春の二度乗り過ごし

4時起き。4時半に家を出る。高円寺へ。青春18きっぷで始発に乗り、新宿へ。

山手線で品川。東海道線で三島。グリーン車に乗った。500円も値上げしていた。車内で昨日買ったカツ丼弁当を朝飯に食べた。

三島で静岡行きに乗り換える。青春18トラベラーが結構いたのか、満席で座れなかった。

『その後の仁義なき桃尻娘』読む。瀧上、醒井、木川田の三角関係物語で、その人間関係の外で、浪人した主人公榊原玲奈がキーキー言っている。

静岡で浜松行きに乗り換える。今度は座れた。

浜松で特別快速大垣行きに乗り換える。9時44分だっだ。朝のその時刻だったので、青春とは関係なく豊橋名古屋方面に向かう人たちで車内は混んでおり、座れなかった。

11時12分名古屋着。駅構内のkioskで、わっぱ飯弁当と、天むすひとつを買った。

11時37分の快速みえに乗る。座れた。途中、伊勢鉄道区間分の料金を車掌に払う。

12時54分多気着。改札を出て、待合スペースでわっぱ飯と天むすを食べた。駅の周囲には小さいヤマザキYショップ以外何もなかった。

次に乗る列車は13時22分の多気駅始発列車だった。弁当を食べ終わり、ホームに戻り、3番線に止まっている列車に乗った。

そのホームは、来た方向、つまり、名古屋方面行きのホームだった。しかし止まっている列車の発車時刻が13時22分となっていたので、これだろうと思いこんだのだった。行き先は亀山だった。これも来た方向にある駅だったが、その時は「亀山は行く方向なのだろう」と思いこんでいた。

13時22分、列車は出発した。『帰って来た桃尻娘』を集中して読んでいたため、向かっている方向が逆であることに気がつかなかった。しばらくして車内アナウンスにより松阪駅に到着するのがわかった時、「ん?」と思った。さっき来た駅じゃんか。

その場でGoogleマップを見ると、地図上に点で映ったオレの位置は、確実に名古屋方面へと向かっていた。

乗る列車を間違えたことがわかり、松阪駅で降りた。先ほど多気駅で乗るべきだった列車は新宮行きで、亀山行きはたまたま出発時刻が一緒だったこともわかった。予定通り新宮行きに乗っていれば、目的地の相賀駅には15時20分に到着するはずだったが、ダメになってしまった。

路線情報を検索し、15時8分発の鳥羽行きに乗り、多気駅で新宮行きに乗り換えれば、17時過ぎに相賀に着くことが分かった。1時間以上時間があまったので、松阪で時間をつぶそうと思った。

しかし、地下通路で近鉄駅前に行っても、店などはどこにもなかった。再びJR側に戻り、商店街を抜けた先の交差点を左折したところにあるファミリーマートに入ってみたが、イートインコーナーがなかったので、何も買わずに店を出た。

再び駅に戻ると、14時20分鳥羽行きの出発時刻が近づいていた。それに乗って多気駅に戻り、冷房の効いたホーム上の待合室で、15時23分に松阪を出る列車を待つことにした。

14時34分に多気駅へ戻る。15時23分発の新宮行きまで50分ほど時間があった。

改札の外に出て、駅前のヤマザキに入ってみた。炭酸飲料が飲みたかったのだがコーラしかなかった。ビールや缶サワーの類は沢山あったので、キリンラガービールのロング缶を買った。

待合室のベンチでビールを飲んだ。

飲み終わってからホームに戻り、待合室で本を読んだ。『その後の仁義なき桃尻娘』を読み終えた。瀧上、醒井、木川田、それぞれの視点による一人称小説が三編ある。瀧上はやたらに「…」が多く、最後の方などは、見開き1ページと次の1ページ半をすべて「…」で埋め、そのまま終わってしまった。 ……………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………

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こんな感じである。ノートか。

醒井は、庶民感覚との乖離に無自覚なところがギャグになっており、海の家でバイトしていた木川田にシェリー酒を頼むところに笑った。また、家でよく麻雀をしているため、滝上や他の男連中と麻雀をする場面は、お嬢様言葉のまま麻雀用語を連発するところが、ギャグになっていた。

木川田は気の毒だった。瀧上先輩が醒井とデキてしまい、醒井は妊娠したのに先輩は冷たい態度をとり、病院につきそうこともしない。木川田は醒井がかわいそうだと思い、先輩を連れてこようとするのだが、目的を果たせず、自分が醒井に付き添ってやろうとする。先輩が、醒井に冷たくするような冷たい人なんかじゃイヤだ、という気持ちが切ない。

続けて『帰って来た桃尻娘』読み始める。

待合室には、次の列車に乗る乗客が何人かいた。しばらくすると乗客は出ていったが、目の前の1番線には電車がきていなかった。少しして、背後の2番線を一つまたいだ3番線から、松阪方面への列車が出ていく音が聞こえた。休憩室にいた客はギリギリまでここで涼んで、向こうの列車が来る少し前のタイミングで移動したのだろうと思った。

ところが、時計の時刻が15時24分をさしても、15時23分発の新宮行きが、目の前の1番線に入ってくる気配がなかった。おかしいと思い、スマホで路線情報を検索すると、検索結果には次の16時38分発新宮行きが出てきた。15時23分発の列車は、もう出ていったことになっていた。

改札へ行き、駅員に尋ねた。すると、オレが1番線を向いて座っている間に、当駅始発の新宮行きは2番線から発車してしまっていた。

次の16時38分新宮行きまで1時間以上あった。駅で待っていてもアホらしいと思い、周辺をぶらついてみることにした。

線路沿いを松阪方面に歩くと、川の土手があった。櫛田川という川だった。土手沿いに田んぼが続いていた。土手に延びたあぜ道の一つが、土手に上がる小さい階段につながっていた。

あぜ道を歩き階段を上った。川は松阪方面を向いて左から右へ流れていた。右奥の下流側に堰があるようで、水が堰き止められ、水量はかなり多くなっていた。

今日泊まる予定の宿に、チェックイン時刻が遅れることを連絡した。6時到着予定だったのだが、30分ほど遅れそうだった。

駅に戻り、再びホームの待合室で休んだ。そして、先ほど15時23分多気駅始発の列車を乗り過ごした顛末を整理した。

待合室のベンチから見て目の前が1番線だった。その線路の左向こうから列車が入ってきて、右向こうに去って行くのだと思っていた。しかし、オレが左向こうを気にしている間に、新宮行きは後ろの2番線の右向こうから入ってきて、右向こうに去って行ったのだ。

もちろん、入ってくる音は聞こえた。しかしオレは、その音を3番線の松阪方面行きだと思いこんでいたので、振り向かなかった。実際に3番線では、1分前の15時22分に松阪方面行きの列車が左向こうへ出発していた。そのため「今、オレの後ろの線路を列車が松阪方向に走っていったぞ。さっき休憩室にいた人たちはそれに乗って行ったのだな」と、思っていた。

おそらくそれとほとんど同じタイミングで、15時23分発の列車は後ろの2番線から右後ろに向かって去って行ったのだ。なにしろ、松阪行き列車が去って行く音を聞いたばかりだったし、意識は目の前の左向こうに集中していたので、それが新宮行きであるとはまったく気づかなかったのだ。

要するにオレは、乗るべき列車に対して、「志村!うしろ!」をやらかしてしまったのだった。

16時38分の列車は、多気駅発ではなく、松阪方面からやってくる列車だった。つまり、目の前の1番線の左向こうからやってくる列車だった。

ベンチシートに座り、『帰って来た桃尻娘』を読んだ。榊原玲奈が主役の座を取り戻し、一浪して早稲田に合格したところから始まり、この一年や、大学生になってから起きたことを、一人称で語っていく。『その後の仁義なき桃尻娘』にあった同窓会のエピソードや、滝上とつき合うようになった醒井が変わったことなどを、怒り語っていく。怒っている玲奈は、なぜかかわいく、読んでいて楽しい。

16時38分の列車が、目の前の線路の左向こうからやってきた。間違いなかった。「ガンダム大地に立つ!」みたいな足取りで乗車した。

読書の続きをしながら、時々車窓の景色を眺めた。三重のそのあたりの風景は緑の色合いが明るい。

18時8分、相賀着。10分ほど歩いて、本日の宿に到着した。

風呂に入り、浴衣に着替え、夕食を食べた。

かつおのタタキ、生牡蠣。まぐろとアオリイカとヤイトカツオの刺身、海鮮グラタン、鮎の塩焼き、煮物、焼き牡蠣、牡蠣フライ、デザートのアイスクリーム。基本的にビールで勝負し、ご飯は終盤の牡蠣フライ時に一杯だけ食べた。最初から行っていたら4杯くらいは行けたと思うが、そうしたら飲めない。

牡蠣はすべて岩牡蠣だった。夏にビールを飲みながら生牡蠣を食べるのは最高の気分だった。

食事を堪能すると、もうやることはなくなった。布団に寝っ転がり、スマホを見てダラダラ過ごした。

12時過ぎ就寝。