島好きを確認するために佐渡へ

バスが越後川口SAで止まった。休憩のため、運転手さんがカーテンを開けた。外は明るかった。

時計を見ると4時半前だった。三時間以上は寝られたようだ。外に出てペットボトルの水を買い、再び寝直した。

次からは休憩ではなく降車のために停車した。長岡で隣のガリ痩せヤングマンほか数名が降りた。その次でもう少し降りた。その次は誰も降りなかった。

その次が終点の新潟駅南口だった。時刻は7時を少し過ぎていた。

駅の北側に出て、バスターミナルカレーで有名な『万代そば』に向かう。

7時20分頃にバスターミナルに着いた。『万代そば』はまだやっていなかった。建物内をぶらぶらして、二階のベンチで本を読み時間をつぶした。読んだ本は、古市憲寿『古市くん、社会学を学び直しなさい!!』

8時ちょうどに『万代そば』へ。十人以上並んでいた。カレーライスの普通盛りにコロッケトッピングを選んだ。

味は、SB赤缶カレーそのものの味だった。トマトピューレなどトマト系の素材を加えてないと思われ、ソースに酸味はなかった。ボリュームは見た目以上にかなりあり、食べ終わるとお腹がかなり膨れた。

そこはバスターミナルで、目の前が佐渡フェリー行きのバス停だった。食器を片付けて少しするとバスが入ってきたので、そのまま乗った。歩いて港に行くつもりだったが、けっこう距離があった。

フェリーの発車時刻まで小一時間あったので、待合室で本を読んだ。

9時に改札の列に並んだ。十分後に乗船手続きが始まった。船に乗り、最貧民席のエリアを確かめ、フリースペースに陣取った。

出航してから、展望デッキに出て写真を撮り、最貧民席に戻って読書の続きをした。そのうち、眠くなってきたので、リュックを枕にして横になった。

一時間くらい寝た。睡眠の良い足しになった。

11時半を過ぎた頃に、荷物をまとめ、出口に移動した。

11時50分過ぎ、両津着。港の近くにある『天國』という和食の店に向かった。

12時をほんの少し過ぎた時間に店に着いた。満席だった。「いっぱいよ」と店のおばちゃんが言った。待とうか迷ったが、実はこの時点で、腹はまったく空いていなかった。8時に食べたカレーが多すぎたのだ。

それならば午後は腹を空かせて、夕食を人気のある店で早めに食べた方がいいと判断した。

港のロビーでセブンティーンアイスを食べ、履き物をリカバリーサンダルからシューズに履き替えた。

12時40分にレンタカーへ。傷チェックは省略された。「細かい傷とかはいちいち見ないようにしました」と言われ、笑ってしまった。

まず、ドンデン線という道をアオネバ渓谷に向かう。納豆に刻みオクラとモロヘイヤでも足したような名前の渓谷だ。

渓谷は、アオネバ登山道の入口になっていた。そこだけが渓谷なのではなく、渓谷に沿って登山道を登っていくというわけだ。

登山道を少しだけ登ってみた。プチ登山道ならなんとかなると思ったのだが、途中まで登ってから、さらに先があるのが見え、ガチ登山道であると判断し、引き返した。首からフィルム一眼レフ下げた半袖短パン姿で登るところじゃない。

入口付近で、水が湧いてできている流れに、マリンシューズを履いた足を浸してみると、冷たくて気持ち良かった。

車に戻り、ドンデン線をさらに登り、ドンデン山の山頂へ。山頂というより高原であり、標高は900メートルほどらしい。車を駐車場に止めると、虻がやたらに車のガラスにぶつかってきた。

ドンデン線を西側へ下った。上りも下りもほぼ一車線だったが、対向車とのすれ違いはほとんどなかった。

佐渡の西側を周回道路沿いに南下し、今度は大佐渡スカイラインを上った。途中、佐渡金山の遺跡や資料館があった。見ていこうか少し迷ったが、こういうベタ系の観光地を訪れるために佐渡へ来たわけではなかったので、通り過ぎた。

じゃあ、何のために来たのかというと、自分の島好きという資質を確認するために来たと言っていい。ドンデン線を登り始め、アオネバ渓谷の前で降りて、渓谷の流れを見た時、そう思った。オレ、島、好きだなと。

スカイラインをどんどん上がると、途中に乙和池への分かれ道があった。道は舗装されていなかったが、草の生え方から明らかに車が通っていることがわかったので、そのまま進んだ。

スカイラインから目算で300メートルほど入ったあたりに、小さいながらも駐車スペースがあった。そこに車を止めた。止めたとたん、虻がフロントガラスに体当たりしてきた。

虻を牽制しながら降りて、小道を歩くと、乙和池があった。緑に囲まれ、澄んだ水は底の土の色が透けて見えた。

スカイラインに戻り、また少し上ると、大佐渡スカイライン展望台があった。景色が一望できるように設計されたようだったが、展望台の真ん前に生えた木が眺望を遮っていた。設計時は生えていなかったのかもしれない。

スカイラインを佐渡市側に降り、『廻転寿司 佐渡弁慶』に向かった。店には5時ちょうどに着いた。夕食にはほんのちょっと早い時間なので、きっと空いているだろうと思ったのだが、店は混んでいた。

それでも、その店にしては空いている方だったようで、食べ終えたお客さんが次から次へと帰るタイミングだったため、10分ほど待つだけでカウンターに座ることができた。

まぐろ赤身、あじ、えび、しめ鯖、えんがわ、なめろう軍艦巻、かわはぎ、ばい貝、アラ汁、真いか、あなご、玉子と食べた。どれも当然のように美味しかったが、えんがわのシコシコとした食感と甘みはかなり好みだった。カワハギが玉子と同じ安い皿だったのも意外だった。肝が乗っていたらまた違うのだろうが。

店を出て、道をはさんだ向かいの『キング』というスーパーでビールを2缶買った。鮮魚コーナーを覗くと、しいら、さば、さざえ、赤がれい、あかいかなどの地元の魚が売られていた。

6時半に宿へ。合宿センターみたいな宿だった。フロントのおっちゃんは、部屋のキーを渡すだけでなく、わざわざ部屋まで案内してくれて、部屋の中にまで入ってきて、Wi-Fiの説明などした挙げ句、部屋の鍵を持ってフロントに行ってしまった。浴場へ行こうとした時に気がついた。フロントに行き、「鍵、もらってないんですけど」と言うと、おっちゃんは、事務机に部屋の鍵がおかれているのを見て、「あっ!」と驚いて、ペコペコしながら鍵を渡してきた。コントみたいだった。

温泉に入り、部屋でビールを飲んだ。明日のルートや、食事をどこでするかを少し考え、持ってきたウイスキーをちびちび飲み、12時過ぎ就寝。