スクーターで島を回る

朝6時半起き。今日は島の南側を車で回り、昼飯を食べてから車を返し、午後はスクーターを借りて島の外周を回る予定だった。島の南側には行ってみたい海水浴場があるので、サーフトランクスをはいてしまおうと思い、荷物を調べた。が、なかった。

昨日どこかで落としたのだろうか? しかし、水着はすぐに出すものではないので、リュックの底の方に入れたはずだ。出したとしたら、昼飯を食べ損なってから港のロビーに戻り、マリンシューズに履き替えた時だ。マリンシューズはマスクやシュノーケルと一緒の袋に入れていたのだが、その袋を出す時に、出しやすくするため、水着を出して脇に置いたのかもしれない。で、その後、しまい忘れてしまったのかもしれない。

だが、覚えていない。ロビーのベンチに座っていたのはオレ一人だったし、水着を出して隣の椅子に置いたとしても、かなり目立つ。それに、リュックを背負ってから、自販機で水を買うためにベンチの周りをうろうろしたし、そんな時に水着がぽつんと置いてあったらかなり目立つはずだ。

家に忘れたのか? いや、でも、入れたと思うんだけどなあ。

ともあれ、ない以上仕方ない。島のどこかでサーフトランクスが売られていたら買うことにした。

7時15分頃に宿をチェックアウトし、7時30分に『パン屋カフェ クレアール』へ。7時半からやっているパン屋だった。そこで、カットピザとカツサンドを買い、車の中で食べた。

道をはさんだ向かいに、ファッションセンターしまむらがあったが、まだ開店していなかった。

ナビを島の南に設定した。佐渡島を二つの白身フライが弁当箱に斜めに置かれた形だすると、下の白身フライの真ん中を真っ二つに切るようなルートで海側に出た。

目的地は莚場海水浴場にした。空いており、水ではあるがシャワーとトイレがあるらしい。

目的地に着いたが、駐車スペースを探して少し走りすぎてしまった。戻ってきて、トンネルの手前に止められそうなところがあったのでそこに止めた。

時刻は9時だった。早いためだろうが、海水浴場には誰一人いなかった。シャワーとトイレだけでなく、小さい四阿もあった。もし水着を履いていたら、すぐにでもドボンしたところだったが、そこはこらえた。

次は、ナビを設定せず、海沿いの道を時計回りに回ることにした。

海沿いには、建物の色合いが漆色に統一されている集落があった。輪島を思い出した。しかし、輪島のように意図的にそうしているというより、使っている木材が同じなので、偶然そうなっているようにも見えた。

島の最南端である小木を過ぎ、最西端の沢崎鼻灯台へ。結構な断崖だったが、海ではシュノーケリングをしている人がいた。その近くにボートが浮いており、岩場で釣りをする人もいた。たぶん、二人でボートに乗ってやってきて、一人は釣り、一人はシュノーケリングと、遊び分けているのだろう。

ここでシュノーケリングしたら楽しそうだろうと思ったが、崖から下までは下りられなかった。別のところからか階段で下に降りられそうだったが、シュノーケリングをしている人はさすがにいなかった。

時刻は10時になるところだった。昼飯を食べるため、『鮨 長三郎』にナビをセットした。寿司屋なのにラーメンが名物らしい。11時開店なので、小木からちょうど1時間で着けそうだった。

10時55分に店の駐車場に着いた。開店前に並ぶお客さんが五、六人いた。

カウンターに座り、ラーメンと、ぶりカツ三切れを頼んだ。ラーメンと鮨のセット、もしくはぶりカツ定食が、ここの名物だったが、両方を堪能するために単品で二つ頼んだ。鮨は昨日食べたし。

ラーメンは、あっさりした淡い色のスープだった、旨味はしっかりとあり、確かに美味しかった。ぶりカツはこってりとしており、ご飯と一緒に食べるのが一番だと思った。

開店後、お客さんが続々と入店する気配があったので、食べ終えてからすぐに会計をして店を出た。

ファッションセーターしまむらへ。サーフトランクスを探す。種類はすくなく、インナー付きタイプのものは、紺と黒しか選べなかったので、紺のを買った。

ガソリンスタンドで給油し、12時半過ぎにレンタカーへ。車内のゴミは店の人が引き取ってくれた。

フェリー乗り場のトイレで水着に着替え、1時半まで本を読んで時間をつぶした。

1時40分、乗り場から歩いてすぐのところにあるアウトドアショップへ行き、スクーターレンタルの手続きをした。「バイク、普段乗ってます?」と聞かれたので、「昔乗ってましたけど、スクーターはほとんど乗ったことがないです」と答えた。

セルを回す時に左ブレーキをかける動作で、記憶が一気に過去へ飛び、かつて慣れ親しんだ動作を思い出した。佐渡一周線を反時計回りに北へ向かう。天気は曇ってきていたが、雨が降りそうなほどではなかった。

バイクに乗るのは18年ぶりだった。たしか、後輩の中山くんに125ccのスクーターを借りて、芝居の取材と称し、埼玉の毛呂方面を走ったのが最後だ。2006年の9月。中型二輪免許を取ってからこの日までの年月より、この日から現在までの年月の方がはるかに長くなってしまった。

スクーターは、カーナビがないので、現在地を知るためには止まってスマホを見ないといけなかった。しかし、それでも18年前に比べるとめちゃくちゃ便利だ。18年前はリュックに地図を入れて、道路標識や案内板から現在地を知るしかなかったので、土地勘のない町で迷うと大変だった。

カーナビは便利だが、要するに、GPSが便利なのだと思う。18年前でも、もしポケベルみたいなスタイルで現在地の座標をxy軸の数値で表示する機器があり、地図の縦横両端に軸の数値が表示されていたとしたら、やはり、ものすごく便利だったと思う。

店の人は、島を一周するくらいなら、ガソリンは入れなくても大丈夫だと言った。一度5リットル満タンにすると400キロくらい走るらしい。250ccのバイクだったら、14リットルタンク満タンで200キロか相場だったのに。

長いトンネルに入る時、気温が一気に低くなった。車では味わえない感覚だった。

風を感じ、島を感じ、スクーターを乗ることそのものをアトラクションとして楽しみ、2時40分頃に北端の二ツ亀海水浴場に着いた。

結構長い階段を降りると、二ツ亀という岩があり、こちら側の岸からその岩に浜の砂地が道のようにつながっていた。こちらの浜は、つながっている砂地で、左右二つに分かれていた。

一眼レフで写真を撮り、心の中で、素意や! と一世風靡セピアふうのかけ声を上げてTシャツを脱ぎ、左側の浜から海に入った。

海の透明度は抜群だったが、水深があまりないせいか、温度はかなりぬるくなっていた。そのせいか、魚の姿はあまり見られなかった。右側の浜の方が水深は浅く、魚も少なかった。

20分ほど泳ぎ、シャワーを浴びて駐車場に戻った。スクーターのそばに立っていると、虻が周りを飛び回り、一匹が左のふくらはぎに止まったので、あわてて払った。

佐渡一周線に沿って、島の北端から西部を回り南下する。走っていて気になるところがあったら止まることにした。

大ザレ川にかかる海府大橋で止まった。バンジージャンプにもってこいの橋だった。

地図には出ていないが、ひまわり畑で止まった。日が沈む方向にひまわりが背を向けているのが妙におかしかった。

その後は、ただひたすら、今夜止まる宿の周辺に向かって走った。愛川で、海沿いの道を走るか、ショートカットする愛川佐和田線を走るか、少し迷ったが、スクーターで走ることそのものが佐渡を実感することならば、近道はやめようと思い、そのまま佐渡一周線沿いを走った。

佐渡一周線が愛川佐和田線と合流したあたりで、時刻は5時50分を過ぎていた。ここから宿までは10分ほどの距離だった。で、チェックイン前に夕食をとることにし、『丸美亭』という洋食店に向かった。

6時ちょうどに店に着いたが、店はやっているのかどうかわからなかった。猫がおり、店の裏口から中に向かってひと鳴きした。すると、中で裏口を開ける気配がして、猫はそのまま中に入って行った。

そんな猫活動を観察していると、いつの間にか店の入口に『営業中』の札がかかっていたので、中に入った。

ポーク鉄板焼きのライスセットを頼んだ。豚肉と玉ねぎを鉄板焼きにしたものだった。玉ねぎが、生ではないのにシャキシャキしていて、肉と一緒に食べるととても美味しかった。

店を出て、ローソンでビールを買い、6時半に宿にチェックインした。意識高そうな宿だった。

洗濯機がやったので、フロントで洗剤を買い、洗濯をした。室内の浴室でシャワーを浴び、洗濯物を乾燥機にかけ、ビールを飲んだ。

部屋にはテレビがあったが、地上波は映らず、ネット配信映像のみ見られるようだった。Youtube 、Amazon Prime、Hulu が見られるようだった。『地面師たち』が見たかったが、Netflix は見られないようだった。

Youtube で、nanaoさんの釣り動画を見た。旧江戸川の水質が良くないことになっているという動画だった。猛暑ゆえの汚染だろうか?

11時まで、部屋のテレビではなく手持ちスマホでYoutube を見たりなどして、就寝。