稽古最終日。そして仕込み前日である。
事前準備を色々する。
制作受付用具とタタキ用の工具を用意し、小道具用のお札を印刷し、音響さんに渡す曲をCDに焼く。
そして、自分の衣装を買いに行く。
夕方、上高田で最後の稽古。
受付のようちゃん、音響の金高さん見に来る。
最後の通しをやる。
上演時間は2時間きっかりとなってしまった。
構成は、はじめの40分で主人公の抱えている問題を出し、次の40分で世界観を説明し、最後の40分で世界観を2回くつがえすというもの。
だから、全体の上演時間を10分短縮するためには、3つに分かれた構成をそれぞれおよそ3分ずつカットしなければならない。
ところが厄介なことに、半ばと終わりの40分はカットの余地が少ない。
だからといってはじめの40分を10分カットすると、30分-40分-40分というふうになってしまい、半ば以降が長くなってしまう。
つまり、はじめの3分の1を書く段階で、全体の時間数が大体決まるということになる。
今回はその段階で大幅に予定時間をオーバーしてしまった。
構成の仕方は他にもある。
起承転結とか。
しかし構成法はおいそれと慣れ親しんだものから変えるべきではないと思う。
主題が伝わらないと元も子もないからだ。
ただでさえ伝わりにくいというのに。
通し終了後、明日の予定を片桐が皆に伝え、最後の稽古は解散となる。
久保田君と俺は二人で相模大野まで行き、舞台装置の積み込み作業をする予定だった。
「行く前に何か食べていこうか。何がいい?」
「ラーメンがいいです」
久保田君のリクエストにこたえ、中野にある味噌ラーメンの店に入った。
そこはスープの辛さが4段階に分かれていた。
俺は通常のスープを頼んだ。
その次に辛いのは<ピリ辛>
さらにその次は<火の鳥>だった。
しかし久保田君は最も辛い<爆発>をためらいなく2玉分注文した。
「スープが、すすれないです」
辛味成分が肺に入り、咳き込んでしまいそうになるからだった。
11時半に町田で2tロングのトラックを借り、相模大野の倉庫へ向かう。
倉庫では松本さんが腰にベルトを巻き、作業をしていた。
2日前ほどに痛めてしまったのだという。
松本さんの指示に従い、残りの塗り作業や掃除などをする。
外は集中豪雨だった。
3時に作業が終了し、トラックで小金井へ。
ラジオをつけるとオリンピックの野球で日本がキューバに勝っていた。
4時少し前に小金井到着。
シャワーを浴び、仮眠を40分だけとる。