12時過ぎ、フロアに客が集まってきた。 “Rock Me Amadeus” のイントロがかかり、始まるぞ、という期待感による歓声が上がった。
しばらく、’80s の怒濤をひたすら味わった。
”Let’s Dance” “Behind The Mask” “The Look Of Love” “I Can’t Go For That” “Billie Jean” “Take On Me” “Into The Groove” “Cue” “Venus” “Heart Of Glass” “Relax” “Funkytown” “99 Red Balloons”
順不同。ネーナの声はかわいい。Let’s Dance のイントロは強い。
去年は3時間フロアにいたあと、ビール休憩をして、フロアに戻って残り2時間頑張る、という時間配分だった。今回は、2時間くらいまでは怒濤だった。そこから先、いつビア休憩をとろうかと考え、”Don’t You Want Me” がかかったら、その後にしようと決めた。なぜか、必ずいつかかかると思いこんでいた。
しかし3時半になってもかからなかった。その頃になるとさすがに膝はガクガクになり、腿の筋肉も張ってきたので、休憩することにした。
バドワイザーを飲みながらスマホを見ていると、文春による松本人志のスクープ記事が目に入った。後輩芸人がセッティングしたコンパで、レイプまがいのことをしたという内容だった。
また、井上尚弥が別階級での4大タイトル王座になったという記事も読んだ。松ちゃんはそれ関係のツイートをしているようだった。しかし、そんな松ちゃんを批判する書き込みが、SNSには多かった。こんなに敵がいるのか、と思った。
そうやってスマホを見ていると、フロアから “Don’t You Want Me” のイントロが聞こえてきた。大変大変! と、あわててビールを飲み干し、フロアに戻った。今年はこの曲のMVを Youtube でよく見て、今さらながらいい曲だなあとしみじみ思い、以降ヘビーローテーションしていた。地獄温泉で聞けて嬉しかった。
しかし、その後は、3時間半ぶっつづけで動いたツケが体に響いてきた。もはや、元気にリズムと同化することはできず、手すりにもたれたまま頭を上下させるのが精一杯だった。5時過ぎまでそうやって楽しんでから、会場を出た。
6時過ぎ帰宅。
朝飯にどん兵衛を食べ、シャワーを浴び、9時まで寝た。
9時半から作業。しかし、昨日どさん子ツールを仕上げたので、喫緊の仕事はなかった。そのため、作業進捗表に記入したりなど、滞っていた整理整頓作業をした。
昼、自転車で祖師ヶ谷大勝軒へ行き、ワンタン麺と半チャーハン食べる。
その後、毛糸探しをする。祖師ヶ谷ダイソーと明大前ダイソーに寄り、ヌーディーベージュを探すが、なかった。
午後、どさん子クライアントから、新しい仕事依頼が来ていた。さすがに期日は来月だった。そらそうよ。
依頼内容を確認し、質問メールを送ったところで、本年は仕事納め。
6時半、中野へ。髪を切る。
担当のコイワンボーイと雑談する。昔のヤンキー文化と、『マブい』という言葉についてなど。
「マブいってのは、1970年代に用いられた価値基準の概念だからね。昭和でひとくくりしてはいけないんだ。80年代になると使われなくなったよ」
「へー(チョキチョキ…)」
「若い頃の矢沢永吉が喋っているところを想像してみなよ。『矢沢にとってサクセスはさあ、マブい女抱いてウハウハいってりゃいいってわけじゃないのよ』みたいな。そういう使い方をされていたよ」
「なるほど(チョキチョキ…)」
「マブい女をひと言でいうと、山口百恵かな」
「へー(チョキチョキ…)」
「聖子ちゃんは、決して、マブい女ではないんだ。明菜は、マブいかな」
「要するにヤンキーですか?(チョキ?)」
「マブい女イコールヤンキーではないけど、ヤンキー価値基準ではあるかもね」
「今なら誰がマブいですかね?(チョキチョキ…)」
「小池栄子じゃない?」
「なるほどー(チョキチョキ)」
「あれ、激マブだよ」
「激マブっすか…(チョキチョキ)」
8時半帰宅。
文春の松本人志について考えた。
吉本興業が事実関係を否定し、法的措置を検討しているという報道がされてから、ネットニュースはピタリとやんだが、SNSでは松ちゃん批判がたけなわである。文春報道がきっかけとなり、過去に松ちゃんが発言してきたミソジニー的発言がやり玉にあがり、そんな発言をする人間なのだから報道は真実だ、という、子供だましみたいな理屈で書かれた言葉が飛び交っている。
松ちゃんは間違いなくコンパ好きだろう。みんなでパーッと飲みたいと思ったときに、若い女の子が沢山おり、キャッキャ言われる飲み会がしたいと思う人だろう。『4時ですよーだ』の頃からそうたろう。
ここで、『女の子を手配する』という言葉が出てくる。穏やかじゃない言葉だ。内容は、松ちゃんの飲み会に来て、一緒にわいわい飲んでくれる女の子を探す、という行為であり、よそで話したらいけないような話題も出てくるだろうし、そういうのを録音したり、動画を隠し撮りしたら、あとでどんなトラブルになるかわからないから、事前にスマホを回収するというのは、まあ、それはそうするだろうな、と思う。しかし、ここで『手配する』という言葉を使用することで、スマホ回収は別の意味を帯びるし、手配という言葉は、売春のニュアンスを暗に含ませることが可能で、かつ、嘘は書いていないと主張することもできる。
最大の問題は、女の子と二人きりになった松ちゃんが、その子に「オレの子供を産んで欲しい」というような言葉を吐き、その場で肉体関係を迫り、断られるとオーラルセックスを要求し、強引に行為を行った、という点である。
これは、あったことをどのように証明すればいいのか?
裁判になったとしても、言った言わない、やったやらないの言い合いになるだけで、決着はつかないんじゃないか。その場合、文春は世間に対して、発言をよりどぎついモノにすることで、グレーゾーンにある案件が世間の印象としては黒である、という操作をするだろう。しかし、そんなのってありか? と思う。
まず、被害者は警察に訴えるべきだ。事実であるならば間違いなく準強姦罪なのだから、文春に告げるより、それを一番先にしないといけない。もちろん、すでにしているに決まっているし、だからこそ文春は記事にしたわけだろうが。
文春としては、ジャニー喜多川セクハラの報道を最初にしたのはうちだ、ということを、プライドのごとく思っているのかもしれないが、これは逆だ。一番最初に報道した、その言葉の選び方や報道の仕方がゲスだったから、信じる人が、狼か来たぞ、と言われた村人のような反応をしてしまったのだ。
つまり、ジャニー喜多川のセクハラを受けた人々を一番苦しめたのは、文春だったのだ。
ジャニー喜多川のセクハラ問題が、今年本気で取り上げられたのは、BBCが報道したからだ。「BBCならマジだ」と社会が思ったからだ。
今回の松ちゃん報道も、そういう意味で、文春にはちゃんとしてもらいたい。語句に『手配』とか使うスキルこそ、つまり、狼が来たぞ文体だ。2015年のコンパで、本当は何が起きていたか、それについてはわからない。誰がわかりえる? なのに、コメンテーターは『発言すべきだ』という意見もおかしい。