昼の12時過ぎに学芸大学サークル棟へ行く。
劇団漠の一年生公演があるのでチラシを挟み込ませてもらった。
開演まで間があったので2年生の渡辺さんと話す。
いつの間にか隣に3年生の正丸君が座っていた。
「今度、『朝日のような夕日をつれて』をやるんですよ」
「漠で?」
「別んとこです」
「別んとこ」とは今度新しく旗揚げする集団だそうな。
演目を巡って色々もめているらしい。
20分ほど話を聞くが、煎じ詰めれば制作的視点と演出的視点のぶつかり合いということだと思った。
やりたいからやるだけではいつか壁にぶち当たると思う。
かといってやるメリットだけを追求して芝居をしていくのも不毛の荒野をコンパスなしで進むようで物悲しい。
無難な答えだが両方のバランスが大事なのだろう。
漠の一年生公演は鴻上尚史の「トランス」
8年前にビデオで見たきりだったので初見に等しい。
和気藹々とするシーンでやたらに「乾杯」しあう登場人物達が恥ずかしく思えるのは時代の流れというべきだろう。
きっとバドワイザーとか飲んじゃうんだ。
そこを発泡酒にするのが現代であり、「お疲れ」と言い合うのが90年代だったのではないだろうか。
物語後半にて、精神分析における医者と患者の役割がコロコロ入れ替わり、本当に病んでいるのが誰なのかわからなくなってくる部分に、鴻上さんのモチーフが純粋な形で現れていると思う。
鴻上さんは広い意味での人間の傷について書き続けてきた人ではないだろうか。
問題はバランスだろう。
世間は鴻上さんが書くほどの絶望にあふれているのか。
それともそうじゃないのか。
夜、昨夜ビデオ録画した「木更津キャッツアイ」観る。
主演の岡田君の演技が自然で感じがいい。
おそらく本人の「素」がシナリオとマッチしているのだろう。
酒井若菜もかわいい。
小ネタも健在で、銀蠅一家の嶋大輔に「おまえサラサーファーガールおいらテカテカロックンローラー」を歌わせていて大笑いした。
嶋大輔の経営する店の名前が「男の勲章」というのもマニアックネタである。
「男の勲章」とは嶋大輔のセカンドシングルのタイトルであり、日本テレビのドラマ「天まであがれ」の主題歌だった。
「天まであがれ」は嶋大輔も出演しており、前田吟と中尾ミエの店でバイトするツッパリの兄ちゃんを演じていた。
ドラマのテンポが速いので身を乗り出して集中して観ないと会話部分を聞き逃してしまう。
これはテレビに対して主体的になれるということだろう。
まことに楽しい。