日本海で泳ぐ

たっぷり眠って、朝の8時前に目が覚めた。
運転疲れもあったが、11時前に床に就いた途端、あっという間に眠りの世界に落ち、夢一つ見ることなくぐっすり眠ったようだ。
東京と比べて空気が乾いており、久しぶりに寝苦しさを感じることがなかった。

宿代は払ってあったので、宿の人にひと声かけて車に乗る。
北陸自動車道に入り、笹川流れに向かう。
寺泊から、けっこう北に移動することになる。

途中、PAで地図を調べ、パンを食べて朝食。
あとはひたすら北へ。

荒川胎内で高速を降りる。
胎内という市があることに驚く。
里帰りする人は、
「ちょっと胎内に帰るわ」
などと言うのだろうか。

日本海沿いの道を、羽越本線と併走し、笹川流れの入口である鳥越山海水浴場に着く。
駐車場に車を止め、浜に下りる。
何もない海水浴場だった。
海の向こうに小さく見えるのは、粟島だった。
椎名誠『わしらは怪しい探険隊』に出てくる島だ。
民宿後藤はまだあるのだろうか。

簡易テントを建て、シュノーケルをつけ、さっそく海に入ってみた。
岸辺は、陽光で育ちに育った海草が繁茂しており、ちょっと気持ち悪かったが、少し離れて沖に行くと、綺麗な岩場の海底が広がっていた。
太平洋側と比べて、魚の種類が違うような気がした。
色鮮やかな魚は少ないが、美味そうな魚が多い。

ひと泳ぎしてから、「道の駅笹川流れ」へ。
昼飯に、夕日タンメンを食べる。
メニューを見ると、名物の岩ガキがあったので、それも頼んでみる。
食べなれたマガキと比べて、身が引き締まっており、味が凝縮されているようだった。
たくさん食べたかったが、そんなに安いものではない。
味を記憶するにとどめた。

海水浴場に戻り、再び泳ぐ。
沖の岩場付近が綺麗だった。
成長途中の小さい魚たちが、岩場に守られながら暮らしている。
魚の幼稚園といったところか。
たまに、どんくさいフグに遭遇した。
両手で包み込むようにすると、のたりくたりと逃げようとするのだが、動作がとろくて簡単に包めてしまった。

フグをからかったり、岩場のイソギンチャクをつっついたりしながら、午後を過ごした。
天気はうす曇で、時々太陽が顔を覗かせた。

小さい岩山を囲うように、段が作られており、弁天様が祀られていた。
上ると、海水浴場が一望できる。
ここ数日の雨続きにも関わらず、水は綺麗だった。

夕方5時近くまで、そうやって海岸で過ごした。
隣に、近所に住むおじさんおばさん達のテントが立っていた。
山を越えたところで毎週日曜に畑を作り、農作業を終えるとこうして浜辺に来てみんなでワイワイ飲んでいるらしい。
元・勤め人で、仕事を引退してからそういう生活をしているとのこと。
優雅でうらやましいと思った。

テントを片付け、シャワーを浴び、車に戻る。
日本海に沈む夕日を見たかったが、曇っていたため、どうやら見られそうになかった。
雨を避けられただけでもよしとしよう。

笹川流れで日本酒を買い、ソフトクリームを食べる。
ソフトクリームは少し青かった。
塩が入っているそうだ。

車に戻り、カーナビを練馬インターにセットし、一路東京へ。
伊豆や三浦から帰るのとはわけが違うので、高速に入る前にガソリンスタンドに寄る。

高速に乗ってすぐ、小雨が降り始めた。
関越自動車道に入ると、雨脚は強くなった。
あちこちで花火大会をやっているようだった。
フロントガラスが雨に濡れていたので、それを透かして見る花火は、幻想的なスローモーションのようだった。

小千谷を過ぎ、トンネルを越えてから、雨の降り方がひどくなってきた。
ラインが見えないほどだった。
どこかのSAで夕食をとろうと思っていたのだが、雨がひどすぎて立ち寄る気になれなかった。

前橋あたりでようやく降り方がまともになった。
休みなしに運転していたが、集中していたためか、疲れを意識することはなかった。

三芳で少し休憩してから、練馬、環八を通り、荻窪着。
一昨日と比べて、気温が下がっているようだった。
雨は降っていなかった。
車を返し、買い物をして帰る。
フランクフルトを暖め、パンにはさんで食べ、買ってきたかに味噌を肴にして日本酒を飲んだ。
柏崎から笹川流れまでの距離を地図で見て、ずいぶん走ったのだなあと感慨を新たにする。
新潟は食い物が美味くて安かった。
そして水が美味しかった。
また行きたい。