ラスト手前でこってりと話し合い

10時半起き。
昨日作ったおにぎりの残りを温め、切り干し大根と一緒に食べる。

11時半に家を出る。
西荻の「宝家」に寄り、コロッケを四つ買う。

12時半に昨日と同じ稽古場到着。
着くのが早すぎたので、本を読みながらコロッケを一つ食べた。

1時に太一到着。
夕方まで、後半シーンの稽古をする。
昨日通しが出来たことで、心理的に大分楽になったのか、昨日よりも太一は饒舌だった。
休憩時間に話す。

「塚ちゃんから見て今回の自分の作品はどう?」

不意に聞かれ答えに詰まる。
少し考えてから答えた。

「どう思われるかは、正直わからないなあ。稽古の最初で言っていたような芝居になったことは間違いないけど、太一を見に来るお客さんが何を求めているのか、それ以前に、ここ数年の太一がどういう芝居をしてきたのか、まったくわからないまま作っているから」

太一は黙ってしまった。
そのまま続ける。

「内容に関しては、観点的なところをグレーにぼかしているところがあるから、その辺を『結局どっちなんだ? 白なのか黒なのか?』と聞かれると、辛いかもしれない」
「ラストの方、哲学的だもんなあ」
「混乱して自分を見失ったけど、ある物を見つけてがんばろうと思った時点で、言わんとしてることは終わってるんだけど」
「グレーの部分をさ、もっとわかりやすくしたいよね」
「わかりやすく?」
「そういう、もろもろひっくるめて、わかりやすく伝えたいじゃない」

夕方6時、後半のラスト数ページを残して食事休憩。
カップうどんと、コロッケを食べる。

6時半に稽古再開。
昼の稽古で話していた、ラスト近くの箇所で、太一が言った。

「この台詞が、流れないんだよなあ」

白か黒か、どっちなのか、グレーにしてある部分だった。

台詞をもっとわかりやすくできないか、その場で変更してみたが、つじつまがあわなくなってしまった。
ノートに手書きで書いていてはらちがあかないと思ったので、パソコンを立ち上げ、該当箇所のシーンを書き直してみる。
『太一人』の本編前に紙芝居芸を見せる予定の佐藤君が稽古場に入ってきた。
黙礼を返し、テキスト修正を試みる。

徹夜をして書いた箇所なので、言いたかったことが凝縮されており、それを再び解きほぐして並び替えるのは、とても難しい作業だった。
太一は待ち時間になってしまったので、その先の台本を練習していた。
20分ほど修正を試みてから、太一に読んでもらう。
「これだと、こっちの気持ちが、消えてしまうよね」

「塚ちゃんとしては、今までの本で、つながってるんだよね」
「うん」
「そうかあ。なんでこの台詞出てこないんだろ…」
「どこまでなら出てくるの?」
太一は台本のある箇所を指し示した。
「そこまでなら、気持ちに嘘がなく言えるんだよね? じゃあ、そこまで何回か返して、気持ちを固めちゃおう。その上で、先に行けるかどうか試してみて、ダメなら色々カットして、短くしよう」
「わかった」

気持ちに嘘がなく言えるところまで、太一にやってもらう。
すると、どういうわけかその先も、するする言えてしまった。

「今、台詞、出てきたよね」
「出てきたね」
「さっき、気持ちについて散々考えたけど、その気持ちのまま、このテキストで言ったら、流れるってことだよね」
「行けるかも」

変更なく行けるかもしれないと思ったところで、稽古時間が終わってしまった。
見学に来た佐藤君とは、ほとんど話すことができなかった。
お詫びに、コロッケをあげる。

明日の最終稽古を残して、今日通しができなかったのは残念だが、ラストの大事なシーンについて、戯曲の解釈という部分でたっぷり話せたのが、稽古の収穫だったと思う。
太一の声はかすれていたが、まだ大丈夫そうだった。

10時半すぎ帰宅。
ハーゲンダッツのナッツを半分だけ食べる。