同僚のYさんが風邪から復帰したが、マスクをした姿は決して快癒したという感じではなかった。
人に気を遣う人なのに、人に気を遣うことを責められる場面を見たりしたので、心配していた。
なんとか彼のために、一席設けたいものだ。
隣の席にも同姓の、元・新人くんがいる。
「どっちが本当の名字か、対決飲みをしないか」
「来週の方がいいですね」
Yさんにそのことを伝えると、27日までなら大丈夫とのこと。
そのあたりのどの日かに、しみじみ語ってもらう会を設けるか。
たぶん、少ない人数で、じっくりゆっくり、思う存分喋ってもらうのが、一番いいんじゃないかと思う。
仕事の現状がとんでもないことになっているのは、もはや当たり前の状況になってしまった。
これは、いっぺんに解きほぐすのは無理だろう。
責任者を突き止めて罰しても、問題は解決しないし、どうやら来年は2013年らしいし、その次は2014年らしい。
である以上、やはり車輪の回転を妨げる小石を取り除くことはした方がいい。
午後、作った仕組みをテストすると、一発で結果が出た。
久しぶりにガッツポーズをした。
女性のKさんとOさんに、動作を実際に見てもらい、
「こういう風になったら、作業は少し楽になりますか?」
と聞く。
Kさん、疲れた表情で、
「いっすね」
と言いつつ、Oさんの意見を求めていた。
元・新人のK君は、VBAの実験に余念がない。
自分の予定では、来年1月あたりから徐々に教えようと思っていたことを、すでにやり始めている。
偉いものだ。
「こういうことが出来るまでになりました」
と上司に伝える仕組みを考えなければ。
元・新人K君と書くのも煩わしいので、今後は旧K君と書くことにする。
旧K君がメンテナンスをやってくれているので、第二のデータベースに関わる時間が格段に増えた。
一番嬉しいのは、実際に使っているメンバーの話を聞きに行けることだ。
よく考えてみると、
「新しいデータベースを作ってくれ」
と言われたのは確かだけど、
「管理者になってくれ」
とは今まで誰にも言われていない。
なにか、暗黙の了解として、管理者を兼ねているようだ。
そのへんも、問題ではあるのだけど、もうカリカリしない。
小石を拾うようにする。
聞き込みをしつつ、現状を把握していく。
全体像がなんとなくわかってきた。
そして、9月と10月にさんざん苦労した管理簿について、絶対にその形にして欲しいと求めている上司やクライアントがいないということに気づいてしまった。
じゃあ、いらないじゃん。
必要な5、6列を更新するために、130列以上もあるExcelシートが必要なわけがない。
なぜその管理簿をデータベース化しなければならなかったのかというと、決める時、その場に自分がいなかったからだ。
というより、管理者じゃないし、席を離れられないし、決まったことに従うだけというワークフローだった。
過去を振り返ると、欠点はいくらでも出てくる。
が、それはもう散々言ったので、今さら言うのはやめよう。
「旧Kくん」
「はい神さま?」
「僕は来年、一切ネガティブ発言をしないことにするよ」
「はあ」
「もし一回でもネガティブ発言したら、秩父に行って滝に打たれるよ」
「わかりました。任せてください」
「何を任せるんだ」
「すみません」
「人の話をちゃんと聞きたまえ」
「はい神さま」
「その、神さまって言い方も、来年は変えようじゃないか」
「神さまは神さまです」
「やめてくれ。ナメック星人じゃあるまいし。来年からは、そうだな、ジーザスと呼んでくれ」
「同じですよ」
こんな感じに、旧K君と話しながら休憩する。
定時後、とりまとめのポジションにいるO君と話す。
O君は身長が2メートル15センチもある巨漢なのだが、タンポポにとまるモンシロチョウをみかけると微笑を浮かべて立ち止まるような優しい気性のため、Yさん同様にお任せ仕事が集中し、疲労困憊している。
優しい人から、心が参っていくのを見るのは、辛い。
自分はどうかといえば、今の仕事場で参ったことはほとんどないので、これは責任感の違いかなあと思っている。
YさんやO君が疲れ果てている姿を見ると、気の毒で、カロリーメイトでもおごりたくなる。
休憩室に移り、T君と初めて話す。
「塚本さんとほとんど喋ったことないッスね」
と言われる。
ある意味、自分は特殊部外者なので、もしかすると現状の人間関係を、いい感じにかき回すことができるポジションにいるかもしれない。
T君の話を聞いて、そう思った。
なんとなく、芝居の稽古初期に、座組み作りに腐心する心構えに似てきたなあと思う。
年末まで、人事的な観点から動いて、報告書を作ってみようか。
7時半にあがる。
帰りの電車ですぐに座れたのだが、終点の三鷹まで寝てしまった。
荻窪にとって返し、買い物をして9時帰宅。
公演参加者からの返信メールがすべてきて、いよいよ台本書きだなと思うが、実はまだ台本の形では1ページも書いていない。
その代わり、いつもよりもプロット書きに時間を費やしている。
登場人物の交錯を計算しないと、ひとつの作品にならない。
疲れているのに、昨日に続いて宵っ張り。
3時を過ぎてしまった。
寝る。