ローリングストーンズドーム公演観る

堀江俊之『めぐらし屋』読む。
この文庫本、ひょんなことで入手したもので、自分の意志で買ったものではないのだが、読み始めるとすぐに止まらなくなった。
面白い物語というより、主人公の視点で眺める日常が、落ち着いた人々の織りなす平和な暮らしに見え、読んでいて気が安まる。

仕事を定時に切り上げてから水道橋へ。
ローリングストーンズ日本公演見に行く。
学生時代の演劇仲間であるシゲと、東京ドームで待ち合わせ。
ゲート前で落ち合う。

「さっきまで女子二人と飲んでた」
とシゲ。
「誰?」
「ずっと前からのマイミクで、ストーンズ見に上京するっていうんでさ」
「知り合い?」
「会ったの、今日初めて」
「マジで?」
「片方は母親だよ。子供幼稚園だって」
「君も子供二人いるだろう」
「二人とも今日は宿とってないんだって」
「グルーピーか!」
「ライブハウスでストーンズナイトのイベントやるからそこ行くみたい」
「女房も子供も放って、昼から酒飲んで、ストーンズを見るのに、実に正しい態度だね」

そんな会話をしながらドーム内へ。

ポール・マッカートニーの時は下手のかなり斜め前からステージを見ることになったが、今回はスタンド席とはいえステージを正面から見られた。
ドーム公演はアリーナよりもスタンドの方がいいかもしれないと、去年のPerfumeライブで思った。
アリーナだとよほど近くない限り、ステージがよく見えない」

売り子のお姉さんからウイスキーソーダを買い、飲む。
シゲが、
「俺が出す」
と言ってお金を払った。

どの曲で終わるのかは予想がつくのだが、オープニングが何でくるかは少し期待感が持てた。
Start Me Up は、あまりにも直球過ぎる。

「60年代のやつで始まったら嬉しいよね」
「ルビー・チューズデイとか?」
「それで始まったらずっこけるよ」
「Paint It Black」
「なるほど。ひとりぼっちの世界もいいなあ」

開演時間が過ぎても会場の明かりはなかなか落ちなかった。
予定を30分近く過ぎてようやくメンバー登場。
一曲目は、ひとりぼっちの世界だった。

「やった!」

と叫び、席から立ち上がり、最後まで座らなかった。
以下、セットリスト。

1. Get Off of My Cloud
2. It’s Only Rock ‘n’ Roll
3. Tumbling Dice
4. Wild Horses
5. Emotional Rescue

エモーショナルレスキューには、正直驚いた。

6. Doom and Gloom
7. Bitch
8. Honky Tonk Women

ホンキートンクウィメンは、やっぱり、しみじみといい。

ここからキース・リチャーズの時間。
9. Slipping Away
10. Before They Make Me Run

今日のキースは声が出ておらず、終始ギターの弦を見る感じで、元気がなさそうだった。
対するミックは、これが70歳の人間とは信じられないほど動き回っていた。
驚いたのは身体のフォルムだ。
20代の頃とまったく変わらない。
すさまじい努力をしないと、あの動きと体型は維持できないと思う。

11. Midnight Rambler
12. Miss You
13. Paint It Black
14. Gimme Shelter
15. Start Me Up
16. Brown Sugar
17. Jumpin’ Jack Flash
18. Sympathy for the Devil

後半は名曲集の趣。
チャーリー・ワッツがスクリーンに大写しになった時、思わず「チャーリー!」と叫んでしまった。

アンコールに二曲。

19. You Can’t Always Get What You Want
20. (I Can’t Get No)Satisfaction

サティスファクションでしめるのは定番のような感じがした。
シゲは、無情の世界に感動しているようだった。

ライブの時間は2時間と少しだった。
とにかく、ミックの若々しい声と動きと体型に圧倒され、期待していたミック・テイラー共演の場面は、あまり印象に残らなかった。
チャーリーがかわいかった。
キースが元気なかった。

ドームを出てから、シゲのマイミクさんと落ち合うため、新宿に向かう。
花園神社から明治通りを渡ったあたりにあるので、結構歩いた。
途中、ラーメン屋で腹ごしらえをする。

ライブハウスは厚生年金会館跡地の近くにあった。
中にはいると真っ暗で、ストーンズのコピーバンドとおぼしき演奏がスピーカーからガンガン流れていた。
シャンディガフを頼んで壁際の椅子に座ったが、どことなく落ち着かない雰囲気だった。
常連達がヒソヒソ会話をしていて、イベントが始まるという雰囲気じゃなかった。

15分くらいいてからシゲが、
「出よう」
と言った。
どうやら、後から来たおっさんともめそうになったらしい。

シゲのマイミクさんと駅前で待ち合わせ、ゴールデン街近くのショットバーで飲む。
カラオケがあって、フィリピン系の男がエアロスミスとかガンズ・アンド・ローゼズとか、そのあたりの歌を何曲も歌っていた。
1時間弱そこで飲み、店を出る。
マイミクさん達は、我々が抜け出してきたライブハウスに行ってみると言っていた。
駅で別れる。

シゲと荻窪まで一緒。
中央線の遅い電車でライブの余韻に浸る。
フーも、ポールも、ロジャー・ダルトリーも、ストーンズも、生で見ることができた。
思い残すことはない。