劇団員のコミュニケーション

夜、本天沼にて稽古。
久しぶりに使う稽古場だ。
マグでは「1:1」の時以来だ。

出演者みな、迷わず稽古場に来られてほっとした。
例によって自主練と見せ合いと、新しい台本の読み合わせと立ち稽古。

「盗難」をどうにかするより「作家」と「張込」を先に進めていった方が効率が良いと思い、「盗難」はしばらく寝かせておく。

稽古後、マグ三人でジョナサンへ行き、役割分担を決める。
衣装を知恵ちゃん、小道具を芹川にお願いし、週末のDM発送について買い物担当も決める。
その後、思っていることを二人に話す。
稽古が始まると話ができなくなる。
その結果、何を考えているのかわからなくなる。
俺は二人に対してそう思うことが多かったし、きっとそれはお互い様だろう。
なるべく意識して、時々話し合いの場を作っていこうと思ったのが、考えていたことだった。

昔、マグが別のメンバーだった頃は、月に一回のペースで会議をしていた。
あの頃と今と違うのは、自分が制作をやるようになったことだろう。
昔は、作と演出と出演のことだけを考えていればよかった。
では今より楽だったかというと、むしろきつかった。
スタッフさんやキャスト集めは、タタキの手伝いも行かねばならない。

現在は現実的にタタキ手伝いが無理で、搬入の運転も照明がせいぜいだ。
その代わりに制作の忙しさが色々ある。

いや、当時もDM関連は自分が印刷しなければならなかった。
だがパンフレットとアンケートはやってもらっていた。

「大変だから手伝ってくれ」

という頼み方をすると、仕事以外の別のネガティブな空気までも、相手に渡すことになるんじゃないか。
最近そう思う。
これが客演さん相手だったら、ネガティブな空気は伝わりにくい。
身内ではないから、純粋に労働力として、手伝いに参加してくれる。

客演さんに送った公演のタイムテーブルが間違っていたことがある。
去年の「トウガラシライフ」の時だ。
間違っていることにまったく気づけなかった。
指摘を受けた時、
「俺だって忙しいんだよ」
と言ってしまった。

のちになって芹川にそのことを指摘された。
「毒薬」の直後だった。

「毒薬」は、「死にたいくらい忙しいんだよ」だったので、直後に指摘されても、感情としてすぐに受け入れることはできなかった。
「今、そう言われたから、たぶん俺は、次は、そういうことをいわないように気をつけると思う。でも、今素直に「そうだね」と言うことはとてもできない」
冷静に言うことは出来なかったが、そんな返事をした。

仕事のミスと「俺だって忙しいんだよ」は、別物であること。
それを肝に銘じつつ、今回は稽古をしている。

言ってはいけないことを言ってしまったわけだ。

ただ、俺は絶対に、これからもミスをするだろう。
忙しさが今後もなくなるはずはない。

コミュニケーションがちゃんととれていれば、防げたと思う。

「俺だって忙しいんだよ」という言葉で、自分はなにか別のことを訴えたかったんじゃなかったかと思う。

もちろん、それとこれとは違う。
ミスはミス。

今回の小規模な公演で、どれだけ良くなれるか。
芝居だけじゃなくて、取り組み方とか、心のコントロールの仕方とか。
精神のバランスや健康の維持とか。

伝わるかどうかはともかく、今自分はこう考えているんだということを、ただそのまま話した。
正直に話すということは、わけのわからない内容を話すということになる。
整理されていないからだ。

それでも、言わないで何もかもなくすよりはいい。

11時半くらいまで話す。
どういう風に受け止められたのかはわからないが、俺だけに偏った喋りにならなかったのが良かった。
とにかく、どんよりとしない稽古場になっていけばいい。
自分も含めて。