脱稿したが、包装紙はまだの状態

「張込」「作家」「盗難」と、残りの短編をすべて脱稿。
最初に書いた二人芝居3本はトータルで36分程度だったが、残りの3本はそれ以上の長さがあるだろう。
おそらく全編で1時間20分から40分の間くらい。
1時間40分はまずないと思うが、どこを芝居の始まりと定義するかによって違いがあるだろう。

とにかく、脱稿はうれしい。
いつでもうれしい。

夕方までずっと書き続けていたので、気がついたら稽古場に行く時間ぎりぎりになっていた。
急いでプリンタ印刷を済ませ、自転車で高井戸に向かう。

脱稿はしたものの、順番や、オープニング、エンディング、その他全体を包むものはまだ出来ていない。
中身は出来たが入れ物がまだという状態だ。

「作家」と「盗難」は対極にありつつも、補完し合っているような作品。
「張込」は、最初の短編二本をゆるやかにつなげる作品。
全体的に細い糸でつながっているのだけど、「献血」だけ独立していた。
それが、「盗難」でなんとかつなげることができた。

全体を一つのごとく見せるのは、目標というわけじゃない。
ただ、そうしようと努力することで、結果が面白くなりそうだと思った。

「作家」に出てくる主人公の名前は橋本。
これは、2004年上演「ファミリーアフェア」のさらに前、学生時代に書いた台本の主人公の名前。
タイトルは、もう忘れてしまったけど、それを書き直して出来たのが「ファミリーアフェア」
今回のは、ファミリーアフェアのリメイクではないけれど、要素としては同じ。
主人公の名前が橋本というだけで、長州力の「ナニコラタココラ」問答を入れてみたりして、「これって「友情」「車内」のタコつながりになるなあ」と思った。

上岡君の出番が多い。
「献血」「張込」「盗難」「作家」と続く。
後半は出ずっぱりだ。

キーとなる作品は「盗難」だろう。
タイトルは「喪失」に変えることにした。
もともと、夏休みを盗まれた少年の、悩み事相談を受ける大人の問答という内容にするつもりだったが、子供役の上岡君がはじけていたので、それを生かす方向で話が完成した。美酒蘭(ミシュラン)というDQNネームの4歳児が出てくるのだが、これを演じられる役者ということで、上岡、尾鷲、塚本の三人組にした。

身もふたもない言い方をすれば「バカ三人組」なのだけど、実は一番まじめに作らないといけない芝居だと思っている。
これが失敗したら、全体がダメだろう。
プレッシャーがある。

野村さんが、お彼岸のぼた餅を差し入れしてくれた。
お母さんとの手作りらしい。
あんこも手作り。
一口食べると動きが一瞬止まるほどのうまさだった。
塩加減に秘密があるような気がする。

稽古後、高井戸で台本脱稿祝い。
ささやかに飲む。

上岡君と知恵ちゃんは、10年くらい前から知り合いだったらしい。
知恵ちゃんに、
「昔の上岡君はどんなだったの?」
と聞くと、
「めちゃめちゃ元気で、すごい痩せてましたよ。動き回ってバック転とかして」
とのことだった。
それが、一度芝居を辞めて、復帰した頃には、現在のどよーんとした上岡デフォルトモードになっていたという。
おれが宇宙キャンパスに客演したのも、ちょうどその頃だったな。