負け好き

8時起き。
久々にぎりぎりの時間だった。
9時丁度に仕事場へ。

ファスティング三日目だが、ほとんどそのことを意識せず過ごせた。
ケトン体の存在を知ったことで、心理的に楽になっている。
心の中で、早く出ろ出ろケトン体と、さるかに合戦のように唱えている。

昼、レストルームでkくんと雑談。
新しい職場を2件紹介されており、もしかすると来週で退社することになるかもしれないそうだ。
その2件の仕事で悩んでいた。
どちらも今より条件はいいのだが、もう少しいい条件の仕事を待つという選択肢もある。
いずれにせよ、一度面接をしに行き、現場の人と話してから決めた方が良いのではと伝える。
休憩時間が終わる頃、Y君もやってきて、試験を受けろとkくんをあおっていた。

午後、アクセスのテーブル変更を検討する。
いっぺんにすべてを変更すると大変なことになるし、今回は動作の軽量化が目的なので、二つのテーブル間でフィールドを入れ替えるだけ。
もちろんその後で色々な修正が必要になってくるだろうけど。

定時にあがり中野へ。
マックでコーヒーを飲み読書。
あまり集中出来なかった。

7時にテアトルBONBONへ。
劇団5454公演『ト音』観劇。
旧知の浅川さん出演。

舞台美術に目がいった。
客席に対してへの字型に大きなパネルが立っている。
パネルの上部は黒板になっており、その下は板が張られておらず、奥の職員室の机が見える。
パネル両脇の上手手前に保健室、下手手前に柵。
舞台上を菱形に切り分け、場面転換を最小限かつ効果的に演出する装置だった。

物語の設定は学校。
教師による生徒評、生徒による教師評、新聞部による教師ゴシップ記事作成とその方法論あれこれなど、前半は教師と生徒の対立が物語の主軸になっていた。
だがその対立は穏やかなものに見え、教師のゴシップを挙げ連ねる場面の面白さも手伝って、学園コメディーのようになっていた。
後半になると、新聞部のエピソードが、別場面で展開していた共鳴音実験のエピソードと合わさり、コメディー色がさらに強くなる。
その後、展開ががらりと変わる。
教師・坂内を対象にした実験から、新聞部の二人のうち一人が実は…という謎解きになり、さらにどんでん返しになり、物語は静かに収斂していく。
台本構成が良く、演出がきれいだった。
ラストシーンが終わり暗転し、カーテンコールで役者がお辞儀するより前に、客席から拍手が出た。

浅川さんは今回で女優を引退するという。
昨年結婚し、子供を産んで育てたいという希望もあり、けじめをつけることにしたのだそうだ。
彼女の芝居を見るのは3年ぶりだが、思い返せば面白い作品ばかりに出演していた。
一人芝居でバック・トゥ・ザ・フューチャーをやった時の衝撃も忘れがたい。
濃い女優人生だったのではないかと、客として思う。

高野アツシオくんが数学教師役で出演していた。
彼もすごくいい芝居をしていた。
タバコを吸ってから、新聞部の生徒と対話する場面など、とても印象深い。

終演後、浅川さんに挨拶。
実際に言葉を交わすのはかなり久しぶりだった。
大変良かったですと感想を言う。
受付ロビーのアツシオ君にも、握手して同じことを言う。

面白かったなあ、オレはこんなに面白い戯曲を、書けたためしがないぞと思いながら、中野までの道を歩く。
すがすがしいまでの敗北感。こういう感じはいい。
もっと色々な人に負けたい。

好きだった定食の店「タブチ」が閉店していた。

10時過ぎ帰宅。
「贅沢な肉」編集続き。
音声のノイズ消去は後回しにして、前半のカット編集をやり直す。
ソフトの操作に慣れる前にやった箇所なので、編集が荒い。
コツがわかってくると、あれもこれもと欲が出る。
1時半まで。

なかなか寝付けなかった。
2時半に起き、ぼーっとしていたら、満月の明かりが部屋の中に差し込んだ。
耳が伸び牙が生え、全身毛むくじゃらになるのを待った。