ビデオに撮れない木更津

 花粉の飛散量が急に増大した。
 気温の変化に伴ってのことだろう。
 昼間仕事中は室内にいたりする関係であまり被害を被らなかったのだが、帰りの電車に乗るあたりから目にかゆみを覚えてきた。

 こういう時、絶対してはいけないことは、かくことだ。
 くしゃみもよくない。
 あれは鼻粘膜をかいているのと同じだ。
 鼻をかむのも同様だ。

 とはいえ出ものはれ物ところ嫌わず。
 鼻をかんだり目をかいたりするのは我慢できても、くしゃみだけはどうにもならないことが多い。

 俺の場合はひたすら平常心を保つことを心がけている。
 素人考えかもしれないが、くしゃみには自律神経が大きく関わっていると見た。
 それならば心身のリラックスを心がけることこそ大切なはずだ。

 ところが電車に乗って人混みとともに西へ西へと横移動しながら脳波をα波に保つのは至難のわざだ。
 山にこもり滝にうたれるなどの厳しい修行を積まなければその境地に到達できない。

 そのため電車に揺られながらくしゃみが出始めた時、平常心を失ってしまった。
 「健一! 気を乱してはいかぬ!」
 「AKIRA」に出てくるミヤコ様みたいな老婆の映像が心の中に浮かぶ。

 しかし一度乱れた平常心はドミノ式。
 ゆえに帰宅した頃は典型的な花粉症患者の体。

 こういう時は横になるのが一番だ。
 籥下丹田に息を落とし、宇宙と地球、人と大地の調和に思いを馳せる。

 7時くらいになってようやく落ち着いたので、「木更津キャッツアイ」のタイマー録画をするためにビデオテープの頭出しをする。
 が、再生音は聞こえるのになぜかテレビ画面は砂嵐。
 さてはテープが駄目になったかと思い、ほかのテープを再生するが、どれもこれも砂嵐。
 すわ一大事と思い、巨泉ばりにセミリタイアしていた古いビデオデッキを引きずり出し、アンテナと接続してタイマー録画を試みる。

 しかしこのデッキは巻き戻しができないという、未来志向にもほどがあるという欠点があり、無理に巻き戻しをすると強制的に電源が落ちてしまうのであった。
 そのことをすっかり忘れていて、頭出しのために巻き戻しをしたところ、案の定デッキは固まってしまった。

 仕方ないので巨泉デッキはあきらめ、再生できなくなった方のデッキで録画をすることに。
 きちんと録れているか不安なので、パソコンのビデオカードでハードディスク録画も試してみることにした。
 さらに、どちらも駄目だった場合のためにリアルタイムで放送を観ることにした。

 氣志団が出演しており、下手なのかうまいのか面白いのかつまんないのかよくわからない、針の穴レベルの微妙な演技をしていた。
 そして、AV界のカリスマ男優加藤鷹が本人役で出演していた。
 大いに楽しむ。

 その後「トリック2」を観る。
 テレビ的に濃い金曜日だ。
 もっとも、次の番組改編時までの短い春だと思っているが。