酔って最悪な昼

 初めは自分がどこにいるのかわからなかった。
 見慣れた目覚まし時計が視界に入り、そこが自分の部屋だとわかった。
 時刻は12時だった。

 起きるとめまいがした。
 ウーロン茶を立て続けに2杯飲んだが、みぞおちに差し込むような痛みが走り、再び横になった。

 横になりながらぼんやりと、追いコンのことを思い出す。
 朝の6時近くに学校を出た。
 その辺まではしっかりと覚えている。
 ところが家までの1.5キロを歩くうちに、体に滞っていたアルコールが一気に全身を巡ったらしく、校門を出てから先のことがまったく記憶にない。
 一体どうやって帰ったのだろう?

 どういうわけか途中で牛丼を食った覚えがある。
 駅の近くにある松屋だ。
 しかも味噌汁が飲めなくて途中で出たような記憶がかすかにある。
 なぜ松屋なんかに入ったのだろう?
 そこから再び記憶は途切れ、気がついたら昼の12時をまわっていたというわけだ。
 当然服は着たままだった。

 一番問題なのは、今日が平日で仕事があるということだった。
 横になったまま電話をし、休む旨を伝える。

 ここから先は自己嫌悪しか書くべきことがないのだ。
 気分は悪いが目は覚めていたので、横になったまま布団を咬んだりしながらおのれの馬鹿さ加減を呪っていた。
 しかも今日は稽古初日だ。

 夕方6時から野弥生町センターで稽古。
 今週は望月と中山君のみ参加。
 ゆえに「夏の子プロ」を重点的に稽古する。

 台本のコピーを渡し、キャラクター作りということを念頭に置いて読みをする。
 マグネシウムリボンの芝居はどちらかというと人物の内面から作っていくことが多い。
 そのために経験の浅い役者は「自分自身」のままで芝居をするということもある。
 それを良しとするかしないかに、演出家の分岐点があると思う。
 俺個人は、
 「それ、いつものお前じゃん」
 という駄目出しをポジティブに発していけるのが理想だ。
 かといってもちろんいつまでも自分自身しか出せないのは困る。
 それゆえのワークショップではないだろうか。

 久しぶりに丁寧に書いたつもりの台本だったが、読み合わせをしてみると言葉の堅さが目立つようだ。
 台詞から無駄を排すとそうなってしまうのは仕方がないことだろう。
 普通の人間は日常でそんなに効率的に喋ったりしないものだ。
 回り道をしたり相づちをしたりしながら会話を転がしていくものだ。
 だから、無駄を排した台詞のままで上演するには、「あえて」という要素が不可欠だ。
 今回の「あえて」は吉と出るだろうか。
 出てもらわないと困るが。

 どんなに自己嫌悪に陥ろうが、稽古という場に出るとそれなりのテンションをキープ出来るのは嬉しいことだ。
 あとは日常生活の方を少しずつ組み立て直さなくては。
 とりあえず、酒対策だな。