本番中なのに演出の自分は野宿

 疲れがたまっているのに一睡もしなかった。
 神経が高ぶっているためだろう。
 11時過ぎに劇場入り。

 最初のシーンを稽古する。
 簡単な直しをしただけなのだが、こういう稽古が一番楽しい。

 2時開演。
 最初のシーンを見て照明オペの美和ちゃんがつぶやいた。
 「なんか、変わってる」
 「さっき変えたんだ」
 もちろんきっかけに関わる変更はなかったので問題はない。

 阿部さんのご両親から文明堂のカステラをいただいた。
 今回の芝居では、松井智美演じる浅丘という女の台詞にこういうのがある。
 「文明堂のカステラ持ってやって来たわよ。まことにあいすいません、だって。まったく冗談じゃないわよね」
 ちょっと気まずかった。

 終演後、高校生の2人組の女の子がいつまでも客席に残ってアンケートを書いていた。
 30分くらい経って後、二人はお喋りしながらロビーに出てきてアンケートをくれた後、階段をものすごい勢いで駆け上っていった。
 次にものすごい音が聞こえたので何事かと思い階段の上にある入り口をのぞいてみたら、二人がガラス扉に激突して転んでいた。

 健ちゃんが心配して見に行った。
 戻ってきた健ちゃんは言った。
 「頭、腫れてんのに、笑ってんだよ…」
 再び入り口のところへいくと二人はすでに劇場から少し離れた歩道をこちらに背中を向けながら小走りに去っていくところだった。

 その二人のアンケートには、4コマのかなりしっかりした漫画が書き込まれていた。
 今回の芝居のパロディらしかった。
 そして、内容に関しては「ぜんぜんわかんない」とコメントしてあった。

 7時までの時間はひたすら睡眠に費やした。
 しかしいくら寝ても寝た気がしなかった。
 まあ一睡もしてないのだから仕方ないが。

 夜の部は7時開演。
 南京小僧の米倉さんがお母さんと共にいらして、さしいれにスイカを持ってきてくれた。

 友人の清水夫妻と小山来る。
 泡盛とあんきもをもらう。
 そういえば去年も泡盛をもらった。

 後輩の小松が観に来てくれた。
 しかし例によってアポなし上京。

 境亭女将&旦那さんが、お友達と一緒に来てくれた。
 久しぶりだったので話したかったが、挨拶しか出来ず。

 和民を10時から予約してあったのだが、それまでの時間が1時間もあいてしまったのでキャンセルする。
 そのかわり劇場の玉山さんの好意で、ロビーにて簡単に宴会をする。
 千保ちゃんと山ちゃんがビールと簡単なつまみ類を買ってきてくれた。

 飲みながらビーグル大塚さんと話す。
 「宣伝のチラシには、あらすじみたいなものが必要だと思う」
 とのこと。
 文庫本の背表紙にはあらすじが書いてあったっけ。
 ああいうのをきちんと書くようにしないといけないかも。

 11時頃散会。
 小松は「今夜は漫画喫茶でも行って過ごしますよ」と言う。
 それならぎりぎりまで話そうと思い、南北線の入り口で12時近くまで今回の芝居の話をする。

 12時8分の白金高輪行き最終電車に乗ってからしばらく記憶がとぎれる。
 どうやら眠ってしまったみたいだ。
 気がついたのは12時45分頃で、国道1号線の歩道をふらふら歩いていた。
 寝過ごしたということに気づくまでだいぶ時間がかかった。

 そこは古川橋の南で、魚らん坂下のあたりだった。
 夜のその時間になると開いているお店がほとんどなく、走る車ばかりが目立っている。
 おもわずしゃがみ込みたくなるほどの孤独感におそわれた。

 恵比寿に抜けて漫画喫茶でも探そうかと思ったが、それだけの距離を歩く体力はなかった。
 とにかく眠りたかった。
 が、始発までは4時間ほどあった。
 セブンイレブンに入り、2時半まで漫画を読みまくった。

 立ちっぱなしで足下がふらついてきたので外に出る。
 1号線沿いの歩道に緑色のベンチがあった。
 鞄を枕にして横になると、思いの外心地よかった。
 そのまま野宿。

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