挑発としてのギョーザ十人前

 昼前に起き、ハンバーグとサラダ、ゆで卵を食べる。

 2時に王子小劇場へ。
 秋吉君が出演している乞局の「勿忘」を観る。
 劇団名は乞局(こつぼね、と読む)で、タイトルが勿忘(わずれな、と読む)
 純文学のように漢字と言葉を選んでいるなあと思いつつ観た。
 怪談。
 ぼろぼろの劇場でやったらもっと雰囲気が良かった。

 終演後、秋吉君に挨拶した。相変わらずでかい。
 「どうでした?」
 と聞かれる。見終わってすぐ聞かれると答えに窮するものだ。
 とんちんかんな答えをする。
 劇場事務所に野坂さんがいたので、8月公演の日程について相談する。
 「月曜日がわりとお客さん来るんですよ」
 と野坂さん。
 そういえば野坂さん主宰のクロカミショウネンを見に行ったのは、月曜日だった。
 話をしてから劇場ロビーに戻ると、なんと土屋君がいた。
 秋吉君と3人並んで写真を撮られた。
 土屋君は4月の「第二ゾーンへ」でも、隙あらば写真を撮っていた。
 それも、デジカメではなく使い捨てカメラ。
 デジカメも持っているのだけど、本人曰く、
 「パソコンへの落とし方わからないんです」
 だそうだ。

 劇場を出てから下北沢へ。
 途中、吉本ばななの「マリカのソファー」読む。
 多重人格の少女が主人公だった。
 マグの8月公演も多重人格の男が主人公なので、手法に気をつけて読んだが、途中からそんなことを忘れてしまった。
 つまりは夢中で読んでしまった。
 痛みや傷を書いているのに、ばなな本人に屈託がないのは、非常に健康でよいと思う。
 そういえばこの人はWeb日記を公開している。世間に対するストライクゾーンが広い。
 ゲッツ板谷の「板谷バカ三代」文庫版の解説も書いていたし。

 6時に下北ドトール前で清水と待ち合わせ。
 昨日の夜メールがあり、大学時代の友人4人で飯でも食おうということになったのだった。

 店は餃子の王将。
 長野から来た榊原、子供と高尾山に登った帰りに来た飯川、府中の自宅から多摩川沿いを自転車で走って下北に来た清水、そして王子小劇場で記念撮影をされた俺の4名。
 案内してくれた佐藤さんという店員の女性が、裏声でうなりたくなるほどの美人だった。
 注文を取りに来たのはつまらない男の店員。
 「ご注文は?」
 「生4つと、ギョーザ十人前」
 こともなげに榊原が言うのを聞いて一瞬耳を疑ったが、そういえばこのメンバーが集まる時はそのくらいが普通だったなと思い直した。
 他に頼んだのは焼きそば二つ、チャーハン二つ、キャベツのサラダみたいなもの、もやし炒めなど。
 当然残さずすべて食べた。

 食後、美人の佐藤さんに別れを告げ、ミスタードーナツへ行きコーヒーを飲む。
 清水はと飯川はドーナツを頼んでいた。
 コーヒーを飲んで腹が落ち着いたところで、居酒屋に席を移し、また食べた。

 榊原と飯川は教員をしているので、現場のリアルな苦労を色々話していた。
 修学旅行先のホテル選びにまつわる苦労など。
 榊原は長野の教員なので、行き先が東京らしい。
 コースはワンパターンだが、やはりディズニーランドははずせない。
 「放牧できるから」
 とのことだ。
 「だから、2週間くらい前から、子供の怪我には気をつけさせるね。絶対足だけは怪我すんなって。だって怪我してみ?ディズニーランドで放牧しても、ずっと車いす押すんだぜ」
 それは教師も生徒も辛いだろう。

 他にした話は、仕事の苦労。それから夫婦和合についてのなんやかんや。
 「なんかね…エロに対しても、悟ってくるよね…」
 寂しい話題になってしまった。

 10時に駅前で別れる。
 榊原は自転車で8キロ離れた世田谷の実家へ。
 清水は自転車で数十キロ離れた府中へ。
 飯川は小田急で。
 俺は井の頭。

 11時帰宅。
 飲み足りないというわけじゃなかったが、なんとなく飲み直し、3時過ぎに寝る。