昼、パーマ企画公演『腕を前から上にあげて背伸びの運動』の台本を読み返し、これまでつくってきた登場人物のプロフィールを整理する。
シーン中心ではなく人物中心に整理すると、芝居を別の角度から見ることになるから、意外な発見も多い。
(なるほど、あのシーンのこの役はこういう状況なのか)
みたいな。
今までスポットの当っていなかった部分に興味が湧く。
捨てるべきものは案外少ない。
というより、現在できている登場人物のプロフィールには、新しくつけ加える空欄がまだたくさん残っている。
空欄の多さはそのまま可能性の大きさに比例する。
今あるプロフィールだけでやろうとするのは、やはり無理がある。
特に台詞のない時の芝居が薄くなる。
相手との関係やシーンの状況を取っ掛かりにしているが、もっと色々なことができるんじゃないか。
マグの台本を書く。
書くというより、手直しだ。
展開的に、軽薄になりそうなところに差し掛かっており、実際なりかかっている。
戻れなくなる前に、これまで辿ってきた道の確認をした。
夕方実家へ帰る。
夕食を食べてからすぐ、テレビ東京でプレーオフ最終戦を見た。
ソフトバンク対ロッテ。
ソフトバンクが2対0でリードしていた。
ロッテは6回に1点を返す。
しかしソフトバンクは追加点を許さない。
6回の裏、ピンチの後にチャンスありと思ったが、松中、ズレータ、カブレラは淡白に打ち取られてしまった。
今思えば、この回にねちっこい攻撃ができなかったことが悔やまれる。
7回のロッテは、フランコと垣内にヒットが出るも、後が続かず。
7回裏のソフトバンクは四球で出塁した鳥越を送りバントで進塁させるも得点には結びつかず。
8回表に運命が訪れた。
先頭バッター、代打の初芝が打った三遊間のゴロを補給する際、バティスタと川崎が衝突。
福浦にもヒットを打たれる。
4番サブローはヒッティングだった。
ゲスト解説の野村克也は、
「考えられません」
と言った。
案の定サブローは打ち取られた。
ムードがソフトバンク寄りになったかと思われたところで、次のバッター里崎。
一球目を思い切り振った。
打球は右中間を抜けた。
ランナーが二人帰り、ロッテが逆転。
その後、ロッテは押せ押せムードで、ワンアウト満塁。
しかし、ソフトバンクのピッチャー、馬原はここをしのいだ。
よくもまあ、抑えられたもんだ。
8回の裏。
執念で出塁した松中とズレータだったが、カブレラの当りはライトに捕られた。
9回の表のロッテはあっさりと抑えられた。
そして9回の裏。
1点でも入ればソフトバンクの優勝。
ロッテのピッチャーはプレーオフ第3戦で逆転を許した小林。
先頭打者の大村が粘って塁に出た。
鳥越はそれをきっちり送った。
ヒットで同点。
同点引き分けならソフトバンクの優勝だ。
残るバッターはあと2人。
しかし、あと1本のヒットが出なかった。
屈辱から這い上がってきた小林の、意地とプライドが勝った。
いい試合だった。
これほど面白い試合は、20年単位で考えても滅多に見られないと思う。
ソフトバンクが負けたのは残念だが、究極の野球を見せてくれたとことには賞賛の拍手を送りたい。
負けたソフトバンクのベンチでは、選手が呆然としていた。
怪我をした城島のかわりにキャッチャーマスクをかぶった的場は、ぼろぼろ涙をこぼしていた。
ベンチ奥の通路から、松葉杖をついた城島がベンチ内に入ってきた。
視線をグラウンドに向け、目を見開いたままだ。
城島はそのまま、的場の隣にきて、耳元で語りかけた。
たぶん、ロッテの胴上げをしっかり見ておけ、というようなことだと思う。
城島はそのまま瞬きもせず、バレンタイン監督の胴上げを見つづけていた。
風呂に入り、ビールを飲んでリラックスしてから、台本書きをすこしする。
いつもより早めの時間だったが、パソコンの電源を落とし、部屋に戻る。
ゲッツ板谷『ワルボロ』読了。
基地の町立川で生まれ育ったゲッツ板谷の、自伝的不良小説。
一応小説と銘打っているのだけど、文体はこれまでに出た『怪人紀行』シリーズとあまり変わらない。
実名で出てくる登場人物達に異様なほどリアリティがある。
父親に蒸発され、部屋に一人きりになったビデちゃんのエピソードに涙した。
椎名誠の『哀愁の街に霧が降るのだ』を思い出した。
あれも刊行当時はと銘打たれていた。
文庫化されて久しい今は、小説の扱いになっているのだろうか。
内容も似ている。