応援しないと勝つ竜

 秋晴れである。
 小金井は柿の木がわりと多い町だ。
 赤く実った柿は秋の真っ青な空を背景によく映える。
 実る頃には葉も落ち始める。
 枯れ木は枯れ木でまた、青空を背景によく映える。
 このコントラストは<冬色>とでも名づけられようか。

 冬の前触れ。
 思い出すのは秋田に住む叔父の話だ
 若い頃は無頼に走った人で、話が面白い。
 訥々とした語りに趣があった。
 「…秋空がいつの間にか灰色一色になる。雪はまだ降らねえ。振り出すまでが一番静かな季節だ。そんで、11月の終わり頃、染みるくらい寒い日がやってくると、空からぱらっと一粒の雪だ。あとは、春がくるまで真っ白。長い冬の始まりだ」
 こんな感じの台詞を訥々とした秋田訛りで語るのを聞いていると、冬の訪れにとてもリアリティを感じることができた。

 昼、本屋で「グインサーガ」の97巻を見つけた。
 100巻到達まであと3巻だ。
 皇帝の台詞でこういうのがあった。
 「おぬしも勝ち組なのだよ」
 この作品を<ヒロイックファンタジー>らしくする努力はとうの昔に作者から失われていると思う。
 それがいいか悪いかはわからない。
 100巻もの長い話を、初めのころのテンションをキープしたまま書き続けるには、こうした変化はどうしても必要だと思うからだ。
 今回はソープオペラらしい展開だった。
 23巻あたりで結ばれたカップルが別れる話。
 23巻は1985年ごろに出たので、現実時間は20年近く前になる。
 しかし物語時間はたぶん5年くらいだ。
 だから、物語上ではすぐに別れたような二人なのに、まるで20年連れ添った夫婦が別れるような印象を受けた。
 こういう効果は長く続けている小説でないと得られないだろう。

 日本シリーズでは中日が西武に勝ち、優勝への王手を決めた。
 戦い方が伸び伸びとしている。
 82年、88年、99年と、俺の知っている3回の日本シリーズ出場では、大舞台に固くなり本来の実力を出せずにいるドラゴンズナインしか見られなかった。
 正直なところ今年はドラゴンズをほとんど応援しなかった。
 日本シリーズもまだ見ていない。
 つい、応援していないから勝っているのかと邪推してしまう。

 夜、シチューを作る。
 野菜がバカ高いので、冷凍食品のミックスベジタブルをブロッコリーなどの代わりにする。

 石川君から明日の撮影スケジュールについて電話。
 朝3時半に車で迎えに来るとのこと。
 日暮里に5時集合。
 待ち時間も長いらしい。
 正念場ということだ。
 というわけで早く寝ないといけなかったのだが、12時くらいまで眠れなかった。