仕上がり期

11時に小屋入り。

役者を舞台に集める。
「本プロジェクトにおける商品の魅力を再確認し、顧客にアピールする方法については営業それぞれがもう一度基本に立ち返り、現在のやり方は間違っていないか、商品の効能をアピールするあまりお客様のサインを見逃していないか、考え直してください」
とアナウンスする。

バラシのドライバーをねこさんに頼んだ。
俺が運転したら、今回こそ事故る。

昼2時開演。
1話の山口君が、軽さを取り戻していた。
出そうと思って出る軽さではない。
松茸と同じで、地道に歩いて見つける、本人にしか表現しえない軽さなので、袖で聴いていてほっとした。
亜企ちゃんは回を経る毎に熱がこもってきた。
熱と孤独が表裏一体となれば味わい深いのだが、そこらへんは一部の人にしか伝わらないだろう。
わかりやすくすれば多くの人に伝わるのだけど、伝える味の繊細さは失われる。
チェーン店になったらまずくなる店のようなものか。

2話と3話は笑いの反応が多い。
笑えるのだけど、笑わせる芝居ではないので、大爆笑には至らない。
2話は地獄笑いをものにした綾香が快調。
芹川は、トホホな感じを出さず、かっこいい声を出し続けることで<後ろががら空き>というニュアンスを出している。
3話は鶴マミが落ち込むところに尽きる。
そのシーンは普通に悲しいらしく、毎回泣きそうな顔をしている。
それまでの会話はすべて無駄話と割り切り、おそらく割り切りゆえに役者の我が出ておらず、お客さんをリラックスさせているようだ。
4話は知恵ちゃんが元気。
元気いっぱいという元気さではなく、元気いっぱいの女の子が普通に話しているという感じ。
タカのとぼけたキャラは、半分以上は地が出ている。
声がこもる時があるが、いい時はバカな体操のお兄さん風で面白い。

終演後、お客さんに挨拶。
綾香のお母様から大量に海苔巻き、おにぎりの差し入れ。
楽屋で広げ、あぐらをかき、山賊の気分で食べる。

ソワレまでの待ち時間、眠気に耐えられず少しうとうとする。

7時ソワレ開演。
全体的にほぼ仕上がったかなと思う。
あと6ステージくらいあれば、もっと熟して良い芝居になるのだが、それは言っても仕方ない。

終演後、和民へ。
内田びん太さんと少し話す。
明日に向けての最後の作業が残っているため、10時に失礼する。
帰り際、三代川、深津君らに挨拶。
三代川、すっかりお父さんの外見になっていて、初めは誰だかわからなかった。

11時帰宅。
寒かった。
日本酒を暖め、ゆっくり飲んだ。