『田園に死す』観劇

昨夜、自由が丘から帰る時、駅の改札前で若い男が、膝小僧を抱えて座り込んでいた。
駅員がやって来て何か声をかけると男は、
「どうしたらいいかわかんないんすよっ!」
と言って泣き出した。
一体何があったのか。
差し伸べた片手を宙に止めたまま、中腰で固まっている駅員の姿が心に残った。
あれは、公と私の狭間に立つ人間の姿だったと思う。

朝7時半起き。
もらい物の塩麹につけた豚肉を焼いて食べる。
塩の代わりに調味料として使うと、使い道が色々ありそうだ。

昼、博多ラーメンセンターで豚骨ラーメン。
替え玉はせずライスを頼む。

夕方、下北沢へ。
ホットドッグで小腹を満たす。
7時前にザ・スズナリへ。
流山児事務所公演『田園に死す』観劇。
寺山修司の原作を天野天街が演出。
寺山ワールドの天野演出か、寺山作品の天野ワールドか、どちらにせよ楽しみだった。

冒頭、出演者がマッチをすり、ローソクに火をつけながら群唱し、舞台上を埋め尽くしていく。
舞台には映画『田園に死す』の映像が流れている。
最前列に座ったので、燐の匂いがよくわかった。

短いやりとりが何度も反復されたり、設定を変えてやり直されたりしながら、物語全体の時間は過去から現在に向かってゆっくりと進む。
筒井康隆『ダンシング・ヴァニティ』を思い出す。
双子のシーンでぐるぐる回る動きが、わけもなく楽しい。
役者さんが皆うまい。
うまいのだけど、個性を突出させるというよりは、一人一人が集まって大きな全体を形作っている感じは失われていない。
団長さんの演技がキレ良く素晴らしい。
一瞬流れるカラスの映像が素晴らしい。
活字のアニメーションが素晴らしい。
シャドー・ボクシングのシーンは、涙が出そうになった。
流山児さんが、チェ・ゲバラTシャツを着ていたのが良かった。
クライマックスの活字アニメと共に、再度登場人物の群唱。
「終幕」
の言葉と共にラストシーン。
スズナリの入り口を模した装置がある。
寺山さんが階段を上がり、劇場の中に入る。
(あ、入ってきた)
と思った瞬間、芝居が終わり、客殿がつく。

夢を見ているようだった。
2時間、足が痺れるのも忘れ、目を瞠り続けていた。
十代の頃から今までの観劇体験で、間違いなくベスト3に入る作品だった。

劇場を出ると雪が降っていた。
強烈な感動のため、頭がフラフラした。

スズナリ脇の坂道を上り、「マジックスパイス」で遅めの夕食。
豆と野菜のカレーを食べる。
辛さは「極楽」にした。
8年前に来た時は、それよりも一つ下の辛さだったと思う。

カレーはスープカレー。
辛いのだけど、赤唐辛子一辺倒の辛さではないので、おいしさもちゃんと味わうことが出来た。
ただし、汗が止まらなかった。

12時前帰宅。