句読点を打つ気持ちの千秋楽

9時起き。
昼と夜分の予約表を印刷し、11時前に劇場入り。

集合してマチネの準備について話す。
劇場のパイプには、ファブリーズを吹きかけられた衣装がハンガーで吊されていた。
夏の公演だったら、衣装の洗濯が大変だったろう。

昼、小雨の気配。
昨夜の夜公演では、本番中場内が暑かったという意見を聞いた。
山田さんと打ち合わせ、『絶滅した種族』が終わった後に場内温度を確認し、空調を入れるアナウンスをすることになった。

1時開演。
小雨が降ったりやんだりしている天気のせいか、会場の温度はそれほど暑くなかった。
演目の合間、「暑いというお客様いらっしゃいませんか?」と尋ね、自分でも温度を確認するが、問題なさそうだったのでそのまま進行した。

『走馬燈』は回を重ねる毎に、ラストシーンの感情量が大きくなっている。
横から見ているのだが、発するものの強さがわかる。
芹川と知恵ちゃんの感情量が大きくなればなるほど、合間の自分の芝居は、淡々としたものになっていく。
別の立場に存在する人間みたいに。

太一と森さん見に来てくれた。
そういえば『太一人』の話を受けたのもちょうど一年前だった。
また飲もうと言って別れる。

マチネとソワレの間に時間はあまりなかったが、役者達は横になって休息をとっていた。
劇場の外には猫がいる。
飼い猫なのか地域猫なのかわからないが、同じ柄の兄弟を三匹確認した。
人に慣れていて、食事をしていると餌をねだる。
撫でられ慣れているのか、背中をかいてやっても、かかせてやってるんだというそぶりを見せる。

5時、ソワレ開演。
お客さんの反応という意味では、『絶滅した種族』がどの回も安定していたと思う。
『禁煙席』などは、笑いが起きる芝居ではないので、どういう風に受け取られたか自分で演じていてもあまりわからない。
だが、『絶滅』と『プーチン』の間に挟まっているので、異質感は出せたと思う。
『走馬燈』のラストは、さらに感情が大きくなっていた。
ほとばしる、といった感じだった。

だが、5年ぶりに二人が合うシーンの、月日を感じさせる互いの「すれ方」が、演技として見るならば、重要に思える。
芹川の自暴自棄な感じと、知恵ちゃんの他人行儀な大人ぶりは、やろうと思ってやれる芝居じゃない。
意識してやろうとしたら、そうとう難しいはず。
なのに、自然にそういう芝居になっていた。
なぜなんだろう。
たぶん、次回のマグで演出をする時、自分が課題としていくのは、そこなんだと思う。
なぜ、そういう演技ができたのか。
自分は、どういうふうに、そういう演技の誕生を支援すればいいのか。

9月14日にマグメンバーのみで集まり、今日でちょうど一ヶ月。
精神的に追い込まれたり、色々なことがあったが、最後の回をこなしながら、感情を揺さぶられるようなことはなかった。
なにか、句読点をしっかり打とうとするような気分だった。

終演後、お客さんに挨拶し、後片付けをする。
バラシ、ではなく、後片付けというのにふさわしい。
照明機材を潮田君にお任せし、平台を元に戻し、掃除をして現状復帰。
1時間と少ししか、かからなかった。

打ち上げ会場に向かう。
8時15分に予約をしてもらったのはよかった。

円卓だった。
乾杯をするが、その個室には音楽が流れていなかったので、芝居で使ったスピーカーでWalkmanの音源を流す。

知恵ちゃんと真希ちゃんは明日朝から仕事があるという。
森さんも試験。
他の面々はわからなかったが、自分も体力がもったら、昼から仕事に行こうかというつもりでいた。
打ち上げ開始が早かったので、11時を過ぎる頃には結構場もくだけて、出来上がってきていた。
真希ちゃん、知恵ちゃんが明日のために帰った。
芹川も体調不良といって帰った。
となると、自分は必然的に最後まで残ることになる。

2階で飲んでいたのだが、その階を締めるということで、いったんお開きにする。
理保さんが終電が終わったというので、森さんと二人で朝まで一緒に残り、飲むことにする。

2階の宴席後半から続いていた話の続きをし、色々反省させられたり、酒のせいか凝り固まっていた感情が一気に流れ出したりした。
結局は、自分が一番喋っていたんじゃないかと思う。
5時近くに店を出る。
板橋駅で、理保さんは北へ。
森さんと自分は南へ。

池袋で森さんと別れ、高田馬場から自宅へ帰る。

家に帰り、沢山の色々な感情を抱え、シャワーだけ浴びて布団に倒れ込んだ。