9時過ぎ起き。
K君のフットサルを見学に自転車で阿佐ヶ谷まで行く。
南阿佐ヶ谷の、靴流通センターがあるビルの屋上に、コートがあった。
エレベーターで上るとすでに大会参加者達がベンチに集まっていた。
K君が自分に気づいた。
差し入れの営業ドリンクを渡す。
屋上はまんべんなく日が当たるためか、地上にいる時よりも暖かかった。
自分の他に、若い女性が一人見学にきていた。
ネット越しに試合を見る。
「たぶん、ぼっこぼこにされると思います」
そう聞いていた通り、3点取られて敗北した。
K君のチームメンバーは、皆年が近そうで、単純に好きでやっている感じがあった。
昨日、誰がリーダーなのか質問をしたせいか、K君は、
「言い出しっぺは…さんですよね」
とメンバーに振っていたが、言われたメンバー達は、
「いや、俺じゃなくて誰々」
「俺じゃないよ。誰々だよ」
「いや、俺じゃないよ」
と、ことごとく自分がリーダーであることを否定していたのが面白かった。
ひと試合おいて次の試合。
今度は、相手チームの方がぐだぐだで、K君のチームが4点入れて圧勝した。
「勝ったね」
「まあ、こういうときもあります」
昼に芝居を見る予定があったので、挨拶してその場を失礼する。
いったん帰宅し、着替えて、自転車ではなく電車で南阿佐ヶ谷へ。
かもめ座にて、仲澤さん客演の舞台。
劇場入り口で兜森君に会う。
昼の光の下で見る彼は、身分を隠した吸血鬼のようだった。
風邪を引いているらしく、マスクをしていた。
仕事の合間に来たという。
客席で綾香に会う。
ダブルキャストの芝居なので、昼と夜二本見る予定だという。
芝居途中、トナカイに扮した多賀健祐さんという役者が、シャンソンを歌うシーンがあった。
(あ、やってる人だ)
とすぐにわかったが、前半に二曲連続で歌ってしまったのが非常にもったいなかった。
前半に一曲、クライマックスに一曲、オプションでギャラを払って客入れと客出し時に一曲歌ってもらえば最高なのに。
ただしそれをやると、役者さんは全員多賀さんに食われて終わることにもなるけど。
そこで食われまいと食い下がれるかどうかが、試金石になると思う。
仲澤さんは、途中で『東村山一丁目音頭』みたいな白鳥の衣装を着させられていた。
首から上はそれまで演じていた<二の線>のままだったので、ともすれば痛々しくなる。
金髪のカツラを被るだけで、最高になるのにと思った。
後半、その衣装のまま、
「アドリブには自信がないが」
うんぬんのセリフを格好良くいうシーンがあったが、そこで金髪のカツラを取り去ることで、東村山衣装が格好良く見える、という演出マジックが起こるのだ。
ラスト、プロポーズシーンでも白鳥衣装だったのは、かわいそうだった。
そのシーンに入る前に、
「さすがにその格好は…着替えてきなさい」
と誰かに言わせて、着替えている間に、多賀さんに一曲歌ってもらい、歌の途中で着替えも終わり、結ばれるシーンにつながれば、それは美しい演出になる。
終演後、るみさんと会う。
外は寒かった。
仲澤さんに、金髪カツラの案を伝える。
その後、綾香と近場のデニーズで時間つぶし。
お母さんからの電話に出ていた。
綾香さんのご母堂は、仲澤氏の芝居を見に来るたびに、シャツとか靴を差し入れするのだという。
今度はダウンジャケットか何かを差し入れようと思っていたらしく、綾香にサイズを聞いていたそうだ。
返事をしないので、催促の電話がかかったらしい。
まるで、ねじまき鳥クロニクルに出てくる、赤坂ナツメグだなあと思った。
そういえば自分も、ずいぶん以前に後輩のお母様から、芝居をするたびに文庫本数冊をもらっていた。
本をよく読まれる方のようで、自分の読んだことのない作家ばかりだったので、とても嬉しかった。
篠田節子さんのファンになったのも、それがきっかけだった。
デニーズに仲澤さんとるみさん合流。
綾香に、本を読んでいるかと聞くと、平田オリザ『幕が上がる』を永野さんから借りて読んでいるとのこと。
なんでもいい。とにかく、読む、というエンジンを回し始めたことが肝心だ。
「途中でシオリをはさむだろ。次に読む時は、必ずそのページから1ページ2ページ前から読み始めるようにするといいよ。その方が結果的に、スピードがあがるから」
など、実践的な意見を言う。
次回公演『暮れなずめ街』の設定や、ネタや、ストーリーなどを、その場で喋りまくる。
喋ることで、今まで頭の中に放り込んできたアイディアが整理される感覚があるのだが、半ば「塚本独演会」みたいになってしまったのは、ちょっと困った。
6時に店を出る。
仲澤さんと池袋まで移動。
グリーンで芝居を見るのだという。
客演する時の基準みたいなものはあるのか聞くと、
「来るものは拒まずですね」
とのこと。
「だから、もう来年は、宙キャン、トツゲキ、宙キャン、トツゲキと、すでに埋まってますよ」
「スケジュールが空いてるのに、断った団体はないんですか?」
「そりゃあ、自分が見て、ちょっとここはなあ…と思っていた団体から誘われた時には、ありますね」
来年5月にも誘われているが、スケジュール適には難しいのだという。
「そこ、俺に紹介してくださいよ」
と、おねだりして分かれる。
7時に亜企ちゃんと待ち合わせ。
いつも行く店に移動すると、今日は貸し切りとのことだった。
仕方なく、『庄家』に移動し、カウンターにて色々話す。
ヘアメイクとして、正式に依頼をすると同時に、エンゲキブ時代にどのようにして衣装チームを編成してきたのかを聞く。
「衣装は、自分がやっていたようなもんですね」
「やりたい、というか、やってしまう?」
「ですね」
そのチーム編成のようなことを、次の公演でお願いできないか聞く。
打ち合わせ後は、雑談を延々する。
次回公演の内容について話し、亜企ちゃんがエンゲキブを立ち上げてからの諸々を聞く。
(へえ、そうだったんだ)
と驚くような話も出た。
11時まで話し込む。
帰りがけ、さらに追い打ちをかけるような事実を亜企ちゃんから聞く。
思わず路上でよろめく。
一年以上会っていない人の話なのだけど、その一言でパズルが解けたような気がした。
12時帰宅。
夕方デニーズで喋りまくった余韻が自分の中にあり、台本のアイディアや場面展開が色々浮かぶ。
ノート作業を少しすれば、台本書き出しに移れそうだ。
ふと、旅館にカンヅメになって台本を書くことを思い立つ。
温泉がある旅館で、ひなびた場所だったら、たぶん<書く>以外のことはあまり出来ないだろう。
ネットにつながらない方が、さらに集中できるかもしれない。
2泊くらいできて、温泉があって、長時間ノートパソコンを打っても疲れない机やテーブルがある部屋ならどこでもいい。
いっそビジネスホテルでもと思ったが、年の瀬にそれは侘びしい。
秩父、房州、丹沢大山、奥多摩、鎌倉、三浦あたりが、近くて便利か。
観光ではないので、電車で行けるところの方がいい。