天城越えだろ

9時起き。
図書館へ行き、予約した本を借りる。
家に帰り、そそくさと荷造りを済ませ、家を出る。
イヤになるほど蒸し暑かった。

キャリーバッグが妙に重いと思ったら、車輪が一つ壊れていた。
2月の『暮れなずめ街』で、大量の書類を運んだりしたせいだろう。
壊れていない車輪を使うようにコントロールしながら歩くと、余計に暑くなった。

新宿で小田急。
急行で小田原へ。
そこから東海道線で熱海。
2時少し前に着いた。

朝から野菜ジュースしか腹に入れてなかった。
駅近くの「雨風本舗」という、カウンターだけの小さいラーメン屋で、半チャーハンとラーメンを食べる。
スープが黒かったが、好みの味だった。

満足に地図を見ず、方向感覚だけを頼りにホテルに着く。
チェックインを済ませ部屋に入る。
冷房がほどよく効いていた。
キャリーバッグの重さと蒸し暑さと、食事をして胃に血液が集まっているのとで、頭がクラクラしていたので、小一時間横になって休む。

4時過ぎに起き、部屋の小机と椅子を片付け、パソコンを開く。
椅子が高すぎるのか、机が低すぎるのか、キーボードがとても打ちづらかった。
机をベッドのそばに移動し、ベッドを椅子代わりに使うとちょうど良くなった。
WiMAXが入りにくく、ネットはつながったり切れたりを繰り返した。
モバイルの回線はまずまず入った。

6時半に部屋を出て、外をぶらぶら歩いてみる。
サンビーチから海沿いを歩き、熱海銀座を歩く。
伊豆に旅行した帰り、熱海に立ち寄って昼ご飯を食べることがよくあったが、その時歩いたのも熱海銀座のあたりだった。
寂れた感じは変わっていない。

食事なしで宿をとったので、駅の商店街にある「祇園」という店に入り、天丼と刺身小鉢の定食を頼んだ。
ビールも頼んだ。
小旅行の時は車を運転することが多かったので、ビールを頼めるのが妙に嬉しかった。

天丼より刺身小鉢がなかなか美味かった。
そこはさすがに海辺の町ということだろう。

9時前にホテルに戻る。
荷物整理を済ませてから、風呂の案内パンフを読む。
ホテルの別館に展望風呂があるというので、そこへ行ってみることにした。

部屋を出て鍵をかけると、なにやら声が聞こえた。
猫が鳴いているような、それでいて猫じゃないような、独特の声だった。
二つ隣の部屋から聞こえていた。
立ち止まって耳を澄ませると、明らかに本格的なあえぎ声が聞こえだった。
時計を見ると9時半だった。
アダルトビデオでも見てるのか?
いや、声の感じからしてどう考えても生声だ。
それに、妙にプロっぽい、わざとらしさのある声だ。

家族連れがいたらどうすんだよ、と、ぶつくさいいながらエレベーターに乗り1階へ。
別館への回廊を歩くと、宴会場からカラオケの大音量が聞こえた。
エレベーターに乗り、最上階へ。
下りた途端、左前の部屋から、またあえぎ声。
またもプロ風。

宴会の感じから、どうやらサラリーマンがコンパニオン相手に、どんちゃん騒ぎをやっている風だった。
ひょっとするとそいつらの中で、いい感じに抜け駆けできた野郎が、21時台に部屋でおっぱじめていたのかもしれない。
あるいはデリヘルでも呼んだか。

展望風呂は誰もいなかった。
そして、夜だったので、景色はまったくわからなかった。
海っぽい黒い地平線が見えた。
湯気で曇って星は見えなかった。
サウナがあり、冷たい水風呂もあったので、数往復した。
さっぱりした。

エレベーターを降り、宴会場を通り過ぎ、回廊を渡り、自分の部屋に戻るため再びエレベーターに乗る。
こんどは、隣の部屋からあえぎ声が聞こえた。
三連チャン。いい加減にしろ。
あえぎ声三連発か。バース掛布岡田じゃあるまいし。
伊豆っていったら、あえぎ声じゃくて、天城越えだろ。

もうすっかり、何も書く気がしなくなったので、ホテルを出てコンビニに行きビールを買った。
部屋に戻るとさすがに、二つ隣の部屋も隣の部屋も静かになっていた。

泉田純の書いた、ノアの暴露本を読む。
芝居のために借りたわけではなかったが、なかなかどうして、参考になった。

2時過ぎ就寝。